オートモーティブワールドの会場内を歩いていたら、日産『GT-R』それもGT3のスーパーGTマシンに遭遇。それはフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンのブースだった。フリースケールは元々モトローラの半導体デバイス会社で、その日本法人として現在も半導体デバイスを様々な企業に供給しているのだ。
同社では2012年からポルシェ・カレラカップに参戦するチームをサポートして、CCDカメラを搭載して様々なデータの収集やデバイスの開発を行ってきた。そして昨年はスーパーGT選手権のGT300クラスに参戦しているIWASAKI OGT Racing GT-Rのスポンサーとなると同時に、フリースケール社のR&Dの一環として、GT-RのGT3マシンにカメラと制御デバイスを搭載して走行データを収集しているそうだ。
話を聞いたのはチームに帯同している技術本部フィールドアプリケーションエンジニアの小林さん。フリースケール社が、このGT-Rに搭載しているのは、前後左右のCCDカメラとそれを制御、解析するためのボード。昨シーズンはCCDカメラによる映像データと、車両の走行データ、さらにはドライバーの心拍数といった生体情報を同時に表示するところまで実現できたと言う。
マシンに搭載しているモノと同じボードをルーフに置いて、液晶モニターでその映像を表示していたのだが、それが前後の視界だけでなく、クルマを真俯瞰から眺めた、日産のアラウンドビューそっくりの映像なのである。もちろんこれは駐車のための映像ではなく、走行中の周辺の状況を記録する機能を応用しているだけだ。
スーパーGTの場合、カメラはボディからはみ出してはいけないため、ボディ側面の取り付け場所にも苦労したと言う。またサーキットはへき地が多く、電波状況が良くないためLTEが使えず、大量のデータをリアルタイムで送ることが難しいので、現在はメモリにデータを記録して、走行後に吸い出すようにしているそうだ。
現時点ではまだ製品にできるモノではないが、将来的にはこの情報を無線で飛ばして、ピット内のチームスタッフや遠隔地の本社でライブデータとして表示させたり、レースのエンターテイメント性を高めるための情報として活用できれば,と言うのが小林さんの考えだ。
ちなみに同社では車両からの情報をCAN接続によって取り入れ,3G網で企業側のサーバーにアップできる車両運行管理システムも提供している。
日産車だけにアラウンドビュー、というのは偶然としても、これからクルマの電子デバイスはクルマを走らせる以外のことにも広がっていくのかも。そんな予感させてくれたのだった。