初代『ティアナ』が登場したときのコンセプトは「奥様を気遣うことのできる男性」とかなんとかだったはずで、ゆえに助手席にオットマンが装着された。
そんな表現が新鮮に感じられる世の中だったゆえ、当時の私は密かに「夫婦で長距離ドライブをしたいと思っているのは夫だけで、妻はいっしょにいたくないんじゃないかなぁ」と、意地悪なことを思っていたほどだ。しかし、それから時は流れイクメンという言葉も当たり前になり、ミドルエイジの夫婦のあり方も激変した。靴下すら探しだせない夫も激減したんじゃないだろうか。ティアナは、いまの時代にこそ必要なクルマではないか。
ボディサイズは大きく伸びやか。世界戦略車らしく車内も広い。デザインは流麗で価格はひかえめ。インテリアの雰囲気は落ち着きがあり、カーナビなどの操作性も独特で使いやすい。そして、長距離ドライブが気持ちよくできるスタンスは貫いている。
まず、エクストロニックCVTの滑らかなことを挙げたい。CVTにありがちな、アクセルからの反応の遅さはほとんど、いや、まったくなく、まるでEVを操作しているみたいだと言ったら言い過ぎだろうか。そのくらいスムーズで出足がよく滑らかなのだ。そして、そのスムーズさが発揮されるのは燃費である。カタログ燃費は、14.4km/リットルだが、高速道路を流れにそって気持ちよく走らせても17km/リットルに届こうかという数字。インパネに現在の燃費が表示されるのだが、あまりの数字のよさに給油後に計算して確認したほどだ。
街乗りにはちょっと大きめのサイズ。でも、ロングホイールベースの高速安定性はよく、しなやかなサスペンションは長距離でも快適。大人の女性を気遣える大人な男性は、こうして目立たずさりげなく日常を心地いいものに変えていくんだろうな。
■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材中するほか、最近は ノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。