激化する低燃費タイヤの開発競争…履き替えれば5%燃費向上も

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AAA-aタイヤの試乗走行。摩擦抵抗が少ない路面をさらに水で濡らして滑りやすい状態を作り出して走行する。
  • AAA-aタイヤの試乗走行。摩擦抵抗が少ない路面をさらに水で濡らして滑りやすい状態を作り出して走行する。
  • トーヨータイヤNANOENERGY 0。転がり抵抗AAA、ウェットグリップaを両立させた低燃費タイヤ
  • ブリヂストンECOPIA EP001S。転がり抵抗AAA、ウェットグリップaを両立させた低燃費タイヤ
  • 上記ラベルが貼ってあれば、転がり抵抗がAAグレード、ウェットグリップがcであることから低燃費タイヤに位置付けされる。
  • いっぽうのこちらは転がり抵抗がBでウェットグリップがbなので、低燃費タイヤとはみなされない。
  • 50%転がり抵抗低減タイヤのテスト走行の模様。テスト車はプリウスで、積載車に搭載されたあと、ギアをニュートラルに入れて惰性で走りだす。A-cクラスとの走行距離の差は約1.5倍
  • タイヤ技術本部の第一技術部長・商品開発担当部長を務める鈴木俊昭氏。タイヤ製造における技術を事細かに説明。
  • 常務執行役員でタイヤ技術本部長を務める西実氏。「お客様目線であること」は自身のポリシーでもあると語る。

タイヤの開発競争が激化している。一昔前のタイヤといえばグリップ力の高さが売りだったが、ハイブリッド車や電気自動車といったエコカーの台頭に伴い、タイヤもエコの時代に突入した。

JATMAの厳しい評価基準をクリアする低燃費タイヤが登場

メーカー各社は、燃費に大きな影響を与える転がり抵抗をおさえた「低燃費タイヤ」の開発にしのぎを削っている。通常のタイヤから低燃費タイヤに交換すると、燃費性能が3~5%向上する試算もあるほどで、低燃費を求めるユーザーのタイヤに対する注目は、一層高まることが予想される。

低燃費タイヤの選定基準として、2010年にJATMA(日本自動車タイヤ協会)が業界自主基準としてタイヤラベリング制度を策定した。転がり抵抗性能とウェットグリップ性能を、等級で表記するのが特徴だ。

この等級は、転がり抵抗がAAA~Cまでの5段階、ウェットグリップ性能がa~dの4段階で表示され、転がり抵抗がA以上、ウェットグリップ性能がa~dの範囲内にあるタイヤを「低燃費タイヤ」と定義している。つまり、転がり抵抗性能が高くても、ウェットグリップ性能が等級外では低燃費タイヤとはみなされない。メーカー各社はこの相反する性能の両立に日夜、試行錯誤を繰り返している。

最近では、タイヤラベリング制度においてもっとも優れている「転がり抵抗AAA」と「ウェットグリップa」を両立させた低燃費タイヤが、ブリヂストン、トーヨータイヤのそれぞれから立て続けに発売された。それまではAAA-aのタイヤは市販されていなかった。

ダンロップ、100%石油外天然資源タイヤを2013年秋に発売

低燃費タイヤの国内売上NO.1を2年連続で達成し、2011年の東京モーターショーでは「100%石油外天然資源タイヤ」を発表した、ダンロップの住友ゴム工業は、環境タイヤ技術セミナーを開催した。

このセミナーでは、100%石油外天然資源タイヤを2013年秋に発売するという報告から始まり、同社の環境への取り組みや最新技術の説明が神戸本社で行われたほか「50%転がり抵抗低減タイヤ」、ラベリング制度「AAA-a」を達成させた低燃費タイヤ、そして「軽量化タイヤ」という3つのプロトタイプと、すでに市販されているタイヤを含めた試乗会が岡山テストコースで開かれた。

50%転がり抵抗低減タイヤの試乗会では、装着車を搭載車に乗せ、惰性でクルマを動かし何m走行できるかを記録した。取材時の記録は121.6m。同条件でA-cクラスの惰性走行を行い、こちらは83.9mと、1.5倍近くもの差がついた。

タイヤ技術本部の第一技術部長・商品開発担当部長を務める鈴木俊昭氏は「50%転がり抵抗低減タイヤは、2008年度のタイヤに対して、転がり抵抗を50%低減しているという意味です。ラベリング制度でいえば、AAAをしのぐAAAA相当に値するでしょう。現在、2015年に発売することを目標としています」と語る。

引き続き、ラベリング制度で最高位となる「AAA-a」タイヤの試乗走行へ。こちらでは、もともと路面の摩擦抵抗が低い路面をスプリンクラーで濡らし、滑りやすい低ミュー状態のスキッドパッド走行と、コース内の周回走行を実施した。比較対象として用意されたのは「AAA-c」クラスのタイヤだが、AAA-aタイヤがスキッドパッド走行で40km/h後半までしっかりと路面を捉えているのに対し、AAA-cは30km/h台後半でグリップを失ってしまった。

「AAA-aのタイヤはすでに他社が販売を開始していますが、当社にも、もちろん作る技術はあります。試乗していただいたコースはそもそも摩擦係数が低い路面を、さらに水に濡らして滑りやすい状態を作り出しています。日本の舗装路は摩擦係数が高いので、一般ユーザーが本当にAAA-aクラスのタイヤが必要なのかどうかということをしっかりと考える必要がありますね」と鈴木氏。

常務執行役員でタイヤ技術本部長を務める西実氏は、住友ゴム工業のタイヤ開発の背景、今後の展望について「何より大切なのは、お客様がどういうタイヤを欲しがっているかにしっかりと耳を傾けること。それを踏まえた上で、お求めやすい価格と、幅広いサイズ展開を両立させるのが重要です。メーカーとしては技術力はもちろん大切ですが、それがお客様にとって本当にメリットがあるのかということも考えなければいけないのです。技術の押し売りだけではいけないと考えています」

また、セミナーに参加した執行役員営業本部長の山本悟氏は、同社の低燃費タイヤ施策に触れ、「国内の低燃費タイヤ売上NO.1を達成したのは、業界に先駆けて低燃費タイヤの開発に取り組んだ姿勢がお客様に評価されたひとつの現われといえるでしょう」と自信を述べた。

ブリヂストン、生物資源由来の原料のみのタイヤを2020年に実用化

先日、ブリヂストンは生物資源由来の原料だけで作ったタイヤのプロトタイプを開発し、2020年の実用化を目指すと発表した。過熱する低燃費タイヤの開発競争。多様化と細分化が進む市場のニーズを汲み取り、製品技術のみならずマーケティングや宣伝等を含めた総合的なアプローチが各社に求められる。

《レスポンス編集部》

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