流麗なデザインと上質なインテリア、快活な走りを備え、新時代の「スペシャリティ」を標榜するホンダの『ヴェゼル』。
しかし、ヴェゼルは、新型『フィット』、新型『シティ』(2013年11月にインドで発表)に続く、グローバルコンパクトシリーズの第3弾モデルでもあり、全世界で販売されるグローバルカーでもある。
「スペシャリティな面を特化する地域は日本だと思います。それ相応の価格でもありますしね。アジア地域でも、同じように、どちらかと言えば売価の高いクルマになりますので、日本と同じ考え方で販売をしていきます。ただ、北米に行くと、また違った目で見られますので、どこまで高級にしていくんだ? というのは、地域のニーズに合わせていきます」とヴェゼルの開発のリーダーであった板井義春氏は説明する。
日本やアジア、北米、南米など、グローバルで販売するために、ヴェゼルは、その地域のニーズに合わせ内装のマテリアルや装備などをチョイスして、現地仕様に仕立て上げるというわけだ。特にパワートレインに関しては、地域によって完全に異なるという。先行受注でハイブリッドが9割を占めるような日本のような地域もあれば、逆にハイブリッドのニーズが低いところもある。それぞれに合わせ、最適なパワートレインを用意するのだ。
そうした全世界のマーケットに打って出るモデルとしてヴェゼルを見ると、最大の特徴は、全長4.3m程度というコンパクトなサイズ感にあると言っていいだろう。ただ、日本からの目線で言えば、「ヴェゼル」ほどのサイズのSUVは、過去に何台も存在していた。初代「CR-V」も、全長4.3mほど。つまり日本人から見れば、このコンパクトさは、珍しくもない。しかし、グローバル目線で言えば、案外、このサイズのSUVは少数派だったりするのだ。
「北米でコンパクトというと、現在のCR-Vが相当します。ヴェゼルは、そのCR-Vよりも、ひとクラス小さいということは、さらなるコンパクトという位置づけになりますね。ガソリン価格も北米では高騰したまま推移していますので、こういうコンパクトなクルマが、ひとつの亜流から主流に変わってくる。ヴェゼルという新しいクルマが、北米マーケットに新たなコンパクトSUVというクラスを作っていくのではないかなと思っています」と板井氏。
従来、欧米で主流派のSUVは、クロスカントリー派生が多く、サイズも大型モデルが主流であった。しかし、BMWの『X1』やポルシェの『マカン』、プジョー『2008』が登場したように、近年は、よりコンパクトなSUVをリリースするのがトレンドのようになっているのだ。
「全世界的にコンパクト化が進んでいるのは事実です。それは他社さんも、追いかけていると思います。ですから、いろいろなクルマがある中で、どれだけ伸びていくのか? という成長性という面では、コンパクトSUVが有望ではないかと考えています」
グローバルでのSUVのコンパクト化というトレンドに乗ってデビューしたヴェゼル。世界市場におけるホンダの今後の成長がかかっている重要な1台だ。その売れ行きに注目したい。