シートメーカーのアディエント、日産からグローバル・イノベーション賞を受賞…3つの最先端技術から

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シートメーカーのアディエントは、日産自動車による「2017年グローバル・イノベーション賞」を受賞した。これは、『セレナ』のシートに関する初採用技術が評価されたものである。同社は同時に「2017年日産品質賞」も受賞。こちらは4年連続の受賞で、内装備品サプライヤーとしては初である。

◇日産ミニバン系のシートを支えたアディエント

アディエントの近藤郁夫チーフエンジニアによると、「セレナ、『エルグランド』、『NV350キャラバン』等のミニバンのシート開発、生産の実績を数多く有しており、長きにわたり蓄積されてきた技術力がある」と自社の特徴を語る。

そのシートの開発自体には、「ユーザーが直接触れる表皮材や、その周りをカバーする樹脂、そしてシート自体を支える骨格構造や動かすためのメカニズムなど多岐にわたる技術力が必要になる」という。特に多くの機能と多彩なシートアレンジが要求されるミニバンの開発においては、普通乗用車とは異なる蓄積されたノウハウが必要不可欠だ。日本では神奈川県横浜市にあるアディエントのジャパン・テクニカル・センターに、「全ての部品の開発が可能な人材と環境を有している」と話す。

そういった技術の例として、エルグランドのセカンドシートでは、「セグメントトップなので、オットマンが装備されたり、リラックスした姿勢が取れるよう、バックレストが途中で折れる様な機構を持っていたりなど、様々な機能が付いている」と近藤氏。

またキャラバンは、商用車系から、16人まで乗れるバリエーションまであり、「シートだけで三桁に近い仕様を持っている」とし、それらをジャパン・テクニカル・センターにて開発しているという。

◇16パターンのシートアレンジ、そのうち5つはセレナ専用

セレナは日産の基幹車種のミニバンだ。そのフルモデルチェンジに際し、日産からアディエントに対し、大きな要求が2つあった。ひとつは、「セレナの主要ユーザーであるファミリー層が求める使い勝手の良い、他車にない多彩なシートアレンジが実現出来ること」だった。しかし、「それに合わせ機能が増えることで、重量も増えてもいいということではない。重量も高いターゲットをクリアすることがアディエントに期待されていた」と振り返る。

セレナのシートの特徴のひとつはスライド量だ。フロントシートは前後方向に240mm作動。セカンドシートは右席と左席ともに前後に690mm作動。かつ右側は左右に105mm、左側は210mmスライドも出来る。これを可能にしたのがスマートマルチセンターシート(以下センターシート)の存在だ。これは、左右のシートの間に位置。990mm前後スライドし、前席の間に配することも可能なので、セカンドシートの空いた空間(220mm)を利用し、左右スライドやウォークスルーが出来るようになっている。

先代セレナのサードシートにスライド機構はなかったが、今回は前後に120mmスライドが出来る。また、横に跳ね上げて格納も可能だ。これは競合他車も同構造だが、「跳ね上げた時の高さが、競合他車と比較し150mmから200mmほど低い位置なので、窓をふさぐことなく室内の明るさを確保。ドライバー席からの左側後方の視認性が向上しており高評価だ」と説明。

また、サードシートの座り心地に関しても、制約されたスペースではあるものの、「エマージェンシーではなく、長距離でも座っていられるような座り心地を目指して開発をした」と述べる。

こういったスライドやセンターシート等により、セレナは16パターンのシートアレンジが可能だ。特にそのうちの5パターンは「競合車では出来ないアレンジだ」という。

ひとつは、センターシートをフロントシートの間に位置させることで、セカンドシート中央に空間が出来るウォークスルーモード。次に、セカンド左側シートは前後と同時に横にも動くので、「例えばチャイルドシートを付けて、ドライバー席にかなり近づけた位置まで持ってくることも可能だ。お母さんと子供の位置関係を近づけることが出来る、ベビーケアモードで、子供の気配を感じながら運転も出来るアレンジだ」と近藤氏。

また2列スーパーリラックスモードは、センターシートを前席まで出し、セカンドシートの左右をスライドさせくっつける。そうしたうえで、後方へ下げるモードだ。近藤氏は、「これまでセカンドシートの後ろにホイールハウスがあり、その制限を受けて、後方へのスライド量は決まっていたが、セカンドシートを中央に寄せることで、そのホイールハウスを避けた状態でさらに後ろまで下げることが出来るようになった」と活用方法を説明。

またセンターシートは、サードシートのすぐ手前までスライド出来るので、サードシートに座りながらセンターシートを活用することも可能だ。このセンターシートの背面側にはカップホルダーと小物入れが装備されている。「サードシートに座りながら、簡易的なテーブルとしてなど、色々な使い方が可能だ」。

最後はサードシートへの乗降性向上だ。センターシートを前に出しセカンドシートを中央にスライドさせることで、「競合車のようにセカンドシートを前に出し、なおかつバックレストを倒さなくてもサードシートへの乗り降りがしやすくなっている」と説明した。

◇セレナに採用された3つの最先端技術

このように多彩なレイアウトを達成するうえで、アディエントでは3つ、最先端技術を採用し、日産からの要求を達成した。

近藤氏は、「ファミリー層が求める使い勝手の良い多彩なシートアレンジを実現するために、高強度のアルミ超ロングスライド構造と、最大の特徴である全てのシートベルトを内蔵したセカンドシートを採用した」と話す。特にセカンドシートの右側はセンターシート用を含め2つのベルトを装備。「セカンドシート3名着座において、全ての着座乗員用のベルトをシートに搭載しているのが特徴だ」という。これにより天井やピラーなどからベルトを取りまわす必要がなくなったため、多様なシートレイアウトが可能になった。

また軽量化に対しては、前述の通りロングレールをアルミ構造で対応。同時にシート構造に1.2GPa級の超高強度のハイテン材を採用した。

高強度アルミ超ロングスライド構造は、2列目席のロングスライドレールに高強度アルミ材を使用した新断面形状を採用。スチール製レールに対して約1kgの軽量化を実現した。また、可動部にベアリング機構を採用することで操作力を軽減。今回は、「左右シートとセンターを合わせて計6本のアルミロングレールを採用し、そのレールの摺動部にベアリングを用いることで作動される時の抵抗を極限まで減らすことでユーザーの操作力を軽くしている」と説明した。

そして、シートフレームに1.2GPa級高強度ハイテン材を採用した点について近藤氏は、「セカンドシートの右側はシートベルトを2名分搭載したことで、シートに要求される強度は従来の約1.5倍まで増えた」。そのうえで、「重量を増やさないため、今回鉄鋼メーカーと共同検討していた1.2GPa級超高張力鋼板を採用。従来材を採用した場合に比べシート全体トータルとして約7kgの軽量化になっている。基本となる大物のパネル部品などにはほとんど採用している」と成果をアピールした。

2017年、アディエントは日産以外に、トヨタ自動車からは「地域貢献賞」と「ダイバーシティー・エクセレンス賞」を、ホンダからは「開発賞」をそれぞれ受賞している。「原価低減などではなく開発賞を受賞出来たのは、アディエントの技術力が理解されたということだ」とは、アディエント執行責任者社長Adient GK兼副社長アジアOEMカスタマーの内田博之氏の弁。

そして、「我々は技術の会社なので、技術にお金をかけ、技術でリードをしていく。これからもそのようにしていく」と抱負を語った。
《内田俊一》

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