「日本に根を下ろして持続的な活動を」フォルシア クリーン モビリティ ジャパン カルガー 社長…インタビュー

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フォルシア クリーン モビリティ ジャパンのケイバン・カルガー 社長
  • フォルシア クリーン モビリティ ジャパンのケイバン・カルガー 社長
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  • フォルシアブース(人とくるまのテクノロジー展18)
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フォルシア・グループは5月上旬、横浜市内に技術開発拠点を開設。また同月末に開催された「人とくるまのテクのロジー展」に初出展し、排気系部品や燃料電池関連の技術を展示した。

フォルシアは今後、日本でどのような展開をするのか。フォルシア クリーン モビリティ ジャパンのケイバン・カルガー 社長に話を聞いた。

◆3つの事業を柱とするフォルシア

----:フォルシア・グループのなかで、フォルシア クリーン モビリティ ジャパンはどのような位置づけなのか、どのような事業を展開するのかを教えてください。

ケイバン・カルガー社長(以下敬称略):最初に、フォルシアというグループ全体の概要を説明させてください。年間の売上高は170億ユーロで、サプライヤーとしては世界6位の規模を持っています。グループには3つの事業部があり、それぞれFCM(フォルシア クリーン モビリティ)、FIS(フォルシア インテリア システムズ)、FAS(フォルシア オートモーティブ シーティング)。この3事業部でフォルシア・グループを構成しています。

自動車産業では、それぞれの事業部が確固たる地位を確立しています。FCMは排気系部品、それにクリーンモビリティのソリューションで世界ナンバーワンの売上規模を誇ります。FASではシートの機構部品は世界1位、シートの完成品としては世界3位。FISの売上は世界2 位という規模です。事業拠点は35ヶ国に300あり、そのうちR&Dセンターは30ヶ所。ここには6400名のエンジニアやスペシャリストが働いています。グループ全体の従業員数は約10万9000人になります。

グループでは2年前から、CEOであるパトリック・ケラーがトランスフォーメーション(変革)を進めていて、これは2つの軸を中心にしています。まず「スマート・ライフ・オンボード」と呼ぶ軸。もうひとつは「サスティナブル・モビリティ」というものです。これらは現在起こっている自動車産業の大規模な変動、そして社会に対する変化に対応するために進めているものです。

----:変革によって、グループとしてなにを目指しているのでしょうか。

カルガー:「スマート・ライフ・オンボード」では、まず現在得ているリーダーシップを、確固たるものにしたい。これを具現化するために「コックピット・オヴ・ザ・フューチャー」というものを、製品として展開したい。これはFISとFASの技術を融合させ、顧客にイノベーティブな製品を提供しようということです。コネクティビティや自動運転に対応していこうとするものですね。

またFCMは排気系部品で25パーセントの世界シェアを占めていますが、このコアビジネスをベースに、これからのメガトレンドに対応していきます。ゼロエミッションや都市部の公害問題などに対応、貢献できる製品を作っていきたい。具体的には燃料電池関連製品やバッテリーパック、それに軽量化技術などへの投資。これが「サスティナブル・モビリティ」における変革です。

排気系部品でいえば、商用車や産業車両のエンジン、それに船舶用エンジンなどの排気後処理の分野をさらに強化し、大都市などでの公害問題を改善するような製品の開発。こうした事業変革を通じて、現在のグループ全体で170億ユーロという売上高を、2025年には300億ユーロへ拡大させたいと考えています。

----:船舶用というのは少々意外ですが、これはディーゼルエンジンだからですね。

カルガー:はい。基本となる技術は同じですから、船舶のほうにも展開しようと考えるのは自然な流れです。FCMの排気系部門には3つの領域があります。乗用車、農業機械や建設機械などを含む商用車、そして船舶。船舶でもベースとなる技術は自動車と同じですが、規制などが異なり専用のノウハウが必要と考えていまして、それを得るためにHUGエンジニアリングという企業を買収しました。

----:しかし世界的に見ると、乗用車ではディーゼルの旗色が悪くなり、電動へのシフトが起こりつつあります。

カルガー:たしかに乗用車に限って言えば、ディーゼルの生産量は下がる傾向です。ただ商用車は規制などの基準が異なりますから、当分は主流を占めることになるでしょう。もちろん乗用車のメガトレンドが商用車には無縁ということではなく、バスも含めてハイブリッドや電動化が進み、燃料電池バスを走らせる計画を発表しているところもあります。ここで重要なのは、こうしてトレンドが流動化している中でも、フォルシアはどのような事態にも対処できる製品群、そして技術力を養っているということです。

◆ フォルシア クリーン モビリティ ジャパンの目的

----:「人とくるまのテクノロジー展」では、排気系と燃料電池関連の展示をしていました。

カルガー:FCMでは、先に述べた変革を日本でも展開したいと考えています。そのためにまず戦略的なパートナーシップを組み、コアビジネスである排気系部品を強化します。またエンジン車やハイブリッド車、EVの領域でイノベーティブな技術を、日本の顧客へ確実に提供できるようにしたい。さらに燃料電池関連の製品を日本の顧客に提供できるようになりたいと考えています。これがフォルシア クリーン モビリティ ジャパンのミッションです。

----:日本国内で部品を生産するということですね。

カルガー:直近では、2020年にスタートする排気系部品の生産プロジェクトをすでに受注していまして、まずこれを実現するために戦略的パートナーシップの締結を完了させる予定です。次に5年スパンでの計画として、燃料電池部品の生産拠点を日本で持ちたいと考えています。

そして10年後には、日本でもフォルシアという名前が完全に認知されているようになりたい。日本の顧客に「FCMはイノベーティブな、環境改善に貢献できる製品を提供できる企業だ」と、認知されたいのです。

----:生産は、パートナーとなるサプライヤーが担当することになるのでしょうか?

カルガー:日本国内の自動車生産というのは安定している、もしくは少しずつシュリンクしていると考えます。これをサプライヤーのレベルで見た場合、過去の投資状況から考えると、生産能力が過剰になっていると判断できます。ここから排気系部品の生産については、日本のサプライヤーとの戦略的パートなシップが適切だろうという結論となりました。フォルシアがパートナーへ投資することによって、ともに未来を築いていくという形です。

いっぽう燃料電池関連をはじめとした新価値領域のところについては、はっきりした青写真が描けているというわけではありません。パートナーシップを結ぶのか、それともフォルシアが独自で展開するのか。どのようなオプションも使う可能性があるということです。

◆ 日本のDNAを注入した研究開発

----:日本でのR&D(研究開発)については、どんな計画があるのでしょうか?

カルガー:わたしたちは日本に根付いて継続的、持続的に活動することを目指しています。ですから生産のためのパートナーシップだけでなく、研究機関との連携もします。研究のための契約、商用車関連ビジネスの受注、そして先行開発プロジェクトの受注や、スタートアップ企業への投資。日本に根付くためにこれらを積極的に展開したい。ただし最優先なのは、排気系部品のR&D能力を引き上げること。そこでまず重要なのは「人」です。日本のDNAを注入していきたいと考えています。

----:日本の感覚を重視する、ということでしょうか?

カルガー:これはわたしたちにとって、きわめて重要です。顧客によりよい製品、よりよいサービスを提供するためには、現地のスタッフによって確実に根付くことが必要だからです。中国ではおよそ10年前、フランスから人を派遣して事業を立ち上げました。現在は14の工場と、600名のエンジニアを擁するR&Dセンターを持っていますが、そのすべてが現地スタッフによるマネジメントとなっています。

私は日本をこよなく愛していますが、5年後には私ではなく日本人がインタビューを受けるようになっていたい。さらに燃料電池関連の技術は日本が最先端を走っていると思いますので、排気系にしても新価値領域にしても、日本のR&D能力を強化してゆくことが必要。こうすることによって日本での存在感をアップさせていきたいと考えています。FCMはすでに46億ユーロの年間売上高があるのに、日本での存在感は薄い。これをR&D能力の強化で改善させていきたいですね。

----:投資するスタートアップ企業というのは、具体的にはどのような領域を手がけているのでしょうか?

カルガー:大きく分けてふたつあります。まずビッグデータと、それにともなうセンシング。各車が排出するガスなどをリアルタイムでモニタリングしたいのです。ドライバーのふるまいによって、燃費や排出ガスにどんな影響が出るかといったデータを回収し、それをドライバー個人や都市にたいして提供することで環境改善に役立てたい。データを集めるにはセンサーが必要になるので、これの開発も必要です。

もうひとつは、サーマルマネジメントに関する新技術。たとえばコンポジットのバッテリーパックを作りたいと考えているのですが、ただ単にハウジングを製造するだけではありません。バッテリーの熱管理を含めた完成品を、システムサプライヤーとして供給したいと考えているのです。

----:研究機関との連携というのは、具体的にどんな目的があるのでしょうか?

カルガー:今後の事業に展開できるようなイノベーションのシーズ(種)をつかむために、7月中にふたつの大学研究機関と、テーマを決めて契約を結ぶ予定です。これで燃料電池やセンサー、ビッグデータなどの最新データにアクセスしていきたいと思っています。

それに学校との連携は非常に重要です。まず日本のサイエンス界にフォルシアが貢献できるということを示したい。それから、学生のみなさんにフォルシアを知ってもらいたい。有望な就職先のひとつとして認知したもらいたいと、心の底から願っているのです。ですから今年の学生フォーミュラでは、ふたつのチームをスポンサードすることにしました。日本のすぐれたタレント(才能)を支援すると同時に、学生たちにフォルシアを知ってもらう機会にもなると考えたからです。

◆車両のサプライヤーとして水素社会の発展に貢献

----:燃料電池が有力な動力源のひとつと考えているようですが、普及するには水素供給インフラの構築が必要です。FCMとしてはどの領域までを手がけるつもりなのでしょう。

カルガー:車両のティア1サプライヤーとして水素社会に貢献したいと考えているので、インフラ事業に参入する計画はありません。具体的には2年前、エアバス子会社で高圧容器を長年製造しているSTELIAエアロスペースと戦略的パートナーシップを結び、高圧水素タンクの領域に参入しようとしています。

スタックに関してはCEA(フランス原子力・代替エネルギー庁)との戦略的パートナーシップを組み、市場参入します。もうひとつ、水素バルブではフランスのスタートアップ企業、AD-VENTA(アドヴェンタ)と提携を結びました。燃料電池関連ではタンク、スタック、バルブという3つの製品群におけるティア1になりたいと考えています。

----:すでに具体的な計画があるようですね。

カルガー:FCMではそれぞれの領域の技術についてロードマップを持っています。たとえばタンクでは、第1世代の製品が19年にホモロゲーションを取得する予定。実はすでにヨーロッパの顧客から受注を獲得していまして、そのための準備を進めているところです。

続く第2世代ではコストを30パーセント削減。その後、第3世代で自動車産業に向けた大量生産技術を確立するという計画。スタックでも同様なロードマップがあり、まずエネルギー密度の向上を図り、これの目処が立てばコスト削減に取り組むという流れとなります。

◆日本社会の一員として

----:最初の説明ではグループを変革するということでしたが、これはグループ内でFCMの比重ををさらに大きくしてゆく、という意味もあるのでしょうか?

カルガー:自動車には自動運転という革命が起ころうとしていますが、レベル5の自動運転を想像してみてください。インテリアは完全に異なった姿になるでしょう。コネクティビティも大きく変わります。自動車が移動するサロン…と呼べるほどになるかどうかはわかりませんが、ともかく非常に大きな変化が起こるのは確実。ですからインテリア事業でも大きな変革が必要です。

いっぽうでサスティナブルモビリティの分野でも、サプライヤーとして環境改善のためになにがしかの貢献をする社会的な責任があると思っています。ですから従来型のエンジンの排気の後処理に着いても改善を続けることで、微力ながらも確実に貢献しつづけけたい。それゆえに、どちらの事業でも変革の必要性を強く認識していると考えていただけると幸いです。

----:そのためにも、日本での展開は重要というわけですね。

カルガー:全世界で生産される自動車の30パーセントは、日系企業によるものです。この重要な顧客に優れた製品やサービスを提供できるようになるためには、まずわたしたちが日本に根を下ろすことが絶対に必要。だからこそR&D拠点を開設したのです。フォルシアが日本社会の一員となれるよう、今後も積極的に活動していきたいと考えています。
《古庄 速人》

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