【ベントレー ベンテイガV8 試乗】V12以上に別世界を感じるスムーズネスとフラット感…中村孝仁

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ベントレー ベンテイガV8
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最新の『ベンテイガV8』を目のあたりにして、思わず広報氏に「ベンテイガ乗るのこれが初めてなんです」などと口走った。いやいやウソでしょう、ちょうど1年前に乗っているじゃないですか…。

と、突っ込まれたわけではないが、そう口走ったのは確かで、よくよく調べてみたらちゃんとW12には去年の4月に試乗している。その印象が完全に欠落しているところを見ると、やはりベンテイガは僕を別世界に連れて行ったらしく、その時の記憶は全く残っていない。

で、改めてベンテイガV8に乗るにあたり、今度こそ別世界に連れていかれまいと、自分自身に抗いながらこのクルマについて、筋道立ててあれやこれやと思い出しながらこれを書いている。W12からV8にエンジンが変わって、少しは下々にすり寄ったかと言えば、冗談ではなく相変わらず、下々は相手にされない。まあそこまで自分を卑下する必要はないが、どうもベントレーというクルマに乗ると、畏怖の念を感じずにはいられない。それは個人的にベントレーというブランドが好きだからにほかならず、余計な話しながら我が家にある最大のミニカーもこのベントレー(車種は違うが)である。という余計な話はここまでにして、ベンテイガV8である。

それにしても、現在のSUVマーケットの異常さには改めて驚かされる。2015年以来、この市場は全自動車セグメント中最大に成長し、このベントレーは言うに及ばずスポーツカーメーカーのランボルギーニやポルシェ、そして高級車メーカーとしてはついにあのロールスロイスまでこの市場に名乗りを上げ、極端な話唯一著名ブランドでこのセグメントに車種を持たないのは今やフェラーリとアストンマーチンだけという状況。事ここに及べばフェラーリやアストンの進出も時間の問題と思われるほど、凄まじい勢いでモデルが増殖している。

つまり、現在のSUV市場は下はAセグメントのコンパクトモデルから、上はこのベンテイガを頂点とする超高級車まですべてが出揃っていて、今やその市場占拠率はパッセンジャーカー市場の34%に及ぶと、市場リサーチ会社JATOのデータが示す。少なくとも現時点でこの最大市場の頂点に立つクルマこそ、このベンテイガだと言って間違いない。

新しいV8モデルは、前述したように価格的には若干下々にすり寄って、2000万円を切る正札を付けた。このV8、明確には書かれていないが他のベントレーV8エンジンと基本は同じものと思うが、チューニングは異なっており、550ps、770Nmは他のモデルのV8よりパワフルかつトルクフルである。
ベントレー ベンテイガV8
インテリアは基本的にはW12のそれと共通だが、センターコンソールに付くスターターボタンの周囲にちりばめられた走行モードを示すイラストが消えている。勿論4WDなのだが、どうやら走行モードをチョイスする機能は省かれているようだ。

パフォーマンスもお値段同様、W12と比較して若干落とされている。それは例えば0-100km/hの加速が4.1秒から4.5秒になるといった程度の差であるわけだが、現実問題として、その差は普通に走る限りまずないと考えて差し支えないレベル。試乗車はまだ800kmを後にしたばかりの新車で、静々と走るその様は王者の貫禄というか、“King of SUV”そのもの。うまい具合に今回はW12との比較試乗も出来たが、都内で使う限りV8の方が走り易いと感じたほどである。理由はATの制御に関係しているようで、少なくとも今回比較した2台においては、アクセルペダルの踏み込みに対するスピードの上昇がV8の方がリニアであったからである。

静粛性も実はV8の方が高かった。一旦走り出してしまうとV8はほとんど無音といえるレベル。そして比較的荒れた路面の多い都内においても、そのスムーズネスとフラット感は次元の異なるもので、ここでも「別格」を如何なく発揮した。このクルマを都内で転がして気を使わないで済むような財力があれば、是非欲しいと思った次第。
ベントレー ベンテイガV8
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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