カーライフをシェアするアプリ…Anyca 事業責任者 馬場光[インタビュー]

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ディー・エヌ・エー オートモーティブ事業本部 Anyca事業責任者の馬場光氏
  • ディー・エヌ・エー オートモーティブ事業本部 Anyca事業責任者の馬場光氏
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個人が所有しているクルマを個人にシェアする---個人間カーシェアアプリで最大手の「Anyca(エニカ)」。シェアリングエコノミーを文字通り体現するAnycaのサービスや利用者像について、株式会社ディー・エヌ・エー オートモーティブ事業本部 Anyca事業責任者の馬場光氏に聞いた。

サービス概要


---:Anycaの利用者数、登録台数はいまどれくらいの規模になるのでしょうか。

馬場氏:2015年9月にサービスを開始して以来、会員は延べ13万人程度、登録されたクルマは延べ5000台程度、車種数は650車種ほどになります。カーシェアが行われた累計日数は6万日程度という実績です。

---:クルマは1日単位でシェアするケースが多いのでしょうか。

馬場氏:1泊2日が多いです。Anycaのシステム上、24時間がミニマムの単位になっています。実際には8時間だけ利用するという方も多いのですが、システム上では8時間も12時間も24時間も同じ価格設定になっています。

---:地域の偏りはありますか?

馬場氏:東京、首都圏が4割程度で一番多いですね。続いて地方主要都市が残りの4割、その他が2割です。

利用シーン


---:具体的にはどのような方が利用されているのでしょうか。

馬場氏:利用理由についてのアンケートを取ったところ「乗りたいクルマに乗れる」という回答が多かったです。およそ650車種あるので、乗ってみたいクルマに乗れるサービスとして利用している方が多いということですね。

また最近では、割安に利用できるという理由もありそうです。ちょっとしたレジャーや、GWの時期に最も多く利用されています。

---:例えばミニバンで遠くへドライブに行くとか、そういった利用シーンですか?

馬場氏:そうですね、大人数で旅行に行く、スノボに行く、といった場合です。

駅で待ち合わせて受け渡し


---:クルマの受け渡しは、実際にはどのようにするのでしょうか。先方のお宅までお伺いして受け取るのか、あるいはどこかで待ち合わせをするのでしょうか。

馬場氏:オーナーとドライバーが相談して決めており、実態としては主要な駅で待ち合わせするケースが多いようです。

あるいは、何回も同じオーナーさんとやり取りをしている場合は、オーナーがクルマを持ってきてくれたり、リピーターで信頼できる相手には対面せずに、鍵の置き場所を決めておくなどしてシェアを開始するという方もいらっしゃいます。同じ相手と何回もリピートする方も多いです。

カーライフをシェアするアプリ


---:利用者同士の評価の仕組みはあるのでしょうか。

馬場氏:はい。一度シェアをすると相互レビューを付けているので、どんな人なのかという評価がレビューに溜まっていきます。あとはチャットをしたり、自己紹介文も書いてあるので、そういった情報から判断していただくというところです。

(クルマの利用者として)「このクルマに乗りたい」という方もいますし、(クルマをシェアする側として)「このドライバーさんとシェアをしたい」というオーナーもいらっしゃいます。カーシェアだけではなく、カーライフシェア的な側面もあるイメージです。

---:「カーライフシェア」っていい言葉ですね。お互い仲良くなったり、ということもきっとあるのでしょうね。

馬場氏:そうですね。例えばSUVを保有している方と軽自動車を保有している方が、必要なシーンはそれぞれ違うので、そこをうまくクロスしてカーシェアしたりする例もあります。

---:それはまさしくカーライフを分け合っていますね。

馬場氏:これは自分の話になるのですが、Anycaに自分のクルマを登録していて、リピーターさんがついてくれたことがありました。同じ年代くらいの方が月1回ペースでシェアしてくれるということが半年ほど続いて、そのクルマを手放そうかなと思ったときに、その方が買ってくれたんです。Anycaでシェアをする前提で。

なので、今度はその方からシェアしてもらって、私自身が昔の愛車に乗りに行くこともありましたし、その方がまたAnycaで知り合った方に売却して、その縁で、先日その3人で飲む機会がありました。同じクルマを通じてこんなふうにカーライフが充実するって嬉しいことですよね。
ディー・エヌ・エー オートモーティブ事業本部 Anyca事業責任者の馬場光氏
---:クルマが結び付けた縁ですね。

馬場氏:このように、信頼できる方にシェアするという体験をしたときに、シェアエコノミーが実感として理解することができるので、そういう体験をひとつずつ作っていく、という世界観で今やっています。

今はまだシェアリングに興味がない方のほうが圧倒的に多いのですが、シェアリングの範囲を身近に狭めた瞬間に、ちょっといいかな、と思ってくれる方は多いですし、リピーターさんのいるドライバーさん、オーナーさんの満足度は、圧倒的に高いです。

トラブルの事例


---:逆にネガティブな体験になってしまうケースもあるのでしょうか。

馬場氏:クルマですので、事故や傷を付けてしまうというケースは、一定の割合で起きてしまいます。(Anycaは)共同使用という立て付けのサービスなので、2人で解決していただくということが前提ですが、解決が難しいということが起きることはあります。

対策としては、レンタカーでよく使っている傷確認ツールをアプリに追加して、シェアの前後に必ず写真を撮ってもらうようにして、傷がシェア中に付いたものかどうかの判断基準にしてもらっています。そういった機能を徐々に増やしてきています。

---:運営上でも対策を追加してきたということですね。

馬場氏:また大前提として、シェアをするときにドライバーが必ず保険に加入することになっていますし、保険を使う際に必要な事故証明を取るためのサポート機能なども追加しています。

---:保険はシェアリング代金に上乗せして、シェアする(or 利用する)るときに入ることになるのでしょうか。

馬場氏:はい。1日ごとに1800円かかります。

値付けにはルールがある


---:クルマをシェアする行為は、Anycaにおいては共同使用契約のもとに行われるという立て付けですよね。

馬場氏:はい。共同使用のルールに沿ってサービスを設計しました。

---:共同使用契約では、車両の価格や維持費といった実費を負担しあうというルールですので、例えば人気のあるクルマだからといって、利益を載せてシェアすることはルール違反になりますが、サービスとして、そういったルールに合致するような設計があるのでしょうか。

馬場氏:はい。まずオーナー様に購入時の価格、購入時の走行距離、年間維持費の3つの項目を入れていただいています。その3つをパラメーターにして価格を決めてもらいます。ですので、珍しいクルマであれば購入価格も高いので、そのぶん料金を高く設定できるようになっています。

---:オーナーが価格を設定するときに、キャップがあるということでしょうか。

馬場氏:そうです。最初にその3つ(購入価格、走行距離、年間維持費)を入れていただくと、「あなたのクルマの上限はここです」という提示をこちらからして、それ以下の値段を付けてもらうことになります。

---:新車であれ、中古車であれ、購入時の価格と走行距離、そして維持費も妥当な線があって、それを元に1日の料金が算出されているわけですね。

馬場氏:はい。
ディー・エヌ・エー オートモーティブ事業本部 Anyca事業責任者の馬場光氏

いまは育てるフェーズ


---:事業としてのAnycaについて、売り上げや収益で、どのような成長曲線をイメージしていますか。

馬場氏:もともとDeNAとしては、新しい事業の柱を立てたいということで、オートモーティブ事業本部ができました。その中で、将来見据えている自動運転社会に向けて、交通不全を解決していくアプローチとして、自動運転、C2C、有人のタクシーといったサービスがあるという状態ですので、例えば来年度にものすごく利益を上げる、というような目指し方ではありません。

---:DeNA全体としても中長期目線だということですね。

馬場氏:はい。

《佐藤耕一》

日本自動車ジャーナリスト協会会員 佐藤耕一

自動車メディアの副編集長として活動したのち、IT企業にて自動車メーカー・サプライヤー向けのビジネス開発を経験し、のち独立。EV・電動車やCASE領域を中心に活動中。日本自動車ジャーナリスト協会会員

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