【土井正己のMove the World】日本の観光産業の競争力、お盆休みが弊害? 救いは外国人観光客

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  • 渋滞(参考画像)

梅雨も明け、いよいよ夏休みシーズンが始まる。今年は、「お盆休みが9連休」という会社も多いのではないだろうか。しかし、この「お盆休み」というのが日本の観光産業にとって、また自動車産業にとっても、決して良くない習慣と思う。

◆「平準化」の出来ない観光産業

まず、観光産業について言えば、「お盆休み」に旅行客が集中するため、宿泊施設等では業務の「平準化」ができない。(「平準化」の考え方は、自動車産業など製造業では「品質向上」、「人材投入の安定」、「資金繰りの安定」などの観点から重要なマネジメント哲学である)。

すなわち、本来、観光業者は、平常時からスタッフを育成したり、設備投資をして、「サービスの質」を上げる努力をしなければいけないのだが、平常時は旅行する人が少なく、そのような努力は無駄と思えてしまう。かといって、「お盆休み」に向けて設備投資をするのも、その時は、黙っててもお客様は来てくれるので、ウェブサイトに綺麗な写真くらいを載せてお茶を濁してしまう。すなわち、「お盆休み」は観光産業の「平準化」を阻害しており、競争力強化に逆行するものと言える。

また、自動車産業についても、最も自動車を楽しんで頂きたい夏のレジャーシーズンにして、「渋滞の思い出しかない」という若者が多い。これが、トラウマとなって若者のクルマ離れの一つの理由となっている。

◆ドイツの観光・サービス産業の「高品質」

私は欧州での滞在が長いが、欧州では普通、6月から9月の間に3週間程度の休みを取る。その間、どこに行っても、観光客が街に溢れ出ている。特にドイツ人は旅行が好きで、夏場の観光地はドイツ人で賑わっているという印象だ。クルマの後ろに大型のキャンピングカーを括りつけて、1カ月くらいヨーロッパ大陸を家族で旅するドイツ人もよく見かけた。

また、街を上げて旅行客を呼び込むのもドイツ、オーストリア、オランダなどが熱心だ。街は、世界から観光客を呼び込むため、お祭りやイベントを企画したり、文化財や博物館の修繕を熱心に行う。すなわち、街を上げて「サービスの質」を上げている。我々、日本人がドイツ、オーストリアを観光すると、価格の割にその「サービスの質」の高さに驚く。

◆救いは外国人観光客

ところが、最近、日本でも「サービスの質」が上がってきたと感じることがある。主に東京や京都などの外国人観光客が多いところだ。外国からの観光客は、年間を通じて平均して訪れるので「サービスへの投資」がしやすいのだろう。また、リピーターや口コミで効果もすぐに現れてくる。7月22日のニュースで、「1-6月の日本への外国からの観光客が913万人と前年同期比で46%増」という報道が流れた。東京オリンピックの開催される2020年に2000万人という政府目標は、意外と今年にもクリアーできるかもしれない。こうした外国人観光客の効果で、ビジネスの「平準化」が進み、日本の観光業の生産性、サービス性が向上するのではないかと期待している。

デービッド・アトキンソン著の「新・観光立国論」によれば、日本は、外国人観光客数で世界26位(2013年、1036万人)で、タイ(2655万人)の半分以下である。仮に今年2000万人に達してもまだ、タイに届かない。GDPから割り出すアトキンソン氏の試算(現在の日本の観光収入がGDPに占める割合は0.4%で、世界平均が1.8%。日本が世界平均レベルになるとする試算)によれば、日本の妥当ラインは5600万人という。成長するアジア経済を考えれば、全く違和感のない数字だ。

◆夏休みはクルマで地方都市に出かけよう

それと同時に、日本人も分散型夏休みにもっと移行し、クルマでの山や海、歴史観光をして欲しい。また、地方都市もドイツ、オーストリアのように国内、海外から観光客を呼び込む努力をどんどん企画してはどうだろうか。

東京オリンピック・パラリンピックの開幕まで、ちょうどあと5年。日本の観光業のレベルアップのためにも、私もこの夏はクルマで地方都市を回ってみたいと思う。

<土井正己 プロフィール>
グローバル・コミュニケーションを専門とする国際コンサル ティング・ファームである「クレアブ」副社長。山形大学 特任教授。2013年末まで、トヨタ自動車に31年間勤務。主に広報分野、グローバル・マーケティング(宣伝)分野で活躍。2000年から2004年まで チェコのプラハに駐在。帰国後、グローバル・コミュニケーション室長、広報部担当部長を歴任。2014年より、「クレアブ」で、官公庁や企業のコンサルタント業務に従事

《土井 正己》

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