【オートモーティブワールド15】自動運転がもたらす社会の変化とは…日産自動車総合研究所 土井氏

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1月14日オートモーティブワールド2015内専門セミナー。講演タイトルは「“考えるクルマ”と交通社会の未来」。
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  • 1月14日オートモーティブワールド2015内専門セミナー。講演タイトルは「“考えるクルマ”と交通社会の未来」。
  • 日産自動車総合研究所所長、アライアンスグローバルダイレクターの土井三浩氏
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  • 1月14日オートモーティブワールド2015内専門セミナー。講演タイトルは「“考えるクルマ”と交通社会の未来」。
  • 日産自動車総合研究所所長、アライアンスグローバルダイレクターの土井三浩氏
  • 1月14日オートモーティブワールド2015内専門セミナー。講演タイトルは「“考えるクルマ”と交通社会の未来」。
  • 日産自動車総合研究所所長、アライアンスグローバルダイレクター 土井三浩氏
日産自動車総合研究所所長、アライアンスグローバルダイレクターの土井三浩氏が1月14日、オートモーティブワールド2015の専門セミナーで講演をおこなった。タイトルは「“考えるクルマ”と交通社会の未来」。


◆2030年までにメガシティは約1.5倍へ クルマ社会の新課題

「自動運転は長いクルマの歴史の中でやっとここまできたという印象。ときにもう出来あがった、完成したような誤解をされるが決してそんなレベルではなく課題はまだまだある」と語り始める。

GDPと人々の移動距離の相関グラフを示し“移動”することそれ自体が経済的価値と深く関連すると指摘。先進国において現在移動距離の伸びがとまり停滞している今、これを伸ばすことも、自動運転が寄与できる側面の一つだと話す。

ところでなぜ先進国で移動距離が伸長しなくなっているのか、その背景を考えてみると、エネルギー・渋滞・CO2・事故などのクルマの功“罪”の部分が反映されていることがわかるという。これら4つの問題は今は顕在化していないような人口集中や高齢化等の社会変化により今後さらに悪化するという。

今後の人口集中がどうなるか。人口1000万人以上の都市が2014年には28個から2030年までに41個に増加するというデータもあり、このように短い時間で人が増えるとインフラが追い付かなくなってしまうことが考えられる。同時に高齢化はどうなるかというと、高齢ドライバーが増えるために事故件数・比も増加しうるなどクルマ社会にとって幾つもの新たな問題を投げかけられていることが指摘された。


◆移動距離の鈍化、事故…自動運転が貢献できる切り口は多様

都市人口集中は、さらには平均車速の低下をもたらす。横浜市を例に説明された。
人口が増えていることもさながら、ネット社会への移行により(ネットショッピングの普及と拡大が影響し)都市内でデリバリーをおこなうクルマなどにより密度があがったことが車速低下の一要因という。もうひとつの要因として考えられるのはガソリン価格の上昇。エコ運転のため車速を落とす人が増えるためだ。米国でも、原油と石油の値段が上がった際に交通事故が減った事例が実際にあり、ガソリン価格の高騰により車速を落とす人が増えたこと、などで説明されるのだという。

次に高齢化がクルマ社会にもたらす影響に話は移る。「10年スパンでみた場合、全体の事故数は減少しているのに高齢ドライバーによる事故は変わらず一定数発生している。高齢になると人の視力は落ち視角も狭まり(交差点や車線変更などで特に要されるような)マルチタスクができなくなる。複雑な状況下での判断能力も遅くなることにより結果として事故がおきやすくなる。また一方で、高齢者が(能力低下により)事故を起こしてしまうことは、裏を返すと、普段我々が何気なくこなしているタスクに必要とされる能力が何かを教えてくれる。人間というのはよくできている、ということに気づかされる」

要するに自動運転の実現化の過程は、このような我々が普段何気なくこなしているプロセスを電動化・知能化することであり、同時に電動化・知能化は今まで述べてきたクルマ社会の新たな課題解決へのアプローチとなりうる、という。


◆電動化でドライバーの筋負担が減る 修正操作量で50%減も

では電動化・知能化とは具体的にどのようなことなのか。“制御するアプローチを整えること”が電動化を指し、“どのように制御させるか”が知能化を意味するという。ここで土井氏は電動化の一例にステアバイワイヤを挙げ説明した。

「(スライドに映しながら)これは日産のダイレクトアダプティブステアリングです。通常のステアリングはタイヤとつながっているが、これを電子化、電動化するとタイヤとステアリングが完全に切れた状態になります。

タイヤと切れることのメリットはなにか。つながっている部分の“ねじれ”や“故障”を防ぎ、よりダイレクトにドライバーの意思を反映した運転ができます。また、横風が吹いたときにもリアクティブにドライバーがステアリングをきることができるようになり、この際車が自動的に補整するような仕組みがつくれます」

「さらに不整路を走るときなどに路面から来る外乱に対する、ドライバーの負荷を減らすこともできます。(負荷とは上腕の筋負荷。筋負荷を赤色で可視化しその効果をスライドをみせながら)この他具体的数値でいえばALC(カメラで車線を検出し、直進をサポートする機能)によってドライバーの修正操作量を50%減らすことができます」


◆日産の安全の原点は米心理学者、Gibson氏の論文

そもそもの出発点が安全性の確保、事故を減らすこと、である自動運転だが、安全性の点ではどのように考えて進めているのか。安全性を考える上でベースになっているのはアメリカの心理学者Gibson氏の論文中のある絵なのだという。日産では“安全”を考える際、その絵を裏返したようなコンセプトをもとに語られる、と話す。

その絵が意味するのは、人には心理的に安全な感覚領域があり、運転時ドライバーはリスクの低いところを縫うように走るということ。ドライバーにはなんらかの基本的な心理が存在し、これを逸脱すると不信感や脅威を持つということ。

「だから各々の車はドライバーからみたリスクポテンシャルに応じた技術を提供することが重要で、全方位360度それぞれに異なる技術が必要となる。だから具体的にはフロントにエマージェンシーブレーキ、前方にディスタンスコントロールアシスト・踏み間違い衝突防止アシスト、車線逸脱防止支援システムや移動物検知付きアラウンドビューモニター、後方には後側方衝突防止支援システム・後退時衝突防止支援システム、とそれぞれのリスクに応じた技術を備えている」


◆今後のマイルストーンは 2018年に高速道路、2020年に市街地…

「こういった安全技術が360度整って初めて自動運転ができるようになる。今後2016年には渋滞時・単一レーンでの走行、2018年には高速道路・複数レーンでの走行、2020年には市街地の交差点を含むような複雑な状況の中で走行させるべく研究が進められる」計画。土井氏が受け負うのは2020年の市街地走行なのだという。

最後に自動運転の現状として「あらゆる状況に対して的確にクルマが判断できるまでにはまだまだ道が長い」と述べつつ「自動運転は安全性を担保しながらクルマの良さと両立させることができる重要で面白いテーマ」と自動運転が実現した際の価値には大きな期待を示した。
《北原 梨津子》

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