【ヤマハ MT-09 試乗】スポーツバイクの理想形に挑む…和歌山利宏

モーターサイクル 新型車
ヤマハ MT-09(和歌山利宏氏)
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ヤマハ『MT-09』に近寄るとシートが高く見える。でも、跨るとシートの角から足元が意外なほどスリムで、足着き性は悪くない。シート高は公称815mmでも、体感的に790mmといったところだ。しかも、スリムさにミドルクラスのスーパースポーツ並みという軽さが加わって、ミドルシングルかツインのようだ。

ライディングポジションは、普通のロードモデルよりも、幅広のハンドルグリップが高く近くにある。上体が起きて余裕があり、マシンをコントロールしやすく、モタードの血統を感じる。『FZ8』比で、ハンドルは着座点基準で53mm高くて40mm近く、ステップは26mm低いのだそうだ。

車体を揺すると、前後サスのストロークが豊かだ。一般的なロードスポーツのストローク前後120mmに対し、これはフロント137mm、リヤ130mmと大きめである。路面の不整の影響を受けにくく、姿勢変化を大きく生かして、積極的に駆っていく設定だ。

エンジンは、スムーズさの中にパルス感があって、いかにも3気筒らしい。発進していくと、そのパルスはさらに大きく、明確に伝わってくる。それは硬質と言って差し支えない。極低回転での粘りもあって、6速でアイドリングのまま走れるほどだ。

実際に走らせると、車体のスリムさがますます印象的だ。確かに、車体もエンジンもライポジもスリムなのだが、実際はもっとスリムに感じる。

フレームは、『FZ6』と同様の左右分割式アルミCFダイキャスト製ツインスパータイプだが、後部がスリムに狭められ、スイングアームは絞り込まれたピボット部の左右両外側に支持される。これが足元のスリムさに貢献しているだけでなく、独特の剛性バランスを生み出しているようだ。

この柔軟な剛性バランスの車体のおかげで、フロントはストレスを受けず、常にニュートラルに保たれる。寝かし込みに応じてフロントの内向性と接地感が高まっていく。寝かし込んでスロットル開けるときもフロントを押し出す気配もない。このことがスリム感をより明確にしているとも感じる。

それでいて、車体は硬質でシャキッとしていて、ダイレクト感がある。とにかく、トラクションからも車体からも情報量が豊かで、素直で、意のままに操りやすい。前後サスペンションはストローク感が豊かであっても、そのことのネガはない。姿勢変化を生かしやすくても、然るべきところに落ち着きやすく、不要に姿勢変化しない。

そして、足着き性が良く、ハンドル切れ角も比較的大きくて、実用性が高く、スポーティに楽しめる街乗りバイクとして親しみやすい一方、エキサイティングなストリートファイターらしさを秘めている。

パワーモードAで1速全開加速をすれば、7000rpmぐらいから軽々とフロントが浮き始め、トルクピークの8500rpmに向ってサオ立ちになりそうな勢いだ。全域でトルクカーブがスムーズで扱いやすくても、メリハリもあり、また、常用域は7000rpm以下であっても、11000rpmでリミッターが効くまで使い切る面白さもある。

並列3気筒エンジンは、スリムなだけでなく、トラクションを把握しやすいという特徴がある。その特徴を昇華させるべく、スリムさを強調できる車体構成とし、またエンジンもトルクフルでパルス感のあるものとしている。3気筒の良さを生かし切ることで、スポーツバイクの理想形に挑んでいるかのようなMT-09なのである。

《和歌山 利宏》

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