当初、登場した『208』シリーズの印象は、決していいとは言えなかった。
先代『207』に比べ、デザインこそコンパクトに可愛くまとまったけれど、1.6リットルエンジンの燃費は悪いし、マニュアルは左ハンドルを基本に設計しているせいか、一速に入れたときのポジションが遠いし。
しかし、このGTiときたらどうよ? 同じマニュアルでありながら、表面にアルミをほどこし、なめらかになった手触りのいいシフトレバー。そのするりとした表面のおかげで、多少のポジションの遠さなど、どうでもよくなってくる。「手に触れる部分にこそ、こだわりを」とよく開発者が言っているが、その意味をこんなに強くつきつけられたことはない。その意味でいえば、内側のドアハンドルもしかり。試乗したクルマには、赤をほどこしたハンドルがつけられていて、ドアを閉めるときに手を伸ばし視界に入るたびに、やもいわれぬ満足感に満たされるのである。
そしてエンジン。燃費に難癖をつけるのが恥ずかしいほどのトルク感。ターボの効き始めが絶妙で、適当にギアを選んだり、面倒くさくてシフトダウンするのをさぼっても、アクセルをぐっと踏み込むと期待通りのトルクがすぐに出てくれる。なんという頼もしさ。それを支えるボディ剛性もしっかりとあり、よれもなく、ひとかたまりに突撃する様はすがすがしいほどである。今回は、一日500kmの弾丸試乗であったにも関わらず、楽しさが上まわって疲れを感じる暇もなかったくらいだ。いや、実際、疲れないし。
3ドアならではの、自由なウィンドーラインにより、色気を際立たせたエクステリア・デザインも心に染みる。正直、このクルマ、ヤバイほど欲しいです。
■ 5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★
岩貞るみこ|モータージャーナリスト/エッセイスト
女性誌や一般誌を中心に活動。イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に精力的に取材中するほか、最近はノンフィクション作家として子供たちに命の尊さを伝える活動を行っている。JAF理事。チャイルドシート指導員。国土交通省 安全基準検討会検討員他、委員を兼任。