新幹線の電気軌道総合試験車「ドクターイエロー」(923形)は黄色い新幹線で親しまれているが、在来線にも「ドクター」の名が付く軌道・電気総合試験車がある。JR東海のキヤ95系「ドクター東海」だ。この黄色い試験車が機器更新の時期をむかえている。
ドクター東海は、快速「みえ」などで活躍するキハ75系の足回りに、ステンレス車体と各種計測機器を組み合わせた3両編成(電力・線路設備試験車(パンタグラフ付き)+軌道設備試験車+信号通信設備試験車)の気動車として登場。1996年に第1編成(DR1)が、2005年に第2編成(DR2)が日本車輌製造でつくられ、2編成体制で1か月に2回(昼間・夜間各1回)のペースで、JR東海エリアの在来線全線を検測している。
今回の機器更新で、線路設備や架線、パンタグラフなどの検測機能が向上する。線路設備検測では従来、カメラ画像と画像処理でチェックしていたが、新たに二次元レーザを用いたセンサを導入することで、線路の締結ボルトの緩み検知の精度を向上。従来1mm単位の測定レベルを、新センサ導入によってレール頭頂面とボルト頭頂面の距離を0.1mm単位で測定できるようになる。
この進化で、従来の測定で使用されていた線路上のボルトキャップ約660万個が不要となり、メンテナンスコスト削減にも貢献するという。
また、車両ルーフ部に設置されているパンタグラフ部分監視カメラを3台増設。従来の1台に加え、合計4台で多方向から監視できるようになる。運転台に搭載されている沿線状況監視カメラも高画質化(40万画素から200万画素)が図られ、軌道空間をより正確に把握できるようにする。
2編成とも順次更新が行われ、第1編成が2017年から、第2編成が2016年から新たな機器で稼動する。設備投資額は24億円。ドクター東海の車上で検測データは現在、関係保線区にメール・ファクスなどでリアルタイムに送信され、マルチプルタイタンパー(大型保線マシン)などによる線形整正などの保線作業に役立てられている。