アストンマーティン ヴァンテージ 新型はよりスポーツカーたるものに[インタビュー]

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アストンマーティンラゴンダリミテッド車両エンジニアリングチーフエンジニアのマット・ベッカー氏(右)とインテリアデザイン担当のマット・ヒル氏(左)
  • アストンマーティンラゴンダリミテッド車両エンジニアリングチーフエンジニアのマット・ベッカー氏(右)とインテリアデザイン担当のマット・ヒル氏(左)
  • アストンマーティンラゴンダリミテッド車両エンジニアリングチーフエンジニアのマット・ベッカー氏(左)とインテリアデザイン担当のマット・ヒル氏(右)
  • アストンマーティンラゴンダリミテッド車両エンジニアリングチーフエンジニアのマット・ベッカー氏
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  • アストンマーティンラゴンダリミテッド車両エンジニアリングチーフエンジニアのマット・ベッカー氏
  • アストンマーティンラゴンダリミテッド車両エンジニアリングチーフエンジニアのマット・ベッカー氏
  • アストンマーティンラゴンダリミテッド車両エンジニアリングチーフエンジニアのマット・ベッカー氏
  • アストンマーティンラゴンダリミテッドインテリアデザイン担当のマット・ヒル氏

アストンマーティン『ヴァンテージ』新型は、同社のセカンドセンチュリープラン第2弾として『DB11』に続きデビュー。その開発はこれまで以上にスポーツカーを意識したものとなっている。そこで、その開発目標や、大きく様変わりしたインテリアについて話を聞いた。

◇ヴァンテージはスポーツカー

---:では早速ですが、ヴァンテージの開発目標はどういうものだったのでしょう。

アストンマーティンラゴンダリミテッド車両エンジニアリングチーフエンジニアのマット・ベッカー氏(以下敬称略):私はアストンマーティンに入社して3年経ちますが、その前はロータスに26年在籍していました。

私が入社した時には、既にどのような車種を開発するかという予定は立てられていましたので、私としては、エクステリアデザインがほかのモデルとは明確に違った車種を開発すること。同時に動的性能も他のモデルと明確に異なったものを開発することが大きな目的でした。

DB11はGTカーという立ち位置ですので、乗り心地も良くなければいけませんし、ステアリングもGTカーとしてのフィールを持たせなければいけません。そう考えていくと、エンジンサウンドもそれなりに抑えなければいけませんね。

一方ヴァンテージはスポーツカーとしてのルックスを持たせ、ハンドリングも応答性が良く、機敏。運転していて楽しいクルマでなければいけないと考えていました。

またDB11のサスペンション・システムには、最新世代ビルシュタイン・アダプティブ・ダンピングが採用されており、ロードノイズも抑えることが出来ています。更に機械式のデフを採用しています。一方ヴァンテージのリアサブフレームは剛着していますので、剛性を向上させることが出来ています。そしてEデフを採用することで、よりスポーツカーとしての特性を実現しているのです。

---:つまり他のアストンマーティンのモデルとは明確に違う性格付けを、デザインでも、性能面においても作り上げるという目的があったということですね。

ベッカー:そうです。これまでのGTカーとスポーツカーのポジショニングを考えて、新型ヴァンテージはよりスポーツカーに近づけたかったのです。

◇先代からは大幅に性能向上

---:先代のヴァンテージから新型ヴァンテージに向けて、どのような変更をしているのでしょう。

ベッカー:先代のヴァンテージはサスペンションの技術がかなり旧式で、機械式のデフや ダンプトロニックも旧式のソフトでした。そしてダブルウィッシュボーンサスペンション形式を採用していました。それに対し新型はEデフやトルクベクタリング、ダンプトロニックも新しいソフトになり、ステアリングの電子制御システムも最新のソフトウェアです。更にマルチリンクサスペンションを採用していますので、より一層チューニングが可能な技術を搭載しています。

また、今回は最新のピレリ P Zeroタイヤをアストンマーティン専用に作ってもらいました。コンパウンドや構造も特注です。先代のヴァンテージも非常に優れたスポーツカーでしたが、これらにより性能が大幅に向上したと自負しています。

◇独自チューニングのエンジン

---:今回搭載されてるエンジンはAMGから提供された510ps/685Nmを発揮する4リットルツインターボV8エンジンが搭載されていますが、AMG『GT』との比較で、エンジンの違いはどういうところにありますか。

ベッカー:我々のニューヴァンテージはウェットサンプを採用しました。それによりエンジンのパッケージング上でのレイアウトも我々の理想としている位置に配置出来、それによって前後の重量配分も最適化出来ています。また吸気系も我々独自のものですし、ボッシュのECUも同様です。これらによって我々が目指している走行性能を達成しています。

またルックス以外に我々が求めているサウンドもありますので、独自の排気系を採用することで我々が求めているサウンドを達成しています。

---:先代のヴァンテージにはV型12気筒エンジンなどもありましたが、今後ヴァンテージのバリエーション展開はどうなっていくのでしょう。

ベッカー:色々考えていることはありますが、まだ残念ながら公表は出来ません(笑)。

---:エンジンのパワー数値を見ると、このV8でもよりパワーアップした仕様を作れそうですね。

ベッカー:そうですね。このクルマはあくまでもスタートですから、将来的にはアップさせていく傾向にあるでしょう。

アンディ・パーマーCEOが我々のところに来てから、明確な将来の計画が立てられ、そしてそれぞれの機種がいつどのような派生モデルを作っていくのか、いつアップデートするのか、そのような計画のもとに我々エンジニアリングやデザイナーとともに推進していきます。ちょっとまだ残念ながら公表することは出来ませんが、楽しみにしていてください。

◇サーキットを意識したインテリアデザイン

---:インテリアデザインについて聞かせてください。今回のインテリアデザインのコンセプトはどういうものだったのでしょう。

アストンマーティンラゴンダリミテッドインテリアデザイン担当のマット・ヒル氏(以下敬称略):やはりキャラクターを差別化するということです。DB11はGTカーですから、乗り心地が良く、スポーティーでもありますので、優雅な内装ですね。

一方、ヴァンテージの場合はスポーティーという“S”の部分に注視し、どちらかというとサーキットを意識したインテリアデザインになっています。

---:つまり、サーキットイメージしてそこで存分に楽しめるインテリアになっているということですね。

ヒル:その通りです。そこは我々も意識して明確にしたかったところです。またカラーを始め、トリムを含めてありとあらゆるオプションを用意していますので、お客様がよりサーキットで楽しめるように内装はカスタム化することも出来ます。

---:先ほど“S”というワードが出ましたが、これはどういうことでしょう。例えばヴァンテージSという意味でしょうか。

ヒル:いえ、これは感覚の部分で、よりスポーティーであるということです。ドライビングポジションは低くなり、ベルトラインも低くしています。ドライバーがドライバーズシートに座って、周りの環境がよりスポーティーに、よりアグレッシブに感じられるようになっています。DB11はどちらかというと、流れるようなラインが内装で目立っていますが、ヴァンテージでは角ばったラインとなっており、よりしっかりとした目的、より走りを楽しむクルマだという印象を持たれるでしょう。

◇ウォーターフォールではないインテリア

---:これまでのアストンマーティンのインテリアデザインからは大きく変わったという印象を受けますが、今回なぜこのヴァンテージで大きく変えたのですか。

ヒル:アンディ・パーマーCEOからの明確な指示に、他のモデルとは差別化するということがありました。従って今回は造形もライン、グラフィックスもよりスポーツカーを意識した、よりアグレッシブな内装を目指しています。

我々はピクチャーフレーム、額縁と呼んでいるのですが、その額縁の中に収まるようなイメージ、スポーツカーとして凝縮されたデザインを目指しています。

もうひとつの目標は、新しいお客様にアピールするデザインを目指そうとしました。そこでメカニカルな、アナログ的なスポーツカーを目指したのです。例えばヘリコプターの操作パネルと同じようなフィーリングで、今までのアストンマーティンとは明確に違う内装を目指そうという意図がありました。

---:ピクチャーフレームについてもう少し具体的に教えてください。

ヒル:DB11のDNAとして、エクステリア、インテリアとも流れるようなデザインになっています。例えばセンターコンソールも、ウォーターフォール、滝と呼んでいるもので、これも流れるようなデザインです。

一方ヴァンテージの場合は、どちらかというと機能性を重視した、いわゆる工業的なルックスとなっており、流れるような線ではなく途中で区切られた、いかにも機能的なルックスとなっています。そのそれぞれが額縁の中に全て収まるようなイメージになっているのです。

◇地域専用のデザインプロジェクトも視野に

---:アストンマーティン初のグローバルブランドセンター、The House of Aston Martin Aoyamaのデザインもタッチされたということですが。

ヒル:私が属するチームのメンバーがこのショールームをデザインしました。そしてデザインの責任者であるマレック・ライヒマンとアンディ・パーマーの指示に従って、コンセプトに基づいて設計しています。

---:ここにはどういう人達に来てほしいと思っていますか。

ヒル:アストンマーティンのブランドセンターとして、特定のお客様に限定するのではなく、アストンマーティンに興味のある人には誰でも来てもらい、アストンマーティンの歴史に触れてもらったりしてほしいですね。また東京は国際都市なので、日本人だけではなく海外のお客様にも来てもらいたいと思っています。

---:本国のアストンマーティンでは、アストンマーティンに関わる人たち全てをファミリーと呼んでいますね。CEOやデザイナー、エンジニアだけでなく、工場で働く人はもとより、庭木職人までもがそこに含まれると聞いています。このThe House of Aston Martin Aoyamaに在籍する人達もやはりファミリーなのですか。

ヒル:もちろんそうです。イギリスだけではなく世界各国に事業所があり、それぞれの国でもアストンマーティンに関わる人たちは皆アストンマーティンファミリーです。

ベッカー:我々の良いところのひとつに、アンディ・パーマーがオープンドアのポリシーを持っており、直接社長に誰でもが、いつでも会うことが出来るということです。そのようなファミリーのフィーリングが世界中のアストンマーティンのディーラーにも広がっています。

---:ではここ青山にアストンマーティンを知りたいと思って来るお客様もそうなのでしょうか。

ヒル:そうですね。我々デザイナーもエンジニアもお客様と直接フィードバックをもらうことは非常に建設的なことですので、是非ここに来て、個人的にお話をして、良い体験をしてもらい、素敵な記憶を持って帰ってもらいたいですね。

そして今後もイギリスと日本のデザイナーと交流を深めていって、場合によっては地域専用のデザインプロジェクトも考えていきたいと思っています。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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