【トヨタ クラウン ロイヤルサルーン 試乗】ラグジュアリーさは十分だが存在感が薄れた…松下宏

試乗記 国産車
トヨタ クラウン
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数年前まで、クラウンといえば3.0ロイヤルサルーンGというのが常識だった。“いつかはクラウンに”というキャッチフレーズもロイヤルサルーンGを指したものだった。

最近ではロイヤル系の位置付けが下がり、今回のモデルでは完全にアスリートの下というイメージになった。

しかも今回のクラウンではハイブリッド車を中心にしたラインナップ構成になったこともあって、2.5リッターエンジンしか設定されないガソリン車のロイヤル系は、ますます存在感が薄れてしまった。

試乗したのは2台のロイヤルサルーンGとロイヤルサルーンで、タイヤは標準仕様の16インチと、オプションの17インチの両方に乗ることができた。

外観デザインはアスリートほどのインパクトはないが、大きな開口部を持つ迫力十分のフロントグリルが採用された。クラウンは以前から上下方向に厚さのあるフロントグリルを採用してきたが、今回はそれが際立った感じである。

インテリアに目を向けると、クラウンらしいラグジュアリーさがしっかり表現されている。上級グレードのロイヤルサルーンGにオプションの本革シートを装着仕様は特にラグジュアリーな雰囲気を感じさせた。センターコンソールの部分側面部分などにとても感触の良いソフトパッドを採用するのも特徴だ。

使い勝手の面では足踏み式パーキングブレーキが継承されているのが気になった。今どきの高級車なら電気式のパーキングブレーキが常識だろう。ISOで右ハンドル車はハンドルの左側に設けるべきとされたスターターボタンが、右側に配置されていることなども古さを感じさせる。

カーナビやマルチオペレーション・タッチと呼ぶ新しい操作パネルなどが、いずれも手で触れて操作する方式であるのも古さを感じさせる。トヨタにはリモートタッチと呼ぶ操作系があるのに、今回のクラウンには採用されなかった。保守的なユーザーが多いためでもあるが、クラウンは先進性も特徴としてきたはずだ。

マルチオペレーション・タッチはインパネに2段構えの液晶画面を設定したもので、手で触れる画面が手元の近くに配置され、操作性は決して悪くない。指で触れる方式が新しさに欠けるほか、液晶画面に指の跡が残るのが難点だ。

2.5ロイヤルサルーンGに搭載されるエンジンはV型6気筒の2.5リッターで、ハイブリッド車に搭載される直列4気筒の2.5リッターとは異なるもの。6気筒スムーズな回転や静粛性などを考えると、ガソリン車にも一定の存在意義がある。

動力性能は149kW/243N・mの実力で、1500kg台のボディに対しても十分といえる。ATは6速ATで、パワートレーンはキャリーオーバーながら、特に走りに不満を感じさせるわけではない。エンジンの吹き上がりは悪くないし、力強さもまずまず。自然な変速フィールにも不満はない。

ガソリン車で不満を感じるのは走りよりも燃費で、JC08モードの燃費はリッター11.4kmにとどまっている。これはハイブリッド車の半分以下で、エコカー減税が適用されない。アイドリングストップ機構を装着するなどして燃費の改善を図るべきだと思う。

今回のクラウンではロイヤル系とアスリート系で足回りに明確な違いが設けられた。新しい形状のサスペンションアームを採用することまでは共通で、ロイヤル系には専用のモノチューブ・ショックアブソーバーが採用され、アスリートのAVSとの違いがある。

ロイヤル系の足回りも従来に比べる良くなっているのだが、実感としてはそれほど良くなった感じではなかった。ロイヤル系の乗り心地は従来のモデルでもアスリートよりは良かったから、そこからの進歩の幅が小さいように思えた。

というか、ロイヤルサルーンGだったら乗り心地はもっと良いはずという思い込みがあるためかも知れないが、とても快適というほどではなかった。特に路面にマンホールのふたが出っ張っているようなシーンで、突き上げが気になった。

2.5ロイヤルサルーンGの価格は482万円で、ハイブリッド・ロイヤルサルーンGより54万円も安いが、エコカー減税は受けられない。実質的な価格差は半分以下に縮小する。エコカー減税という現世利益を考えると、ガソリン車を選ぶ意味は薄いように思う。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

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