5G今秋プレサービス開始のドコモが目指すMaaS…NTTドコモ執行役員IoTビジネス部長谷直樹氏[インタビュー]

5G今秋プレサービス開始のドコモが目指すMaaS…NTTドコモ執行役員IoTビジネス部長谷直樹氏[インタビュー]
  • 5G今秋プレサービス開始のドコモが目指すMaaS…NTTドコモ執行役員IoTビジネス部長谷直樹氏[インタビュー]

NTTドコモの5Gのプレサービスは2019年9月20日にラグビーワールドカップの開催に合わせて開始となる。また2020年春には東京オリンピック・パラリンピックに向けて商用サービスを開始する予定だ。5Gでなにが可能となるのか。他国や他のキャリアと何が違うのか。NTTドコモがなぜMaaSなのか。NTTドコモ執行役員IoTビジネス部長の谷直樹氏に聞いた。

6月19日、20日に東京オリ・パラとCASE・MaaSのキープレイヤーが一堂に会するセミナーが開催されます。詳細はこちらから。

NTTドコモの5Gの特徴はパートナーとの連携によるサービス化


---: 5Gで実現可能になること。他国や他のキャリアと比較してNTTドコモの特徴は?
谷氏:5Gは国際標準化されており、それを各国・各社が順次導入している状況です。5Gにより高速・大容量、タイムラグの少ない低遅延、多数接続が可能となります。これからはこの技術革新を活用してどのようなサービスを行っていくかが極めて重要になります。

NTTドコモの中期戦略で5G時代にあたり「beyond宣言」を出しました。「お客さまへの驚きと感動」「パートナーとの価値の協創」ということで、他の業界のパートナーのアセットとドコモのアセットを組み合わせて、新たな価値を生み出すことに力を入れています。日本は課題先進国です。パートナーのビジネス拡大などに貢献しながらも課題解決を図っていきたいと考えています。

---:5GによりGAFAとキャリアの関係が変わるなど産業構造が変わる可能性もあると言われています。また5Gに関しては韓国、アメリカが先駆けてサービスを開始していますが、NTTドコモはユースケースを創出しお客さまが使えるサービスまで落とし込むところができることが強みではないでしょうか。

MaaSは課題解決の手段


---: NTTドコモがMaaSに取組む理由とMaaSとは何か教えてください。
谷氏:MaaSとは何か。今いろいろな定義が各々のステークホルダーから出て少し混乱気味になっているのではないかと思います。NTTドコモは、移動に関するさまざまな課題の解決を図るものだとシンプルに理解しています。
そして、現在“MaaS”として言われているものを3つに分類して理解しています。「高度化型MaaS」「交通統合型MaaS」「サービス連携型MaaS」です。

「高度化型MaaS」は徒歩、自転車、タクシーなど人が移動する際に用いる個別の交通モードの高度化です。

「交通統合型MaaS」はフィンランドのWhim(ウィム)などに代表される複数の交通モードを統合したものです。

「サービス連携型MaaS」は小売店舗、宿泊施設、医療・福祉、観光地、金融・保険などの交通の周辺サービスと交通を連携させたものです。

NTTドコモはその中でも「高度化型MaaS」の特にタクシーとバスのAI活用によるデマンド化に力を入れています。また「サービス連携型MaaS」で、運賃として徴収するのではなく、何かしらの移動に対する付加価値を考え送客ビジネスや広告ビジネスとして“移動×サービス”のビジネスを創出できないかと考えています。

例えばAI運行バス(※)の場合、システムを自治体、交通事業者などのサービス事業者に提供したことに対する利用料をいただくビジネスモデルに加え、商業施設へ送客に対する協賛金などをサービス事業者へレベニューシェアするというビジネスモデルも考えられるかもしれません。一方、エンドユーザーのdポイント活用にもつなげられればよいと思っています。

---:最近、いろいろなところでdポイントが使えるようになりましたね。私は月々のスマートフォンの利用料を、dポイントを使って一部支払いが可能なので大変助かっています。移動についてもdポイントが使えると嬉しいです。

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高度化型MaaSで数多くの実績


---: これまでの取組みは?
谷氏:高度化型MaaSにおいてすでに数多くの実証実験を行ってきました。
タクシーにおいてはこれまで個々のドライバーの経験と勘に頼ってきましたが、NTTドコモのネットワークから得られる人流データと、タクシー走行データ、気象データなどの外部データをAIを活用することにより、全ドライバーの経験と勘をコンピューター上で再現できるようになります。その結果30分後の500メートルメッシュのタクシー乗車需要数を10分毎にリアルタイムで予測可能となり、新人ドライバーでも高い確率でお客さまを乗せることができます。

2018年2月よりAIタクシー(※)サービスを商用化し、現在東京無線タクシー(東京)、つばめタクシーグループ(名古屋)、日交タクシー(大阪)、熊本タクシー(熊本)などでご利用いただいております。実車率の向上に貢献し、あるタクシー会社では1日平均10~15%の売り上げ増につながったという実績もあります。

バスにおいては、乗りたい時に乗れて、自由に移動できる(オンデマンド)、目的地に最適ルートで移動できる(ダイナミックルート)、より安価に移動(シェアリング、乗合い)が可能となります。これは未来シェアと共同開発を行っています。これまで数多くの実証実験を行ってきており、九州大学伊那キャンパス、鹿児島県肝付町エリア、横浜市・みなとみらい21・関内エリアなど都市部/地方部の全国10か所で有料/無料運行にて10万人以上(2019年4月末)の輸送実績があります。なお、2019年4月1日より九州大学伊都キャンパスで商用開始しました。

サービス連携型MaaSで新たなビジネスモデルの創出が可能か


---: サービス連携型MaaSについての取組みは?
谷氏:高度化型MaaSの実証実験の際にサービス連携型MaaSの効果検証を行うための仕掛けをいくつか行いました。例えば九州大学伊那キャンパスで近隣カフェと連携したスマホクーポンの配布を行ったところ来客数は1.4倍になり売上が1.7倍になりました。また横浜市・みなとみらい21・関内エリアでは商業施設の情報やクーポンをスマホに配信する仕組みを提供し、結果的に500の商業施設との連携が実現しました。その他、東京臨海地区エリア、会津若松エリアでも実施したところ、エリア内の回遊性や経済性の効果が確認できました。以上の実証実験の結果から、商業施設から移動コストの負担の一部を担ってもらう、新しいビジネスモデルが生まれる可能性を見出すことができました。

---:そうなると、運行が難しいとされていた地域でも違う形で運行にかかる費用を捻出できるなど、新たな運行の仕方を見出すことが可能となりますね。収益化が大きな課題となっている移動手段にとっては革命かもしれません。

※「AI運行バス」「AIタクシー」は株式会社NTTドコモの登録商標です。

6月19日、20日に東京オリ・パラとCASE・MaaSのキープレイヤーが一堂に会するセミナーが開催されます。詳細はこちらから。

《楠田悦子》

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