国内向け193車種対象に35種類の装備を集計
日本自動車工業会が毎年実施している国内向け乗用車の安全装備普及に関する最新調査がこのほど公表された。安全装備はユーザーの関心の高まりや、以前は高価な先端技術だったものがコスト低減によって普及段階に入るなど、着実に普及しつつある。ただ、車両側面用のエアバッグのように実際の装着が伸び悩んでいる装備もあり、自動車メーカーの一層の取り組みが求められる状況にもある。
この調査は国内向けに生産された日本メーカーの乗用車(193車種)を対象に、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)など予防安全、エアバッグなど衝突安全の両面から計35種類に及ぶ装備の設定や装着状況を分析した労作。今回は2012年の1年間の生産実績をもとに、装備品目ごとの設定率などを集計している。
このうち、実用化の初期段階では高級車にしか設定されてこなかった前方プリクラッシュセーフティ(自工会の表現では「前方障害物衝突軽減制動制御装置」)など4品目について、08年と今回12年の調査データを比較し、以下の表に示した。
◎安全装備の設定・装着状況(国内向け乗用車、2008年→2012年の比率=自工会調べ)
・前方プリクラッシュセーフティ 設定比率22.2%→26.4% 装着比率0.8%→2.4%
・横滑り防止装置 設定比率58.3%→76.2% 装着比率11.6%→46.7%
・サイドエアバッグ 設定比率69.4%→75.6% 装着比率18.8%→24.7%
・カーテンエアバッグ 設定比率67.2%→77.2% 装着比率14.3%→21.5%
ブレーク前夜の「前方プリクラッシュ」は26%に設定
上記の「設定比率」は、全193車種のうちオプションを含み設定されている車種の割合、また「装着比率」は実際に生産された全乗用車(12年は約472万台)のうち、その装備が装着された割合を示している。
このうち、「ぶつからない」技術としてここ数年で注目されるようになった前方プリクラッシュセーフティは、12年のデータでは設定比率が約26%と4台に1台の割合、装着比率も2%台と極めて低い。しかし、今年からは軽自動車にも低速域で作動する装置が相次いで設定されるなど、一気にブレークしている。1年後に公表される13年のデータでは、恐らく装着比率が2割前後に達すると見込まれる。
VSC(トヨタ自動車の場合)などと、自動車メーカーによって呼称が異なる「横滑り防止装置」は、1990年代半ばの実用化から20年近くを経て、標準装備に近い状況となってきた。12年の装着比率は約半数で、08年との比較では4倍強に高まっている。国内ではすでに義務化プログラムが始まっており、登録車については12年からすべての新型車への装着がスタート。軽自動車についても14年から同様の措置が講じられるなど、18年にはすべての新車に装着となる予定だ。
「サイド・カーテン」装着が8割に達したN-WGNのアプローチ
一方で、衝突安全の切り札ともいえるエアバッグで普及が停滞しているのが気になる。苛酷事故になりやすい車両側面への衝突時に、乗員のダメージを軽減するサイドエアバッグおよびカーテンエアバッグである。いずれも設定比率は75%強で、4台に3台となっているのに、12年の装着比率はともに2割台にとどまる。
死傷事故では交差点での事故が半数近くでもっとも多く、さらにその交差点事故では車両同士の出会い頭事故が最多という状況を考えると、効力のある普及へのアプローチが求められる。たとえばホンダが今月発売した軽自動車の新モデル『N-WGN』では、これらのエアバッグを他の安全技術とセットで、売れ筋グレードに標準設定するなどとした。同車でのサイドおよびカーテンエアバッグは1万台余りの初期受注段階で、約8割に装着されたという。とりわけ車体サイズが制限される軽自動車には、範となるひとつのアプローチだ。