東芝、高速検知と低消費電力を両立した水素センサーを開発

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水素社会のイメージ図
  • 水素社会のイメージ図
  • 応答時間と消費電力の関係
  • 試作した水素センサーと動作原理
  • 試作した水素センサーの水素ガスに対する応答波形

東芝は6月20日、検知速度を落とすことなく、従来の約100分の1以下の低消費電力で水素ガスを検知する水素センサーを開発したと発表した。

現在、水素社会の実現に向けた技術開発が世界的に進んでいるが、水素は可燃性ガスであるため、安全に使用するためには漏洩時に速やかに検知する必要があり、高速検知が可能な水素センサーが求められている。また、水素検知器を電池駆動させることで多様な場所への設置が可能となるが、常時水素を検知するためには低消費電力であることが必要。しかし、従来の水素センサーではセンシング動作時にヒーターで加熱するため、消費電力が大きいことが問題だった。

東芝は半導体事業で培った加工技術を応用することで、センサー膜にパラジウム系金属ガラスを用いた独自のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)構造を開発し、高速検知と低消費電力の両立を実現。常時加熱することなく水素を検知でき、消費電力が小さい容量型MEMS構造を採用しているため、従来の約100分の1以下である100μWオーダーの低い消費電力で動作可能となっている。

またパラジウムは水素吸蔵合金として知られているが、水素と結合するため応答時間が遅く、放出のために加熱が必要という問題があった。同社はパラジウムに替わり、アモルファス合金であるパラジウム系金属ガラスを採用することで、水素との結合を抑制し、従来の高速検知が可能な水素センサーと同水準である数秒での検知を実現した。さらに同センサーは半導体製造ラインで生産でき、1枚のウエハーから多数のセンサーを製造できるため、低コストで大量生産することができる。

東芝は今後、構造、製造プロセスのさらなる最適化を行い、燃料電池車(FCV)や水素ステーションなど、水素関連市場が拡大していく2020年以降の実用化に向け、研究開発を進めていく。

《纐纈敏也@DAYS》

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