ホンダは3月15日、2013年に発売すると予告していた新エコカー『アコードハイブリッド』の投入時期を「初夏」と発表。メディア向けにあらためて新型ハイブリッドシステム「SPORT HYBRID i-MMD」の技術説明を行った。
カムリを圧倒、IMAフィトハイブリッドも寄せ付けず
i-MMDの狙いは、従来のホンダのハイブリッド「IMA」とは全く異なる。IMAがコストパフォーマンス一本槍であったのに対し、i-MMDはひたすらトップランナー志向だ。
走行用電気モーターとは別体の発電機を備える2モーター方式のストロングハイブリッド、新規開発の2リットル直4アトキンソンサイクルエンジン、減速エネルギー回生をより効率的に行える電動サーボブレーキ、回生した電力を効率よく蓄えられるリチウムイオン電池など最新技術をフル投入し、エネルギー効率で世界トップを目指したという。ホンダにとっては、近年いささか薄まっていた技術イメージをあらためて世界に誇示し、ブランド力を再構築するための重要なテクノロジーである。
プレゼンテーションではJC08モード燃費を縦軸に、走行エネルギーを横軸に取ったライバル比較のイメージ図が示された。燃費公示前ゆえ、具体的な数値は明示されず、競合モデルのメーカー名や車名も記載なし。また、各モデルの位置関係も本当に正確かどうか不明というものだが、ライバルに対するアコードハイブリッドの立ち位置を解明するヒントにはなる。
まずはハイブリッドカー群との比較。薄い青で表示されている2モデルは『インサイト』(JC08モード燃費27.2km/リットル)『フィットハイブリッド』(同26.4km/リットル)と考えられる。アコードハイブリッドは赤い菱型だが、ポジションを見るとこの2モデルを燃費で圧倒していることがわかる。
走行エネルギーの数値との一致性では疑問が残るが、燃費値から推測するに、アコードハイブリッドの直下はJC08モード燃費26.2km/リットルの『プリウスα』であろう。その下がアコードハイブリッドの直接的ライバルとなるトヨタ『カムリ』(同23.4km/リットル)、その右がラージクラスの『クラウンハイブリッド』(同23.2km/リットル)と思われる。アコードハイブリッドの燃費はそれらも大幅に上回るものだ。
図の中でアコードハイブリッドを上回っているのは『プリウス』(同32.6km/リットル)と『アクア』(同35.4km/リットル)と推定されるコンパクトクラスの2モデルのみ。2代目プリウスの登場以降、約10年にわたってハイブリッドカーの公称燃費でトヨタの後塵を拝し続けてきたホンダが久々に放つ、性能一本で勝負できるユニットと言えそうだ。
ミライースと同等燃費!?ミドルクラス初の大台乗せの達成に注目
さて、アコードハイブリッドの燃費の実数はどのくらいになるのであろうか。考察のヒントは、図の中の「NON HYBRID」群のマーキングにある。小型のボトムエンドにある2モデルは、おそらく三菱自動車『ミラージュ』(27.2km/リットル)と、日産『ノート』(25.2km/リットル)であろう。それらをアコードが凌駕するであろうことは一目瞭然だ。
問題は軽自動車のマーキングが何か、である。目下、軽の燃費のトップランナーはスズキ『アルト エコ』(同33km/リットル)だが、それだとプリウスと思われるマーキングと並ばなければ整合性が取れない。その下のモデルといえば、ダイハツ『ミライース』(同30km/リットル)か、スズキ『スペーシア』(同29km/リットル)か。
このところ、ホンダは研究開発について、福井威夫前社長時代のコストパフォーマンス徹底重視路線を大幅修正し、トップランナー志向へと急速に舵を切っている。アコードハイブリッドの燃費については、すでに巷でも「フィットハイブリッドと同等以上」、「いや、29km/リットルらしい」といった噂が飛び交っている。が、久々にトップ狙いを命じられてやる気が再燃しているエンジニア陣の雰囲気を考えるに、燃費で同等の軽自動車としてわざわざ29km/リットルのモデルを取り上げるとは考えにくい。ミライースと同等、30km/リットルの大台にのせたことを暗に示している可能性は高かろう。
開発はすでに完了し、燃費も確定ずみ。早ければ6月発売から2か月前の4月1日、遅くとも5月1日の経産省の燃費公表で明らかになることだろう。