【2018年展望】EVで未曾有の日本6社連合へ…CASE+A がもたらす自動車産業の激流

電動化やシェアリングといったクルマの新たなテクノロジーや使われ方など「100年に1度という大変革」(トヨタ自動車の豊田章男社長)の動きは加速し、個々の企業ベースでは、数年先の経営の健全性を左右するような舵取りを迫られる年となろう。

自動車 ビジネス 企業動向
トヨタ自動車とパナソニックの共同会見
  • トヨタ自動車とパナソニックの共同会見
  • トヨタMIRAI(ミライ)
  • トヨタ コンセプト-愛i(東京モーターショー2017)
◆未踏の3000万台も視野に入る中国の新車需要

2018年のグローバルの新車需要について、日本自動車工業会の西川廣人会長は「(各地域の)経済指標などから、ざっくり言って順調に行くだろう」と観測する。新年も17年に続いて大半の地域で底堅い成長が見込まれている。その一方で、電動化やシェアリングといったクルマの新たなテクノロジーや使われ方など「100年に1度という大変革」(トヨタ自動車の豊田章男社長)の動きは加速し、個々の企業ベースでは、数年先の経営の健全性を左右するような舵取りを迫られる年となろう。

まず、各社の経営体力に直結するグローバルの需要動向を展望すると、18年も堅調な推移が見込まれる。最大マーケットである中国の17年は、前年を3%程度上回る2900万台規模となった模様。排気量1.6リットル以下の小型車に対する取得税減税が縮小されながらも継続されたことで、小幅の伸びながら過去最高を持続した。SUVを中心に消費者の新モデルへの反応は良く、18年には3000万台という未踏の大台への到達も現実味を帯びてきた。

米国の17年は16年まで2年続いた過去最高からは反落したものの、16年を2%程度下回る1710万台前後となった模様だ。カリフォルニア州など12州で実施中の「ZEV(ゼロエミッション車)」規制が18年モデルから強化されているといった不透明な要素はあるが、法人税減税への期待など明るい材料もあり、18年も1700万台ラインの確保が有力視されている。

◆日本市場は2年続きの500万台ラインへ

一方、国別では3番目に大きな市場である日本は、17年が前年を5%程度上回る520万台規模となったようで、2年ぶりに500万台に復活した。先行して回復していた登録車に加え、15年度の増税で長期の低迷が続いた軽自動車も17年春からプラスに転じている。

「経済環境は良くなっており、いい商品をオファーすれば、(顧客に)見ていただける状況」(西川自工会会長)との手ごたえもある。日産自動車とSUBARU(スバル)による完成検査の不正による影響は限定的であり、18年の総市場は悪くても500万台ラインは維持できるというのが大方の各社の見方だ。

このほか、欧州(主要18か国の乗用車)は17年が前年比3%程度の伸びとなる1430万台前後となった模様で、14年から4年連続でプラスを持続しており、18年も安定推移となりそうだ。また、中国と日本を除くアジアではインド、インドネシア、タイといった主要市場で17年の販売がいずれもプラス成長となっており、18年もアジア新興諸国の市場活力は持続する勢いにある。

◆加速するスタートアップ企業との協業にはリスクも

「100年に1度」と豊田社長が指摘する自動車産業の大変革は、4つの頭文字から「CASE(ケース)」と表現される新たなテクノロジーやモビリティサービスが引き金となっている。CASEは、独ダイムラーのディーター・ツェッチェ社長が16年10月のパリモーターショーで言及したもので、それぞれの頭文字は(1)コネクテッド、(2)オートノマス=自動運転、(3)シェアリング、(4)エレクトリック=電動化---を示す。

こうした4要素に連動するかたちでAI(人工知能)も欠かせない技術要素として脚光を浴び、「CASE+A」という様相となってきた。AIをめぐっては、自動車業界が外部の企業や研究機関との連携で凌ぎを削る展開となっている。「オープンノベーション」を合言葉に、業界は国内外の多くのスタートアップ企業を含め、協業や出資を急いでいるのだ。

協業を進めるこうしたスタートアップ企業の実態は「玉石混交」なのだろうが、パートナーの吟味よりも提携スピードを重視している。大変革期にはそれが正解としても経営資源は無限ではなく、「石」をつかんで時間とコストを浪費するリスクも高まっている。「玉」を選別する選眼力の優劣が、その企業の盛衰を左右する展開ともなっていく。

◆トヨタ、EVとバッテリー開発で電動化に大きな布石

電動化では、17年12月にトヨタが電動車のグローバル販売比率を30年までに50%に引き上げるなどのビジョンを発表したことで、日産やホンダなどを含む日本大手の中期戦略が明確になった。電動化で当面の量的な本命はハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)となるが、普及イメージ先行の電気自動車(EV)への取り組みも加速していく。18年には日産とホンダが、19年の「NEV(新エネルギー車)規制」実施を打ち出した中国市場に新型EVを投入する。

トヨタは、17年にマツダ、デンソーとのEVの基幹技術の開発会社設立や、電動化のカギを握るバッテリーについてのパナソニックとの協業強化と、相次いで大きな布石を打った。また、インドでは現地最大手のスズキと組んで20年ごろに投入を見込んでいるEVで協業することで合意した。

豊田社長は、電動化を促す潮流として「『ZEV規制』と『燃費規制』のふたつの課題」を指摘する。前述のように米国では12州が導入しているZEV規制は18年モデルからハードルが上がった。中国が導入するNEV規制もZEVと同じ範疇のものだ。一方の燃費規制の代表的なものには、メーカーごとに燃費基準を設定する「CAFE(企業平均燃費)」があるが、米国ではこれも17年から25年に向けて段階的に強化されていくプログラムがすでに始まっている。

◆多品種少量生産を乗り切る「EVプラットフォーム」に集結

それぞれの規制の網がかぶさるクルマの数量は「CAFE規制の方が圧倒的多数になる」(豊田社長)。つまり、燃費の改善には既存のHV技術やエンジン車で対応するのが現実的な姿ということだ。かといって、ZEVの代表選手となるEV投入までの猶予はすでになくなっている。しかも、国や地域ごとに適したモデルをある程度の品ぞろえも伴ったうえで投入する必要があるため、EVの1モデル当たりの生産は自ずと少なく、当面は「多品種少量生産」を迫られる。

トヨタとマツダ、デンソーのEV開発会社は、3社が得意とする知恵や手法をもち寄って、そうしたEVの特質に対処する狙いだ。マツダの開発ノウハウである「一括企画」などにより、軽自動車からトラックまでの幅広いモデル開発を効率的に進めていく。

この連合にはトヨタグループのダイハツ工業や日野自動車だけでなく、スズキ、スバルといったトヨタとの提携企業の参画も確実視される。つまり、日本の自動車メーカー6社がこの「EVプラットフォーム」に集結することになる。個々の企業のブランド特性をどう生かすかといった大きな課題があるが、18年には日本の自動車産業史上でも「未曾有の連合体」の胎動が始まる。
《池原照雄》

編集部おすすめのニュース

特集