「水素といえば山梨」燃料電池の先端技術が集まる甲府---大学と太陽光とP2Gの丘へ

水素技術センター(水素供給利用技術協会、山梨県甲府市下向山町3157番地)
  • 水素技術センター(水素供給利用技術協会、山梨県甲府市下向山町3157番地)
  • 山梨大学 燃料電池ナノ材料研究センター(山梨県甲府市宮前町)
  • 米倉山P2G(Power to Gas、山梨県甲府市下向山町3443-1)システム
  • 水素技術センター(水素供給利用技術協会、山梨県甲府市下向山町3157番地)と池田哲史理事
  • 山梨県庁では多くのメディアを前に山梨県 長崎幸太郎知事ら関係者が産学官連携による次世代エネルギーの県内最先端事例を紹介
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「国内トップの水素・燃料電池 技術集積地、山梨へようこそ。いまから国内唯一のFC研究施設や、国内初のクリーンエネルギー新施設、P2G(Power to Gas)システムを案内する」。そんな山梨県担当者の声にうながされ、報道陣がついていくと……。

まずは、甲府駅から北へ1.5km、歩いて15分の静かな住宅街のなかにある山梨大学 燃料電池ナノ材料研究センター(山梨県甲府市宮前町)へ。ここ山梨大学は、40年以上にわたり燃料電池の研究が続き、現在も国の燃料電池プロジェクトをけん引する一大研究拠点。

「実はあまり知られてないんだけど」と前置きして説明するのは、同研究センターの飯山明裕センター長。飯山センター長は、東京大学を卒業し、日産自動車に入社。日産総合研究所燃料電池研究所長、同 EVシステム研究所長を歴任し、水素・燃料電池の先端研究・技術集積地である山梨県の山梨大学にたどりついて、いまに至る。

「1978年に文科省による燃料電池実験施設を設置したのを皮切りに、クリーンエネルギー研究センター、燃料電池ナノ材料研究センターなどが次々に設立され、ことし2020年には山梨大学などが提案した4件が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業に採択された」

その4事業とは、「高効率・高出力・高耐久 PEFC を実現する革新的材料の研究開発事業」「ラジカル低減機能と燃料欠乏耐性を有するアノード触媒の研究開発」「広温湿度作動 PEFC を実現する先端的材料コンセプトの創出」「高効率・高耐久・可逆作動 SOFC の研究開発」。飯山センター長は、「4件とも2030~2040年に実装をめざす」と意気込む。

「山梨大学は、世界的にみても最大・最高レベルの燃料電池材料研究拠点。県内産業界の社会人技術者を対象にした養成講座(夜間)も山梨県から受託し展開。産官学で『やまなし燃料電池バレー』をめざした研究開発“FCyFINE”がすすんでいる」

山梨県や山梨大学がけん引する FCyFINE プロジェクトには、日邦プレシジョン(山梨県韮崎市)、エノモト(上野原市)、メイコー(甲斐市)の3社が参画、もとトヨタやホンダ、パナソニック、東芝燃料電池システムの研究員がコーディネーター・アドバイザーに加わる。

「山梨県と山梨大学は、水素実装に向けて県内企業の新規参入や人材育成にも力を入れ、『水素・燃料電池開発といえば山梨』というポジショニングをさらにいっそう強化させたい」と県担当者はいう。

リニア中央新幹線 甲府駅(仮)の南に「太陽光とP2Gの丘」が出現

こんどは山梨大学から南へ12km。中央線や中央自動車道を横切り、笛吹川を渡るとみえてくる、標高300mほどの小高い丘、米倉山。ここに自動車・モビリティ業界のほか、住宅・商業モール業界、そして鉄道会社などが注目する“水素・燃料電池の最先端エリア”が広がる。

この米倉山に集結する施設は、水素技術センター(水素供給利用技術協会)、電力貯蔵技術研究サイト、米倉山太陽光発電所(1万kW)、県営啓発施設 ゆめソーラー館やまなし などがある。

自動車系で注目したい施設のひとつめは、水素技術センター。燃料電池車(FCV)用のガスステーションがリアルに再現された、国内唯一の実環境下で水素ステーション技術・開発をすすめられる施設。

ここでは、水素関連製品の実環境下での性能試験、新規開発した充填制御の試験、FCV需要に応じた低コストガスステーション設備仕様の検討試験などが行われる。

おもな構成要素は、水素ガス受入設備(カードル3基)、圧縮機(高圧化し低圧側のクルマに充填)、蓄圧器(貯蔵)、ディスペンサー(充填ノズル)。ここ水素技術センターでしかできない試験について、水素供給利用技術協会 池田哲史 理事は現場でこう教えてくれた。

「国内商用ステーションで不可能な国際基準の充填最高圧力87.5MPaを充填できる」「車両だけではなく容器にも充填可能であるため、多様な容量容器に充填できる」「ラボレベルでは実施不可能な実環境下での耐久性評価試験などができる」「圧縮機の吐出量を任意・容易に変更可能で、需要に応じた水素ステーションの最適能力仕様が検討できる」(池田理事)

この水素をつくるシステムとしてもうひとつ注目したのは、この米倉山に設置してあるP2G(Power to Gas)システム。太陽光発電で得た不安定電力で、1500kWの水電解装置で水素を生産。安定電力は利用・販売し、ここで生まれた水素を貯蔵・輸送・利用・販売。循環型水素エネルギー社会をめざすというイメージ。

水素・燃料電池の先端エリア、山梨大学と米倉山の“太陽光とP2Gの丘”。最後に山梨県担当者に聞いてみた。「なぜ山梨が水素なのか」と。するとこう返ってきた。

「もともと山梨県は、日本屈指の日照時間を誇る。だから太陽光発電の取り組みが早くから盛んで、太陽光発電の余剰電力や不安定な電力を効率的に利用する方法を早期からいろいろと検討してきた。そのなかで水素エネルギーに着目した研究開発もどこよりも早く始まった。これからも、『水素といえば山梨』といわれるよう、“やまなし水素・燃料電池バレー”をめざす」

《レスポンス編集部》

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