【安全の舞台裏 JAL】非常食を噛みしめる---救難訓練体験

航空 企業動向
機内急減圧時の酸素マスク落下体験
  • 機内急減圧時の酸素マスク落下体験
  • パカーン。機内急減圧時の酸素マスク落下。
  • あまり見ることのない風景
  • 同じくあまり見ることのない酸素マスクの内側。見ないで済ませるに越したことはないが……。
  • サバイバルキット展示
  • サバイバルマニュアル
  • 非常食の缶
  • 非常食は5人分が1つの缶に収まっている。

JAL(日本航空)が全客室乗務員を対象に日常行なっている客室救難訓練を、乗客役として体験する機会を得た。ここまでの訓練課目はラフト(ゴム製いかだ)による水上への避難、スライドによる地上への避難。次は機内急減圧時の酸素マスク落下だ。

ジェット機が飛ぶ上空は、気圧が低く酸素も薄いので、客室には圧力がかけられている。客室の圧力が何らかの原因で急減圧が発生すると、客席の頭上から酸素マスクが落ちてくるようになっている。見てみたいが見られるような場面には遭遇したくないから、訓練で体験できるのはありがたい。パカーンと頭上のパネルが開いて、ブラーンと酸素マスクがぶらさがった……。正直、期待していた割にはあっけなかった。

酸素マスクは、3人掛けの座席に4人分というように、おおむね座席ごとに人数プラス1が用意されている。構造上、人数分しかマスクが用意されていない席があり、そこには乳幼児連れは座れない。減圧・酸欠による失神は短時間で起こるので、マスク装着に補助が必要な子連れの場合は、まず大人がマスクを装着すること。子供に装着しようとしている間に大人が気を失い、2人とも装着できなくなるからだ。

今回の訓練の最後は非常食の試食だ。非常食は機内から客室乗務員が搬出する。サバイバルキットには、傷病の応急手当をするメディカルキット、水の浄化剤や鏡、水上に避難した際発見されやすくするための水面染色剤(ダイマーカー)や発煙筒などが入っている。

非常食は、1人あたりゼリー1個とビスケット1個の2個1組が準備されており、これで3食分のカロリーとなる。ゼリーは長さおよそ5cm、断面およそ2cm×1cmの直方体。ピスケットはおよそ5cm角の正方形で厚さはおよそ1cmのタブレットだ。いずれも遮光&真空パックされ、各5個が緑色の細長い缶に詰められている。

これが1人前1日分の食料。搭載重量やスペースに限りがある航空機では非常食もコンパクトだ。
いただきます。もぐもぐ。薄茶色で半透明のゼリーはもちっとした半固形タイプで硬めのコーティングがされている。味は駄菓子のきなこ棒を連想させる。ビスケットは、味はビスケットで連想するそれとあまり違わないが、食感は焼き菓子というより、和菓子の和三盆や落雁のようにある種の粉を固めて成形した感じだ。和三盆や落雁よりはザラっとしており、かじるとポロポロこぼれやすい。

非常食は航空機の備品として大きさや重さの削減が図られており、カロリーは充分なものの空腹を満たすには量が少ない。ビスケットはゆっくり食べるためにわざと固くしているのかもしれない。食料は1日分、事故発生後24時間もあれば捜索隊に発見してもらえるとの見込みだ。

非常食とはいえ、アレルギーや宗教上の禁忌への対応は課題だ。ピーナッツ・アレルギーに関しては、JALは非常食に限らず機内のピーナッツフリー環境を指向しており、非常食もピーナッツフリーのものに交換が進められているそうだ。

これで客室救難訓練をひととおり体験した。感想は、まず、航空会社はきちんと訓練をしているのだな、と。JALの場合、実際の機材を再現し、建物の上層階にプールを作ったり、スライド展開スペースを設けたりしている。そして、非常時の救難手順や用具の操作には、それぞれちゃんと意味があるということも理解できた。安全に効率よく避難できるように考えられているので、指示に従おう。またそういった動作は簡単なものが多いので、いざというときパニックにならないことが肝心だ。

★酸素マスクはすぐ落ちてくる。
★まず自分が装着、それから他人を助ける。
★非常食はよく味わって食べる。カロリーは充分だが量が少ないから。

取材協力:JAL(施設見学)

【安全の舞台裏 JAL】救難訓練体験
1. ビルの中に飛行機があった![リンク]
2. 滑走路を逸脱、海上へ[リンク]
3. スライドは安心感があるけど速い[リンク]

《高木啓》

【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集