メルセデスベンツのGクラスは1979年に発売されて現在も生産が続けられている。本格派SUVの超長寿モデルだ。2012年8月にマイナーチェンジが行われ、内外装のデザインを変更するとともに、新しいパワートレーンを搭載した「G63AMG」と「G65AMG」を追加した。
今回試乗したのはG65AMG。外観は細かなリファインが重ねられ、LEDドライビングライトやドアミラーなど、新しい要素が取り入れられた。インテリアはダッシュボードやメーターパネル、センターコンソールなどを新しくしている。
内外装の変更を実施したことから、このクルマをまだまだ作り続けるというメルセデス・ベンツの意志が伝わってくる。
G65AMGに搭載されるエンジンはV型12気筒6.0リッターのツインターボ。動力性能は450kW(612ps)/1000Nmというとてつもない実力を持つ。
30年以上も前に作られたシャシーにこれほどパワフルなエンジンを搭載しても大丈夫かと思うほどだが、基本がしっかりしたSUVシャシーである上に、改良も加えられ、この動力性能をしっかりと支えている。
有料道路の合流車線でほかのクルマがいなくて安全な状況のときに、アクセルを思い切り踏み込んで見ると、V12ターボエンジンの暴力的ともいえるようなパワーが一気にタイヤに伝わり、すさまじい加速を示す。
たちまちのうちに制限速度に達するし、そうでなくても怖くて踏み続けることができないほどの圧倒的な動力性能だ。
6000回転から始まるレッドゾーンの少し手前、5500回転くらいで1速から2速にシフトアップするか、このときには時速60kmに達していて、そこまではあっという間だ。
高速クルージングは余裕十分で、時速80kmで走るなら回転数は1400回転ほど。ロードノイズは入ってくるが、エンジン音などは聞こえないくらいの静かな走りになる。
高速での安定性も高い。AMGによるシャシーチューンによってレーンチェンジのときにもほとんどロールしないようなどっしりした安定感のある走りを実現し、全高やアイポイントの高さによる不安を全く感じさせない。
それ以上に感心したのはブレーキ性能で、ほかのクルマの割り込みによって急ブレーキを迫られるシーンがあったが、そんな場合にもブレることのないしっかりした安定性のあるブレーキ性能を発揮した。これも大したものだ。
ただし、試乗したG65AMGは受注生産とされていて、車両価格も3250万円というとてつもない金額が設定されている。大柄なボディで取り回しがしにくく、乗降性も良くないことなどを考えると、よほど好きで、なおかつ資金的な余裕のある人でないと乗れないクルマである。
■5つ星評価
パッケージング:★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★
松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。