インドネシア初の地下鉄が開業、渋滞問題の救世主となるか【藤井真治のフォーカス・オン】

日本のODAによる建設されたインドネシア初の地下鉄がジャカルタで開業。

世界最悪と言われている渋滞解消と既に普及しているGo-jekや Grabなど新モビリティサービスとの連携が期待されている。

インドネシア・ジャカルタ初の地下鉄が開業。終点駅にはピカピカの車両が並ぶ
  • インドネシア・ジャカルタ初の地下鉄が開業。終点駅にはピカピカの車両が並ぶ
  • 快適な車内
  • 駅構内にはチョットよそ行きの服装の人たちが
  • 地下駅につながる歩道も整備されている

日本で初めて地下鉄が開業したのは1927年(昭和2年)。銀座線の前身であるという。90年以上の時が流れ、現在の東京は周辺部も含め地下鉄や鉄道網がくもの巣のようにはりめぐらされた世界が構築されている。インドネシアでは今年3月、初の地下鉄がジャカルタで開業。世界一の渋滞都市といわれるジャカルタの救世主になれるのか世界が注目をしている。

インドネシア待望のMRT開業

海の向こうの東南アジア各国。増加する輸送需要への対応や慢性的な交通渋滞の緩和を解消できる大量輸送期間MRT(Mass Rapid Transit)は大都市に不可欠なものとなっている。日本よりも裕福な香港やシンガポールはもちろんのこと、タイのバンコクやマレーシアのクアラルンプール周辺では高架を走る鉄道に加え地下鉄網が整備されてきた。

しかしながら東南アジア最大の人口とGDPのインドネシア、その首都ジャカルタはこれまでMRTと呼べるもがなくバスもタクシーもサービスは劣悪。道路はお金持ちの乗り物である自家用車で溢れ、世界でも有名な道路渋滞を引き起こしている。その間隙をぬって庶民の足としてバイクタクシーのGo-jekや配車アプリを利用したGrabといった新しいモビリティサービスが爆発的に普及し現在に至っている。

そのジャカルタに待望の地下鉄(JMRT)が通った。

官庁とオフィスビルが立ち並ぶ目抜き通りに南北方面に開通した地下鉄の路線は高架の部分もあわせてわずか13駅で15.7km。端から端まで乗っても所要時間は約30分と短いが、ジャカルタのモビリティサ―ビスの発展のため大きな第一歩と言えるだろう。

日本のODAによってできたJMRT

このJMRTには日本政府のODA(政府開発援助)による1250億円の資金提供されている。地下鉄建設にかかわる土木、車両調達、軌道建設、信号や通信など総合運行システムなどすべて日本企業が請け負うオールジャパンのプロジェクトとなっている。

2012年に現在の大統領であるジョコウィ氏がジャカルタの市長時代に、メインロードの渋滞による経済的損失の大きさを考えればリスクをとってもやるべき、と判断し決断した。オールジャパン・チームはそれに応え、5年の建設期間を要しJMRTを予定通り完成させたのである。日本の技術により地震対策やジャカルタ名物の雨期の都市型洪水対策(バンジール対策)もしっかりと盛り込まれているという。

試乗記、大変快適な駅そして電車

快適な車内
早速、北の終点駅から南の終点駅まで試乗してみる。

インドネシア政府は、全国の鉄道インフラの改善にやっと真剣に取り組んでおり、新MRTの駅も清潔で快適、十分な広さも確保している。また乗客のマナーの改善や保安上の観点からセキュリティの担当者が構内のいたるところに見られるだけでなく、車両にも乗り込んでいる。

開業して1か月のJMRTの乗客はまだ「初物見たさ」にちょっとおしゃれをして、興奮気味で、「遊園地の乗り物気分」の集団も多い。車両が地下から地上に出て視界が開けると「わあ」という歓声が沸き起こるのにはちょっと苦笑してしまう。わずか30分で着いてしまう終点駅には、ピカピカの車両が待機していて、インドネシアもついにここまできたかと感激できる風景が広がっている。

終点駅周辺では副都心を目指した開発もスタートしていて、これまでクルマでの移動を前提とした都市計画そのものも変わっていくのか注目される。これまで渋滞時には2時間かかることもある移動が僅か30分。その経済効果は確かに計り知れないものがある。

駅を起点とした新ビジネスの最構築は起こるのか

駅構内にはチョットよそ行きの服装の人たちが
十分な快適性や安全性の確保によって、JMRTはクルマを持たない低所得者層だけでなく中間層や富裕層を十分取り込むことができると確信する。これまで人が歩くことは全く想定していないような穴だらけの歩道も整備され、駅から通り沿いのビルまではストレスなく歩けるようにもなった。また、周辺国では普通の風景なのだが、駅構内にはコーヒーショップやコンビニが併設されるなど周辺ビルに通勤する人たちの利便性にも考慮されている。あとは駅から他の交通機関へのアクセスであろう。

既得権化している旧態然とした路線バス、乗合バス、バジャイといった旧システムも残っており、配車アプリなど新システムとの共存の道を取るのか、再構築を図っていくのかお手並み拝見といったところである。いすれにせよモビリティ手段を選ぶのは国民である。

日本から供与された資金は借款であり返済の必要があるため、インドネシア側はJMRTの今後の運行をしっかりマネージしペイをしなければならない。

産声を上げたジャカルタの地下鉄。今後のモビリティサービス上の課題は多いが、国全体が変わっていき発展していこうとする平均28歳のこの国の勢いには思わず身震いしてしまう。

<藤井真治 プロフィール>
(株)APスターコンサルティング代表。アジア戦略コンサルタント&アセアンビジネス・プロデューサー。自動車メーカーの広報部門、海外部門、ITSなど新規事業部門経験30年。内インドネシアや香港の現地法人トップとして海外の企業マネージメント経験12年。その経験と人脈を生かしインドネシアをはじめとするアセアン&アジアへの進出企業や事業拡大企業をご支援中。自動車の製造、販売、アフター、中古車関係から IT業界まで幅広いお客様のご相談に応える。『現地現物現実』を重視しクライアント様と一緒に汗をかくことがポリシー。

《藤井真治》

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