【ロールスロイス レイス 試乗】真の極みとはこういうものだ…中村孝仁

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ロールスロイス レイス
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  • 夜になると光がともるスピリットオブエクスタシー
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  • 日本特注を示すシルプレート

のっけからお金の話で恐縮だが、車両本体価格3333万円。オプション込みの価格は3932万7000円だというこのクルマ。ロールスロイス『レイス』という。恐らくロールスロイスが作り出した初の、ファーストバックを名乗るボディ形状を持つクルマだ。

ステップに「日本特注」と書かれたプレートが貼られているこのクルマ、果たしてどこが特注なのかは聞き忘れたが、写真を撮っている時からとてつもない存在感と威圧感に、こちらが圧倒されっぱなしであった。

そして正直に言えば、このクルマを路上に乗り出すのは少々気が重かった。何せ冒頭に書いたお値段である。というわけではじめはまあ、腫物に触るような試乗であった。スターターボタンを押してかかるエンジンの鼓動は、最初だけ確認できるものの、アイドリングに入ると果たしてかかっているか、止まっているのか定かではなくなる。それほど静粛性は高い。

ドアはコーチドアと称する後ろヒンジのタイプ。4ドアタイプの『ゴースト』で使われ、ロールスの定番スタイルになっている。しかし、フロントをコーチドアにする必然性は理解できなかった。大きく開くドアはシートに座ってしまうと手が届かなくなるほどアームレストが遠くに行ってしまうので、Aピラー根元に付いたプッシュスイッチで閉める。

シートに座って前方を眺めると、ロールスのオーナメントたる、スピリットオブエクスタシーの後ろ姿が見える。ただ、普通と違っていたのはそれが素材はわからなかったが、ガラスのようなもので出来ていること。通常はシルバーだが、このクルマのそれは違っていた。あとで調べると、なんでもオプションのイルミネーテッド・スピリットオブエクスタシーなのだとか。勿論エンジンを切れば、エンジンルーム内にお隠れになるし、室内からでも任意に引っ込めてしまうことも可能である。う~ん、どうも、上品に表現しようと思っても言葉が思いつかない。

華奢なコラムのシフトレバーでドライブを選択し、一路一般道へ。見事なほど静かだし、見事なほどスムーズである。これほどスムーズなクルマには乗ったことがない。因みに、エンジンは6.6リットルツインターボV12。最高出力は632ps/5600rpm、最大トルクは800Nm/1500~5500rpmである。かつてロールスロイスといえば、その出力を表記しなかった。パワーは「必要にして十分」だとしていたが、近年は出しても恥ずかしくない数字が出せるから、堂々と出しているのだろう。机上のスペックによれば静止から100km/hまでの加速は4.6秒だという。因みに車重は2650kg。下手な大型SUVより重い。そして3サイズも5280×1945×1505mmと堂々としたものだ。

一旦車幅などの感覚に慣れてしまうと、腫物に触っていた試乗感覚が通常に戻り、調子づいてきた。ノーズを高速道路に向ける。そして本線合流で一気にフル加速。どちらかといえばしゃなりしゃなりという挙動が似合うロールスだが、この時ばかりは豪快で、一気に追い越し車線を普通に流せる速度域以上に達する(詳しくは言わないが)。まさに能ある鷹は爪を隠すではないが、潜在能力はやはりすこぶる高い。さすがにエンジニアリングに関してはBMWなのだから、当然そうした潜在能力を持っていて不思議ではないし、ちゃんとポテンシャルは持っている。しかも、その速度域に至っても直、恐ろしく静かだ。

発進はどうやら2速で行っているようで、乱暴にアクセルを踏み込んだところで、スポーツセダンのような背中を押されるような加速のそぶりは全く見せない。あくまでジェントルで、静々と走り出す。つまりアクセルの踏み方にはあまり関係ないようで、それがロールス流のようである。ガンと出ないようなローンチコントロールをしているようにも感じられた。気になったのはシフトレバーに付くLowと書かれたスイッチ。試乗中に押すのをためらったので、試乗から戻って聞いてみると、どうやらそれが1速へのダウンスイッチだったようである。

天井にはLEDをちりばめて天空をイメージさせたスターライトヘッドライナーを装備(ただしオプション)。夜ならさぞかしムードが高まると思うが、一人だと興ざめだ。およそ1時間ほどのデートだったが、例えばインストルメントパネルの艶、輝き、平滑な面等々、それにシートをはじめとした手や体に触れる部分の感触。惜しみない高級素材の使用と、熟練した職人のなせる業によるものと感じることが出来る。すべての面において極致を感じさせるモデルであった。

■5つ星評価
パッケージング ―コメント不能
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★★
おすすめ度 ―コメント不能

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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