米国追加関税---自工会が早期完全回避を引き続き要請

自工会記者会見(5月22日)
  • 自工会記者会見(5月22日)
  • 片山会長
  • トランプ大統領(4月3日)
  • 日本の自動車メーカーの米国貢献
  • 三部副会長
  • ジャパンモビリティショー2023
  • エスピノーサ副会長

日本自動車工業会(自工会)は5月22日、都内で記者会見を開催した。片山正則会長(いすゞ自動車会長)らが米国通商政策への対応などについて説明した。同日会見前の理事会では「米国通商対応」、「自動車税制改正」、「ジャパンモビリティショー」などについて議論された。


●米国通商、政府の対応に感謝

米国政府は4月3日に自動車について、5月3日に自動車部品について25%の追加関税を発動し、日米のみならず世界経済への影響が拡大している。

片山会長は、日本政府が米政府との継続的な対話の場を設けていることに感謝を示したうえで、 「どういうことが起こるかわからないので、場合によっては、緊急対応的な景気支援策を考えていく必要もあるかもしれない」 と述べた。さらに 「広く自由な貿易体制というのが歴史的にも最も適正であると考えているので、引き続き、早期に完全回避ということをお願いしたい」 と強調した。

国内では政府が中小サプライヤー向けに全国特別相談窓口を設置し、資金調達支援や経営アドバイスを迅速に実施している点も評価した。

いっぽうで、政策動向が読みづらいので、自工会としても対応や施策の判断が難しいともいう。「交渉がどれぐらい長引くのか、それがどういう決着するのか」。また各社の状況は「それぞれのマーケティング対応があるので、どうするとは一概に答えづらい」。各社の次期決算見通しにおいて、関税の影響は大小があり、また未定のところもあった。

●部品の関税を完成車メーカーが負担?

完成車メーカーによる部品メーカー(サプライヤー)の関税負担について、片山会長は 「部品の関税負担に関して、自工会と日本自動車部品工業会において、何か公式に話したことはまだない」 とした。なお、部品メーカーと完成車メーカーは「一心同体、運命共同体、共存共栄」であり、政策が具体化すれば「双方での知恵出し」を進める考えを示した。

●安全基準が非関税障壁に?

日本の安全基準が非関税障壁のような言い方をされていることについて片山会長は、安全基準については、国連自動車基調基準調和世界フォーラム(WP29)を通じて、国際調和と政府間の認証相互承認推進に1970年代から取り組んできたと説明し、「我々としてはしっかりと取り組んでいるという認識」と述べた。

また、関税交渉の枠組みから自動車を外す可能性については、「一体でやっていただきたい」と述べ、石破茂首相が「日本メーカーの米国生産車を日本に輸入する」案を示したことについては、「交渉ごとなので、そういった案もあるかもしれないが」、関税の撤廃が本筋であるとの考えを示した。いずれについても自工会として具体的な対応にはなっていないとした。

●日本の自動車メーカーによる米国経済への貢献

日本メーカーの米国現地生産は1982年開始以降、2024年末までの累積投資額が664億ドル、生産台数が1億台に達した。2024年の現地生産台数は328万台で、米国内で11万人の直接雇用を創出し、経済波及効果を含め220万人以上の雇用を支えているという。自工会では、高い環境性能・安全性能を備えた商品提供を通じ、米国社会・経済へ貢献していると自負している。


《高木啓》

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