地元負担か、国からの支援か?…路線維持問題で深まるJR北海道と自治体との溝

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1日1本の列車しか発着しない札沼線の終点・新十津川駅。11月7日に発表された2016年度の線区別収支状況によると、同駅を含む札沼線北海道医療大学以北の輸送密度は、JR北海道のワースト1となっている。新十津川町では、駅長犬に柴犬を迎えてイベントを開催するなど、人を呼び込むための懸命な努力が続けられているが、当別、月形、浦臼、新十津川の沿線4町は、路線維持困難との認識で一致し、バス転換を視野に入れた新たな交通体系のあり方を考える方向で検討を進めていくという報道があった。
  • 1日1本の列車しか発着しない札沼線の終点・新十津川駅。11月7日に発表された2016年度の線区別収支状況によると、同駅を含む札沼線北海道医療大学以北の輸送密度は、JR北海道のワースト1となっている。新十津川町では、駅長犬に柴犬を迎えてイベントを開催するなど、人を呼び込むための懸命な努力が続けられているが、当別、月形、浦臼、新十津川の沿線4町は、路線維持困難との認識で一致し、バス転換を視野に入れた新たな交通体系のあり方を考える方向で検討を進めていくという報道があった。

JR北海道は11月16日、「第12回JR北海道再生推進会議」の議事概要を公表した。

同会議は、安全対策や路線維持問題などで揺れるJR北海道に対して、コンプライアンスや組織経営の面で、外部の視点から助言を行なうもので、2014年6月12日に設けられ、同日に最初の会合が開かれた。委員には、高橋はるみ北海道知事をはじめとして、学識経験者、地元財界関係者、弁護士らが名を連ねており、2015年6月27日付けで、JR北海道に対して「JR北海道再生のための提言書」を提出している。

12回目を数える会議は10月23日に開催され、JR北海道が2016年11月18日に公表した「当社単独では維持することが困難な線区」への取組みに対する意見が交わされた。

席上、委員のひとりが「『JR北海道再生のための提言書』を提出し二年が経つが、コスト削減に繋がったのは留萌・増毛間のみで夕張支線は再来年になる。我々は資金繰りを心配している」と発言。

「路線バスなどあらゆる交通手段を組み合わせた総合交通体系の大きな枠組みを固めた上で個別の議論に入るべきである」

「全て残すことを前提に議論が進んでいるのはおかしなことである」

と、方向性に疑問を持つ意見も見られた。なかには、

「今のやり方で進めていては時間が相当かかる。議論が進んでいるところから先行して新たな交通体系へ移行していくべきだ。話が進まなければ、その間赤字を垂れ流すことになる」

「JR北海道は民間企業として、出来ることと出来ないことをはっきりさせなければ、国に支援を求めて路線を維持すべきだなどという議論に終始し、そうしているうちに会社が潰れてしまうのではないか」

という厳しい指摘もあった。

これに対してJR北海道側は、沿線に対して「話し合いのテーブルに着いていだたくことを優先した」と答えたうえで、「地域に必要な交通モードの議論に入る際は、北海道にも積極的に関与していただき、北海道全体の交通モードについて具体的な議論をさせていただければと思っている」と述べた。

北海道が関与する件については、高橋知事の代理として出席した山谷吉宏副知事が「北海道として今年度中に公共交通体系の新たなあり方を示す指針を取りまとめる予定で作業を進めている」と述べたが、地域にのみ負担を求め、サービス低下を続けるJR北海道に対する不信感が協議の妨げになっていることを指摘。さらなる自助努力を行なうとともに、国の支援を求めるには「JR北海道が北海道の交通の機軸の将来像をどのようにしたいのかを示すべき」とした。

国からの支援により路線を維持することに関してJR北海道側は、地域にとって「持続的でよりよい交通体系」にはならないとしており、「JRと地域の皆様で共に役割を分担し、より良い線区をつくり上げていきたい」とする会社側の姿勢は、少しずつ地域に理解されてきていると述べた。

JR北海道の島田修社長は、10月28日に高橋知事と会談しているが、その席で知事は、すべての負担を沿線に求めず、国からの支援も視野に入れるべきだと述べたのに対し、島田社長は慎重な姿勢を崩していなかったという。

高橋知事は、会見や宗谷本線、石北本線の沿線首長らとの会合で、北海道が路線維持問題へ積極的に関与することを表明している。国からの支援を躊躇うJR北海道と道の溝は、今回の会議で浮き彫りになっていたとも言え、今後の動向が注目される。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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