「ネオレトロ」ブームのど真ん中、ヤマハ XSR700 はいかにして誕生したのか…デザイン考

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ヤマハ XSR700
  • ヤマハ XSR700
  • GKダイナミックス清水芳朗氏とロアーズ オリジナルデザイナー高橋生児氏(YAMAHA開発者トークショー)
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「ヤマハヨーロッパの開発陣は、グッドウッドやオーセンティックなイベントに参加し、開発に活かしている。欧州では、ヤマハは“スタイリッシュでレーシー”というブランドイメージ」

アパレルブランド「ROARS ORIGINAL」が定期的に開催しているモーターサイクルミーティングイベント「Motor!!Motor!!」。1月24日開催の回では、ヤマハ『XSR700』のデザインを担当したGKダイナミックス清水芳朗氏と、ROARS代表の高橋生児氏によるトークショーが行われた。

会場のユナイテッドカフェは多くのライダー、モーターサイクルファンで立ち見も出るほど。熱気に包まれたなか、GK清水氏は、「XSR700をデザインするプロセス」「ヤマハというメーカーの姿勢」「モーターサイクルデザインのこれから」といった話題を語った。

◆ヤマハのエンジニアから企画書がおりてくる

ヤマハとGKでXSR700を開発していく際、最初の企画書がまずヤマハから出されるという。

「ヤマハ側から出てくるXSR700の初期段階の企画書には、『スポーツビューティカテゴリーの構築』といった文字もあった。『スポーツでありながら、クラシックなスタイルを持ち合わせたクルマを』というオーダーが書き込まれていた」

「この時点では、エンジンとフレームといった基本しか決まっていない。そこでヤマハがすごいのは、デザインの方向性が決まってきて、シートのフレームが違うとき、設計要件にあわせてシートを延ばすということを、ヤマハはらない。細かいところを詰めていって、技術的にもデザイン的にも一緒のイメージに落とし込んでいく」

「そこへGKダイナミックスは、さまざまなカフェレーサータイプなどのデザイン展開案を出していく。展開案を広げたものをこんどはナローダウンしていく。モダンクラシックだとか、レーシーに行くぞとか」

◆カスタム性を持たせる設計

このXSR700は、シートレールが分割できるという独自設計が盛り込まれているという。

「XSR700は、シートレールが外れて、短いシートなどにカスタムできる“伸びしろ”をあえてつけている。これを実現させたのは、マセラティにいたエンジニア。彼らもカスタム性の重要性をわかっている」

「コアユーザーはシートを短くしたい場合、シートレールをリセールバリューを考えずに切断してしまう。一般的なユーザーもシートを短くしたらかっこいいとは思っているけど、コアファンのようには踏み出せない。じゃあ、分割できるようになっていれば、コアファンのように切断しなくてもいいし、誰もが思い思いにカスタマイズできる。売るときにはすぐに戻せる」

◆ユーザーがカスタムしそうなスタイルを先行して描く

基本デザインが固まってくると、こんどはライダーたちがカスタムしそうなスタイルを複数、先行してスケッチしていくとGK清水氏。

「基本デザインが固まると、エンジニアがパーツをどうあわせていこうかと考える。エンジニアもスケッチを書いてくる。イタリアのエンジニアなどはスケッチを出してくる。デザイナーもそれをヒントに新たな案も生まれる」

「そしてデザインの段階で、思いつくカスタムモデルをいろいろと絵にしてみる。レーサーだったらこうだな、スクランブラーだったらこうだろうなとか。描くことで、実はこのフレームやカバーはこういうカタチになってないといけないって気づいてくる」

「みんなが改造しやすいように、スケッチを描きながらポイントを見つけていく。そして乗っている人のスタイルも、スキニーパンツなどを描いてみたりしてイメージを詰めていく」

「エンジニアはイタリア系が多く、ドゥカティなどで働いていた経歴があるエンジニアもいるので、彼らはエンジニアとしての情報やヒントを持っている。そういうスタッフとつくっていくので、やりやすかった。そのあとデザインを製品化へ向けてデータにしていく。データ作成オペレーターに指示を出していく」

オーセンティックな欧州スタイルを意識するヤマハ

ヤマハはグッドウッドなどに参加して、ファッションやデザインやエンジニアリングの考え方を見ているともGK清水氏はいう。
「ヤマハヨーロッパは、クラシックレースディビジョンという部門が、すべてのモデルをレストアしてレース現場に持っていく。欧州でヤマハのイメージはスタイリッシュでレーシー。ヤマハはミッレミリアなどで見て触れて体感したことを開発に活かしているのも特徴的」

「ヤマハヨーロッパの開発陣は、オーセンティックなイベントに参加し、開発に活かしている。食事をしながらモーターサイクルを嗜むという文化がふつうにあるので、バイクの楽しみ方が深くてすごくおしゃれ。こういうスタイルが日本にどんどん浸透させて『別に速くなくてもモーターサイクルは楽しい乗り物なんだよ』っていうことをヤマハは地道に展開している」

モーターサイクルデザインのこれから

GK清水氏は、「モーターサイクルのファッションについては、日本はガラパゴス化している。選べるものも少ない」と伝え、今後のモーターサイクルデザインを展望した。

「欧州は、モーターサイクルがライフスタイルのなかに普段着と同じようにある。DIESELとかは、ふつうにモーターサイクルを店内のアイテムのなかに溶け込ませている」

とにかく「バイクを楽しんでもらいたい」と話すGK清水氏。いっぽうで「われわれはまだまだ、モーターサイクルの面白さを提供しきれてない。残念なことに、日本のマーケットでは“幅”が狭すぎてマニアックな商材に落ちてしまっている。ヨーロッパのトレンドを見ると、モーターサイクルの世界はぜんぜんマニアックじゃない」と語る。

だからこそ、ライダーが楽しむためには、メーカー側が様々なアイテムを提供していく必要があるという。日本の二輪マーケットは縮小の一途をたどっている現状。「ついついつくる側も小さくなってしまう」とGK清水氏は指摘する。

「そんななか、オーセンティックなトレンドがヤマハのXSR700というかたちになって海外へ出ていってるのも事実。われわれが勇気を持って自信を持って楽しんで、海外の人が『いいね』と感じてくれるモーターサイクルをもっともっとつくっていきたい」

《レスポンス編集部》

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