AとEで一変するクルマ、UX/UIはどう変わるのか…日産自動車 グローバルデザイン本部 脇坂善則氏【インタビュー】

日産自動車でCASE車両のUX/UIの研究に携わる脇坂善則氏(グローバルデザイン本部 UX/UIデザイン部 シニアUXデザイナー)は「CASEは、自動車の利用方法やインターフェイスを一変させる可能性がある」という。

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AとEで一変するクルマ、UX/UIはどう変わるのか…日産自動車 グローバルデザイン本部 脇坂善則氏【インタビュー】
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コネクティビティ(Connectivity)、自動運転(Autonomous)、シェアードサービス(Shared & Service)、電動化(Electric)、これら自動車を取り巻く変革要素の頭文字をとってCASEという言葉がある。支えるのはネットワーク、AI、バッテリーといった技術要素だが、これら次世代カー普及の鍵を握るのはUX/UIだ。

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日産自動車でコネクテッドカーのUX/UIデザインに携わる脇阪善則氏(グローバルデザイン本部 UX/UIデザイン部 シニアUXデザイナー)は「CASEは、自動車の利用方法やインターフェースを一変させる可能性がある」という。

脇阪氏は、大学で認知心理学を専攻し、人と人工物のインタラクションについて興味を持ち、ユーザビリティやデザインやユーザーインターフェースについて学んできた経歴を持つ。新卒で入社した大手電機メーカーでは、家電製品、情報端末といったコンシューマー向け製品や、医療や電力管理システムといった企業向け製品のUI設計を経験した。その後通信端末メーカーや、大手WebサービスでWebサイトやモバイルアプリのUXデザインを担当していたが、日産自動車のUXデザインに対する取り組みに興味を持ち昨年6月に日産自動車に入社し、現在に至る。心理学のバックグラウンドを持ち、UX/UIにも精通する自動車業界では異色の人材だ。

---:はじめに、なぜ自動車業界に興味を持ったのですか。

Webやアプリの世界は、その多くがデジタル(オンライン)で完結しています。一方、自動車はリアルに存在するプロダクトでありながらインターネットにつながることで様々なサービスを使えるようになっていくので、リアルな世界とデジタルの世界をまたいでUXを考えることができます。これは携帯電話がフィーチャーフォンからスマートフォンに移行していった時の状況に似ていますが、それ以上の大きなインパクトがあると考えています。オンラインとオフラインの世界をまたいだ体験におけるUX/UIをデザインすることに興味を持ちました。

---:「自動車の利用方法やインターフェースが一変する」というのはどういうことでしょうか。

例えば携帯電話のデザインでいうと、ハードウェアは縦長で大画面のタッチパネルになり、ソフトウェアはiOSやAndroidのUIデザインのガイドラインに準拠したものになりました。サービスや機能での差異はあるものの、ハードやソフトの形は、概ね一つの方向性に収斂され、サービスやコンテンツのデザインで競争するステージに入ってきています。一方自動車では、電動化や自動運転など新しい技術が投入されているものの、形状や機能の表現のデザインにはまだ明確な答えが出ていません。各社が試行錯誤を続けて次世代カーのUXの形を模索している状況です。

自動車のインターフェースデザインでは、携帯電話業界で起きたような変化がこれから起ころうとしています。次世代カーに必要な機能やサービスは何か、そしてそれらを使ってもらうためのインターフェースはどうあるべきかを考えるステージに差し掛かってきていると言えます。

---:具体的にはどのあたりが変わってくるのでしょうか。

次世代カーのインターフェースデザインに大きなインパクトを与えるのはCASEでいうとAとE、つまり自動運転と電動化ではないかと思います。4つのタイヤで走るということは変わらないかもしれませんが、車載システムやハンドルなどの操作系の形状は変わっていくでしょう。インスツルメントパネルの形状やモニターが提供するコンテンツや情報も変わってくると思います。

私たちは車に乗る前の体験を「オフボード」、車に乗ってからの体験を「オンボード」と呼んでいます。車に乗る前に使うWebやモバイルアプリの体験と車に乗った後の体験を別で考えるのではなく、一連の体験として捉えUX/UIを考えています。車に乗る前から、モバイルアプリで車の充電状況を知ることができます。車に乗る前からモビリティの体験は始まっているのです。

次世代カーのUX/UIはまだ発展途上の段階ですが、これからの10年くらいでインターフェースデザインの標準的な形が定まってくるのではないでしょうか。

---:10年後に一定の形ができるとして、UX/UIの設計はどれくらい先を見ているのでしょうか。

車というハードウェアの設計・生産とからんでくるので、数年先でしょうね。技術開発は長期的な取り組みですが、10年後の市場やトレンドを読んで製品開発をするのは難しいので、2、3年先というのが現実的なスパンです。アプリの場合はリリース後のアップデートや新機能の追加が容易なので、今現在の市場をみながら設計・開発ができますが、車のUX/UIとなるとそれくらい先をフォーカスした設計になると思います。

---:CASEのAとEの役割の話がありましたが、CとS、コネクティビティとシェアードサービスについてはどうでしょうか。

ネットにつながることで、車に乗り込むときにログインが必要になったり、より高度なパーソナライズができたりするようになるかもしれません。カーシェアリングもネットに接続することによって、より便利になるでしょう。

どちらもUX/UIに影響を与えるものですが、自動車の技術革新における位置付けとしては、レベルが異なるものかなと思っています。自動運転やEVというのはそれ自体が、自動車の機能に直接影響を与え、付加価値となりうるものです。一方、コネクティビティとシェアードサービスについては、自動車がインターネットにつながること自体に価値があるわけではありません。つながった上でなにができるか、どんな体験を提供することができるかがユーザー体験にインパクトを与えることになります。もちろんインターネットにつながるためにはソフトウェアプラットフォームやセキュリティなどの領域での技術革新が必要なのですが、ユーザーにとっては、機能やサービスを得るだけでなく、それらをいかに楽しく魅力的に使えるかというエモーショナルな体験が必要です。日産ではコネクテッドカーのUXの新しい価値創造のためにUX/UIデザイン部が新設され、この課題に取り組んでいます。

UX/UIデザインとは、次世代カーでの体験や操作性をより良くするため、より安全に使っていただくため、人、車、サービスと、それぞれのインタラクションをデザインすることだと考えています。

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《中尾真二》

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