日本自動車研究所(JARI/永井正夫所長)が2月から開始する自動運転車両性能とサポートを行うドライバー対応力の事前確認テストに先立ち、その内容を茨城県つくば市の施設で報道陣に公開した。
発展途上にある自動運転車まして、そのテストとなると想像しがたいものがあるが、それは運転免許取得を目指す「人」が自動車教習所で行う修了検定や卒業検定にそっくり。まさに自動運転車両の安全運転能力を測るテストだ。
事前確認テストは基本レベル、応用レベルなど自動運転車両の習熟段階(=開発者のニーズ)に応じた内容が用意されている。基本レベルは信号や標識を見て、適切に止まることができるか。カーブ走行時には減速、白線をはみ出さずに狭路のS字、クランク走行ができるかなど。他の通行車両がない限定された状態で、単独で安全で円滑な運転ができるかをチェックする。
これが簡単ではない。自動運転車でも標識を認識できなければならないが、例えば前方に横断歩道があった場合。歩行者がいれば一時停止だが、誰もいなければ、一時停止も徐行もせずに通行すべきだ。歩行者がいないのに停車すれば、後続車の追突を招く危険性があるからだ。免許保持者であれば、教習所の中で指導員に何度も注意されたという項目を、自動運転車両もなぞっている。
この基本レベルが仮免前の修了検定だとすれば、応用レベルは免許取得前の卒業検定だ。衝突しても車両が壊れない空気を入れたダミー車両や飛び出しを想定した歩行者ダミー、実際に走行する車両などを使って、混合交通の中での安全運転能力を調べる。例えば右折時に、対向する車両を優先させることができるか。前方の自転車を追い抜く場合にも、対向車との安全距離を予測できるかなどがチェック項目だ。
人の自動車教習と違う点もある。自動運転車の挙動を修正するドライバーの対応能力を測るテストだ。公道走行実験を行う場合には、自動運転が解除された場合に、遠隔操作、同乗操作を問わず人が対応する必要がある。こうした緊急時のドライバー対応力を測る。自動車教習所であれば、助手席に指導員が乗り込むが、JARIのテストでは車室側を向いたカメラや各種センサーがドライバーの姿勢の変化や反応時間などをチェックして計測する。
2016年、公道実証実験のためのガイドラインが警察庁から示され、国内での自動運転車の公道走行実験は世界と比較しても容易に行えるようになったが、人と同じように自動運転車両の運転能力も千差万別。どの自動運転車両も安全に公道走行ができるのか。JARIの試みは、その確認ができる今のところ国内唯一の第三者試験機関といえる。