ローランドのEV向けサウンドシステム、音楽用シンセサイザーの最先端技術を投入

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最先端の物理モデリング技術を用いたサウンドシステム。ローランド製の音楽シンセサイザーのハイエンドモデルと同等の技術が投入された。
  • 最先端の物理モデリング技術を用いたサウンドシステム。ローランド製の音楽シンセサイザーのハイエンドモデルと同等の技術が投入された。
  • サウンドシステムはGLM「トミーカイラZZ」のオプション品として採用される。
  • 試乗会ではモーター音ベースと、エンジン音ベースという、2種類の音が披露された。
  • モーター音は実物のものではなく、物理モデリングによって作られた「モーター音っぽいもの」だという。エンジン音についても同様で、モデルとした音は存在しない。
  • 物理演算で作り出すため、PCM音源よりも違和感は少なめ。ただしまだ若干の改良の余地はある。
  • ローランドの三木社長(左)と、GLMの小間社長(右)。
  • ツイーターは前面に配置。これは試作品で、製品化時には変わる可能性もある。
  • スピーカーは後方に配置。

ローランドとGLMが共同で開発を進めているEV向けサウンドシステムには、同社のシンセサイザーのハイエンドモデル「ジュピター」シリーズにも使われているSuperNATURAL(Behavior Modeling Technology=ビヘーヴィア モデリング テクノロジー)という技術が採用された。

ローランド側で開発を担当している渡瀬孝雄さんは「EV向けサウンドシステムは、モーター音そのものを記録したPCM音源ではなく、モーターのような音を最先端の物理モデリングによって再現している」と説明する。

一般的な音楽用シンセサイザーでは、PCM音源を用いて生楽器の音を再現している。PCM音源は生楽器による音の波形をサンプリングしており、実際の楽器から発せられる音を忠実に再現することは得意だが、それを大きく変化させることは不得手とされる。また、PCM音源では固定化された波形イメージを引き延ばしたり(遅回し)、縮めたり(早回し)することで変化を表現するので、リカバリーする技術もあるが「聞いていて不自然な部分が出てきてしまう」ことは避けられない。

これに対し、今回のシステムで使われているSuperNATURALの場合、生楽器の音を収録するのではなく、「楽器がどのように振る舞うか」をシミュレートし、それをモデリングすることで音を作り出しているという。

音楽演奏の場合は「前後の音のつながり」や「演奏方法の違い」によって鳴り方も変わってくる。音のつながりが「急か、ゆっくりか」、「強いか、弱いか」、「高いか、低いか」など、奏法の違いでも楽器の振る舞い、器としての楽器が出す振動も変わってくるが、今回のシステムでは「同じことをモーターやエンジンでやった場合にはどうなるか、それを考えることからスタートした」と渡瀬さんは言う。

生楽器の場合と同様、実際にモーターを動かした場合に「アクションを加えた際に音としての波形がどのように変化していくのか」をまず解析。GLM側からの要望は「未来を感じさせる音」だったため、ローランド側はこの要望に沿った「モーター音のようなもの」を物理モデリングによって作り、これをベースに回転数の増減や、速度域などの変化していく要素を加え、その変化をリアルタイムで表現することとした。

渡瀬さんは「PCM音源は写真のようなもので現実を表現することには優れているのですが、固定化されたイメージなので変化させていくことは難しい」、「これに対してSuperNATURALは忠実に再現したコンピューターグラフィックのようなもので、任意に変化させることができるのです」と語る。ローランドには音楽用シンセサイザーで培った技術があり、それを別の分野に使うことで新たなジャンルの製品を作り出した。

シテスムに使われているのは音楽用シンセサイザーの心臓部となるチップをカスタマイズしたものだが、車載機としての対応(熱耐性など)が中心になっており、性能としての違いはあまりないようだ。

《石田真一》

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