国産のMTが激減し、絶滅危惧種になるなか、ルノーのMT車である。日本国内におけるルノーのシェアからいって、導入には決断のいるところだろうが、それでも入れたのは、ルノーMTのファンが確実にいるから。その人たちの声に応えたいという気持ちの現れである。逆にいえば、それだけルノーのMTは魅力的だということだ。『ルーテシア』のボディライン。ぬめっとした、濃厚なインクを波立たせたような表面の仕上がり。マニキュアの濃度のような、溶けかかったチョコレートのような表情は、女性の心の深いところに刺さる。後部ドアのドアハンドルをドア面に作らず、Cピラーに隠す手法はあちこちでもトライされているけれど、この表面のまったりとしたデザインで包まれると、とても美しく成立する。無理やり感がなくて自然体なのだ。そして、5速MT。もう、それだけでOKである。6速じゃないのかという意見もあるかもしれないが、5速で十分ですよ、っつーか、5速でいちいちトルクの美味しいところに合わせてシフトを動かすのが醍醐味なのである。ターボのついた0.9リットルは、パワフルで面白いのだが、さぼりは許してくれないのだ。速度が落ちたり、ちょっとした坂道で、3速のままでも行けないかとアクセルを踏むと、ノーを突きつけてくる。ああ、すみませんでした! と、あわてて2速に落としてご機嫌をとるという繰り返し。ドライバーを甘やかさない、クルマは乗りこなすものだと改めて思い出す。ルノーのMTには根強いファンがいることが、よくわかる。そして、たとえルノーというブランド崇拝をしなくとも、このMTは面白い。■5つ星評価パッケージング:★★★★インテリア/居住性:★★★★パワーソース:★★★★★フットワーク:★★★★オススメ度:★★★★岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。
「今までのルノー車にはないデザイン」6代目となった新型ルノー『ルーテシア』、ファンの注目は“F1由来”の技術 2025年9月11日 ルノーは9月8日、IAAモビリティ2025において、新型『クリオ』(…
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