ヤマハ『MT-09』に搭載される846ccエンジンは、オートバイではチョット珍しい3気筒エンジン。
じつは2014年に初代がデビューしていて、今回乗ったのは今年マイナーチェンジした2代目。クイックシフターやトラクションコントロール、アシスト&スリッパークラッチを新たに採用し、吸排気系を見直した並列3気筒エンジンは最高出力116psを発揮する。
「3気筒エンジンって、いったいどんなパワーフィールなの?」
そう思う人もいるだろう。ヤマハがわざわざ開発しただけのことがあって、これがとてもいい。4気筒の高回転の伸びと、2気筒の低中速トルクを併せ持つ“いいとこ取り”のエンジンなのだ。
具体的に言うと、まず加速力が強烈。日常で使う低中回転域でのトルクがモリモリと図太く、ストップ&ゴーを繰り返す街乗りがエキサイティングなものになる。
ラフなスロットル操作でもギクシャクすることがなく、いつでも欲しいだけトルクを発揮するエンジンだから、無意識なうちにどんどんアクセルが開いていく。
意のままに操れる感覚があるのはソフトなサスペンションであったり、トラクションの良さであったり、神経質さがまるでない車体とエンジンのおかげ。
車体も軽くて、400クラスのような身のこなし。シートに座った途端に車体とのフィット感がいいことがわかり、ホールド性に優れるから鋭いダッシュもなんてことはない。ハンドリングもシャープで、旋回力も高い。モタードバイクのような軽快感がある。
しかもD-MODE(走行モード切替システム)があって、スロットルレスポンスを穏やかにすることもできるから乗り手を選ばない。
「MT-09ってどんなオートバイ?」って聞かれれば、「過激なスポーツバイク」と即答するだろう。「でも扱いやすくて、自在に操れる楽しさがある」と、付け加えることを忘れないでおこうと思う。
■5つ星評価
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
コンフォート:★★★
足着き:★★★★
オススメ度:★★★★
青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。