5月にして早くも中盤戦にさしかかった、全日本クロスカントリー選手権JNCC。昨年までのチャンピオン渡辺学、鈴木健二の二大巨頭に加えて、アメリカ帰りの小池田猛に超大型ルーキー斉木達也が毎戦を賑わせている。
今大会は、年に2度使用され、毎大会人気を誇る長野県爺ガ岳スキー場。特に、近年90分レースFUN GPの盛況ぶりはとどまるところを知らず、今回は343台ものエントリーした。メインレースの180分COMP GPよりも、人数でいえば圧倒的に人気。エンジョイ層も多く、幅広い楽しみ方ができると参加者を着実に増やしている状況だ。
当日は暑いくらいの好天。爺ガ岳史上初の試みとして、この大会ではいつもと逆回りのコース設定とされた。名物のガレクライムはダウンヒルに、長い下りのウッズがヒルクライムになったことで、難化が懸念されたものの、コンディションもよくちょうどいいレベルに落ち着いた形。
注目のCOMP GP、第2、3戦と連勝している小池田がポイントリーダーという状況の最中、チャンピオン渡辺や斉木の動向が気になるところ。斉木は海外出張の隙間をぬって、品薄のIRC製タイヤのゲコタを調達して、レースに備えた。前大会で気になっていた部分も対策済み、万全の体勢で臨んだオープニングラップで、他を圧倒する激走ぶり。1分以上の差を後続につけるという別格のスピードを見せつける。
対して、小池田はブレーキトラブルで1周以上のロスをしてしまい、戦線離脱。鈴木に至っては、1周目でエンジンを焼き付かせてしまう。四つ巴の中、斉木を追えたのは、渡辺のみであった。斉木と渡辺の差は2分ほどでレースが進行、渡辺は勝機を狙って後半のプッシュに賭ける。しかし斉木は「小池田さんが追いかけてくることを考えて、いつもより体力を残していました。まだペースをあげられる状況にあった」と、パーフェクトなレース運び。結果、渡辺は追い切れずに1分7秒差で2位、斉木が別格の圧勝を遂げた。この4戦でトップ4人の中、一人急速に成長中で、伸びしろがまだまだ残る斉木。特に、誰もがペースを落とさざるをえないガレクライムの下りは、2倍速と表現したいほどのスピード。当然、この勝利で斉木にポイントリーダーの座が渡ることになった。