ミニバンというジャンルのクルマは、実際に購入するユーザーが本気で使い勝手を気にする。御三家ともいえるモデルがホンダ『ステップワゴン』、トヨタ『ノア』『ヴォクシー』、そして日産『セレナ』だ。
もちろん乗り味も大事だろうが、重要なのは使い勝手。いずれも比較的最近相次いでモデルチェンジや大幅改良を果たした。セレナに乗って感じたことは、この種のミニバンでも家族構成で重要なファクターを占める子供の存在が、ノア/ヴォクシーと比べて日産の方が若干年齢が高いターゲット層を狙っているかなと思わせたこと。ノア/ヴォクシーの売りはスライドドアを開けると2列目シートをいちばん後ろまで動かせば、そこにベビーカーがすっぽりと収まるということ。
一方でセレナの方はテールゲートを開けてスマートマルチセンターシートをいちばん前に持って行けば、自転車を積載できることを謳う点 。つまり自転車に乗れる子供を持つ家庭がターゲット層だと感じることだ。それをさらに裏付けるのが3列目シート。ノア/ヴォクシー同様左右に跳ね上げ式の構造を持っているが、セレナの方が正直格段に快適でたっぷりとしたサイズのシートを持っている。これは大人が乗っても十分に満足いく座り心地。このあたりにターゲット層の違いを感じ取ることができる。
2リットル直噴4気筒エンジンはエクストロニックCVTと組み合わされ、その組み合わせ方自体はトヨタと同じ。性能的にもそう大きな差はないが、正直言ってCVTの出来の良さはトヨタが上。そしてセレナの場合はエンジンの透過音も少々大きめではあるが、使い勝手という点ではシートの大きなセレナに軍配を挙げたくなる。また、どちらもハイブリッドを謳うが、セレナの場合はいわゆるマイルドハイブリッドでノア/ボクシーのような本格的ハイブリッドではないから、圧倒的エコを期待すると少しがっかりするかもしれない。もちろん、ハイブリッド同士の価格ではセレナに分があるが。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
おすすめ度 :★★★
中村孝仁|AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来36年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。