大胆で力強くあるべきSUVのせいか、『NX』のレクサス流外形デザインは、セダン系よりも馴染んで見える。「F SPORT」固有のグリル、ディテールも“着こなしている”と思えた。インテリアの仕上がりも、いつものレクサス基準。庶民感覚で重箱の隅をつつくなら、せっかくのデザインのセンタークラスター(のクロームの加飾)が角度のせいで光の加減によりフロントガラスに映り混むことがある点、グリップ断面形状が場所により変わるステアリング、不用意に手が触れ押してしまいやすいステアリングスイッチなどは気になった箇所だ。とはいえ革シートのしっとりとした風合いや匂い、ドアアームレスト部に仕込まれたソフトパッドの“柔らか過ぎない柔らかさ加減”などは、レクサスならではのひと手間の部分だ。マークレビンソンの澄んだ音色、ベンチレーション機能付きの左右前席など、同乗者をもてなす贅を尽くした装備は、やはり嬉しい。ゆったりと気持ちのいい姿勢で座れる後席、床下に大きなスペースをもつトランクなど、実用性も高い。室内は左右方向のゆとりが想像以上にあり、助手席に座った乗員が自分の肘を左右に広げ寛いだ姿勢で座っていられる。「300h」のパワートレインは、2.5リットルガソリンエンジン(レギュラーガソリン仕様)とAWD用のリヤモーターを加えた2モーターの組み合わせ。試乗車は F SPORT で、コンソールのダイヤルで走行特性(シャシー含む)を選択すると、動力性能、運動性能ともに実にスポーティな領域までもこなす。とくに「パフォーマンスダンパー」が組み込まれ、ボディ、足回りの強靭さはヒシヒシと伝わるところだ。タイヤ(BS DUELER H/L 33、225/60R18 100H)も関係するが、荒れた路面などで若干、乗り味がハードに感じるのは、今どきのSUVらしいところというべきか。ブレーキのタッチに幾分かHV特有のクセが気になるのも、パワートレインの制御の巧みさに比してのことかもしれない。■5つ星評価パッケージング:★★★★★インテリア/居住性:★★★★★パワーソース:★★★★★フットワーク:★★★★オススメ度:★★★★★島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。 便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。