リチウムイオンバッテリーは共同研究がスタート
トヨタ自動車と独BMWグループが、「長期的な戦略的協業関係」の構築を図るため、新たに4分野で協力することに合意した。スポーツカーの開発を含む広範な提携をめざすが、当面、両社の事業戦略上、もっとも大きな実りが期待されるのはHV(ハイブリッド車)を中心とする「電動化技術」の協業となる。
BMWは既存のHV技術に加え、トヨタのハイブリッドシステムを導入することでコンパクト車への展開も容易になる。一方のトヨタは、米フォードモーターとの協力関係に加え、欧州の有力メーカーとも連携し、欧米でのHV普及を開く扉にクサビを打ち込む。
両社は2011年12月に、リチウムイオンバッテリーのセルの共同研究と、BMW製ディーゼルエンジンを14年からトヨタモーターヨーロッパに供給することで基本合意。その後12年3月にはリチウムイオンバッテリーについての正式契約を交わし、共同研究を開始している。
GM、ダイムラーと共同開発したものの…
今回はこれらに加え、「FC(燃料電池)」、「電動化技術」、「スポーツカー」、「軽量化技術」でも協力関係の構築を図ることとした。このうち、電動化技術はHVやEV(電気自動車)さらにFCV(燃料電池車)を含む次世代車のパワートレーン開発を想定したものだが、当面は、すでに普及段階に入ったHVにスポットが当てられる。
BMWは、05年秋に米GM(ゼネラルモーターズ)とダイムラークライスラー(現ダイムラー)が進めていたハイブリッドシステムの共同開発に加わった。その成果を基に09年から「アクティブハイブリッド」として『X6』や『5シリーズ』などに展開してきた。
ホームマーケットの欧州でHVへの注目度はまだ低いものの、北米や日本などBMW人気の高い地域では環境先進技術のイメージ構築の面からもHVの投入は欠かせなかった。ただ、GMなど3社共同で開発したシステムは中大型車向けであり、幅広い車種へのユーティリティーをもつトヨタのシステムに比べれば車種展開に限界がある。
BMWは、今後コンパクトカーなどへの導入を図るうえで、「ハイブリッド技術を世界的規模で飛躍的に普及させる中心的存在」(ノルベルト・ライトホーファー会長)であるトヨタとの協業が、開発のスピードをあげるうえでも欠かせないと判断したようだ。トヨタにとっても、欧州でディーゼルからHVへの流れをつくるうえで、BMWの本格参入は強力な援軍となる。
共同開発スポーツカーはHVの公算大
トヨタは、11年8月にはフォードともピックアップトラックやSUV向けの次世代ハイブリッドシステムの共同開発で合意、現在フィージビリティ・スタディを進めている。フルサイズのピックアップトラックなど、フォードが得意とする分野でのHV展開に、それぞれの技術をもち寄る。
BMWとはスポーツカーの共同開発を進めるが、これも双方の得意技術をもち寄るということなので、HVとなる公算が高い。いずれにせよ、死に体のブランドだった「ミニ」と「ロールスロイス」を、アイデンティティを失わすことなく見事に復活させたBMWのブランディング戦略など、トヨタが学ぶことは沢山ある。11年末の提携合意時に「大変エキサイティングな気持ちになった」という豊田社長の感想は、決して相手へのリップサービスではないだろう。