【インタビュー】ニュル参加の夢叶え、後進の育成目指す…スバル ディーラーメカニックが得たもの

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ニュル24時間レースにメカニックとして参加した、大阪スバル 村居孝教さん
  • ニュル24時間レースにメカニックとして参加した、大阪スバル 村居孝教さん
  • ニュル24時間レースにメカニックとして参加した、大阪スバル 村居孝教さん
  • ニュルブルクリンク24時間耐久レース2017
  • ニュル24時間レースにメカニックとして参加した、大阪スバル 村居孝教さん
  • 大阪スバル箕面店の服部克彦店長
  • ニュル24時間レースにメカニックとして参加した、大阪スバル 村居孝教さん
  • 大阪スバル箕面店
  • 大阪スバル箕面店で働く村居さん
5月にドイツで開催された「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」。スバルは、全国のディーラーで働く約2700名のメカニックから選抜した6名を現地に派遣した。あれから約2ヶ月。彼らは現場での体験を経てどのような日々を送っているのか。メンバーの一人、村居孝教さんの働く大阪スバル箕面店を訪ねた。

◆懸命な闘い、怒涛のレースを振り返って

大阪スバル箕面店には現在6名のメカニックが所属している。片側2車線の幹線道路沿いに面する店舗は、一ヶ月で整備約1000台、車検約100台に対応。大阪府内で一番多忙な店舗だという。そこで工場長を務める村居さんと、店長の服部さんに話を聞いた。

----:レース中からリタイアまで、改めて当時の心境を聞かせてください。

村居孝教さん(以下敬称略):レース中は無我夢中で、ほとんど睡眠も取らず必死で作業に臨みました。普段は立場上、指導する側にいるのですが、監督やSTIのメカニックの方に指示をもらうのはとても新鮮でした。今年のレースは暑さや事故、そして最後の炎上と、突発的に起きたトラブルやアクシデントが多かったんです。結果は残念ですが、色々あった分、対応力など得るものが大きかったのではないかと思います。

----:レース後に、「ドライバーの山内英輝さんが握手してくれて嬉しかった」とコメントされていました。

村居:そういった感動的な場面が、実は2度ありました。まずは、夜明け前にブレーキ関係とタイヤのメンテナンスのためにアンダーパネルを外す大きな作業があったのですが、作業後に山内さんがディーラーメカニック全員に握手をしてくれて勇気づけられました。そして、最終的にあのような形で終わってしまった時、「本当に今回はありがとう」とまた握手をしてくれたんです。皆でボロボロと悔し涙を流しました。山内さんは勝負することが好きな方で、生粋のレーサーだと感じましたし、とても良い刺激をいただきました。

----:他のディーラーメカニックの方との交流は続いていますか。

村居:メンバー6人はLINEで繋がっていて、帰国してから「悔しいよね、もう一回行きたい」と言い合っていました。今でもやり取りをしていて、レース記事を見たかとか、また皆で集まりたいと話しています。次は、来年の(2018年用レースマシンの)シェイクダウンの時に勢揃いするのではないかと思いますね。今年も、前回行った人たちが来ていて話を聞いたりしたので、「次に皆で会うのはあの場所かな」と…。

◆先を見据え、メカニックに機会を与える

----:服部店長や店舗の方も、選抜テストから村居さんをフォローされていたと思います。

服部克彦店長(以下敬称略):レース派遣は「はい、行きます」と言って行けるものではなく、スバルメカニックとしての資格条件が満たされ、技術力もなければなりません。私自身はメカニックの経験はないですが、村居が行った選考テストの作業(『WRX STI』の左右どちらかのフロントストラットの交換作業。迅速かつ正確な作業が評価ポイントとなる)を僕も試してみたんです。どれだけ大変なのか、やってみて実感しました。速いだけではなく丁寧に確実にできたからこそ、彼が選抜されたのだと思います。テストにあたっては、他のメカニックもアドバイスしたり、タイムキーパーをしたりと、全員で応援しました。

----:戻ってきてからの村居さんに変化はありましたか。

服部:まだ若いですし、少し我が強いところもあったのですが、和を強く意識するようになったと思います。人間的に一回り大きくなって、頼もしく感じています。もともと技術的スキルはあったので、そういった部分を学んできてほしいと思っていました。レース後に涙を流すほどだったようなので、良い経験をしてきたと思います。彼の背中を見て目指すものができた若いメカニックもいるでしょうし、これからもレベルアップしていってもらいたいですね。

----:ディーラーメカニックがレース派遣されることには、どのような意義があるとお考えですか。

服部:村居はレース前の集合研修やシェイクダウンも含めると2週間くらい店舗を離れていましたし、先日も若手のメカニックが86・BRZ Race(ワンメイクレース)への派遣に1週間ほど行っていました。店舗の運営のことだけを考えると、一人がそれだけの期間抜ければ業務が回らなくなるので行かせたくない。ただ、彼らの将来を考えて、そういう機会があるのであれば積極的に経験を積ませるようにしています。(レース派遣に)あまり前向きでない店舗もあるかもしれません。でも、うちの店舗は全体でフォローする、和を大切にする店舗でありたいと思っています。そして、それがお店の強みになるとも考えています。不在の間、忙しくなるのはわかっているけど、彼がいないからといって、お客様へのサービスの質を落とすわけにもいかない。結果をみると、いなくてもできたということですね(笑)。

村居:「(店舗を空けたら)居場所なくなるで」と出発前に言われていました(笑)。実際、帰ってきてみたら「やっておいたよ」と言ってくれたので嬉しかった。頼もしく思えたし、頭が下がりますね。

今のスバル(のディーラー)は、簡単に「じゃあ、行っておいで」と言える状況ではないと思います。ここ数年、アイサイトの評価が高まり、お客様の層も厚くなりました。色々な事故のニュースを見て、それを防げたらいいなということで選んでいただけることが多い。また、他銘柄からの乗り換えのお客様も増え、たくさんのお客様にお越しいただけています。その中で今回の機会をもらえたことは感謝していますし、さらに自信を持ってお客様にサービスを提供できるように成長し続けなければいけないと思います。

◆経験もとに、後輩の育成を

----:今回体験したことは、その後日常の業務にどう活かされていますか。

村居:現場ではSTIの方に教わる立場でしたが、自分の経験が邪魔することもありました。これまでの経験を活かしながら、新しいことに取り組むことの難しさを学びました。市販車をベースにしているとはいえ、レースマシンにおいて必要とされる作業の精度や確実性は格段に厳しい。トルクの管理、部品の取扱いなど勉強になることは多かったです。

レース前にひとつひとつ教えてもらう時間はないので、自分でしっかり判断して確認できるようになるためには、どうしたらいいかを必死に考えました。その中で気づいたのが、教えるためにも準備をすることの大切さでした。工場長として、店舗内の業務における失敗やミスをゼロに近づける努力をしていますが、やはり人間なので、ヒューマンエラーは起こりえます。広い視野で店舗内の業務を見渡すことを意識することで、この人はこういうところがミスしやすい、ということを事前にアドバイスすることもできるようになりました。素早く確実に、ミスを防いで完全な状態で、お預かりしたクルマをお客様にお返しする。これまで以上に重点的に気をつけている部分です。

STIの菅谷(重雄)監督にも、「普通に作業する時間はあるけど、単にタイヤを外してつけるだけではなくて、それ以外に何かおかしいところはないか、不具合はないかを一回の動作で出来るようになって欲しい」と言われました。場面は違いますが、検査をする際などに心がけていますし、自分の視野も広くなったと感じています。

----:今後、村居さんはどのようなメカニックを目指されるのでしょうか。

メカニックとしては、やることをやったと思っています。もちろん、これまで支えてもらった人に恩返しはしていきたいですし、業務の中で新しい知識や技術を身につける努力をこれからも続けます。ただ、やはり力を入れて行きたいのは後輩の育成ですね。スバルメカニックは、レースに参加するという貴重な機会を与えてもらえるので、同じような経験を持ったメカニックを増やしていきたいというのが僕の最終目標。

1~3年目のメカニックを教育する“指導推進”の資格も持っているのですが、今回ニュル24時間レースに行ったことで、経験をもとに話せるようになりました。「ここを目指してくれ!」という言葉の信憑性も高くなったと思うので、教育に活かしていきたいですね。

最近はメカニック不足とも言われていますが、若手のモチベーションを上げていくには、レース参加を目指してもらえるようにテコ入れしていかないといけないし、会社の方針もそうなっている。箕面店でも4年目と7年目の後輩が、刺激を受けてくれています。仕事に対して熱く、同じ気持ちになってくれるメカニックを増やしたい。そうしたらスバルは安泰なのではないかと思います。

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《吉田 瑶子》

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