【池原照雄の単眼複眼】トヨタ、スズキの牙城に攻め入るダットサン

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ゴーン社長
  • ゴーン社長
  • ダットサン12型フェートン(1933年)
  • 日産ダットサントラックD21型(1985~97年)
  • トヨタ・キジャン・イノーバ(ジャカルタモーターショー11)
  • 広州モーターショー11 ヴェヌーシア D50
  • 新ダットサンロゴ
◆価格は各国のエントリー・プライスに

日産自動車が新興国のエントリー車ブランドとして「ダットサン」を復活させる。2014年に導入する3か国のうち、インドとインドネシアは日本のライバルメーカーが、ほぼ半数のシェアをおさえる難攻市場。ブランド復活の大きな狙いは、両国での牙城を突き崩すことだ。廉価車の導入は日産ブランドを棄損させるリスクもあるが、「エントリー市場に参入しない方がリスク」(カルロス・ゴーン社長)として、ブランド名の由来である「脱兎(ダット)」のごとく攻勢をかける。

ダットサンは、『ダットサンブルーバード』といった具合に、日産車に冠するブランドだった。しかし、とりわけ海外で企業名とブランドが合致しないという難点が表面化し、1981年からCI(コーポレート・アイデンティティ)活動の一環として「日産」への統一を進めた経緯がある。日本では02年に『ダットサントラック』の販売を終了し、ブランドが消えた。

14年からは、まずインド、インドネシア、ロシアの3か国に投入し、新興諸国で一定の購買力をもつ中間層向けのエントリー車ブランドとしてよみがえらせる。設定する価格は国によって異なるものの、「それぞれの国のエントリー・プライス・ポイント」(ゴーン社長)にするという。


◆生半可な戦略では崩せない


つまり、各市場での最廉価帯をめざしていく。トヨタ自動車が10年末からインドでの『エティオス』を手始めに展開している「エントリー・ファミリー・カー(EFC)」よりも安いところを狙うことになる。ゴーン社長は「今は2輪車や中古車に乗っている人々」と、具体的にターゲットを描いている。

一般的にモータリゼーションは、「1人当たりの国内総生産が3000ドル前後で加速する」(日産の片桐隆夫副社長)。3か国のうち、すでにその域に達したロシアに続き、インドとインドネシアも、そのプロセスに入ってきた。両国は人口も多く、市場の潜在力も高い。

だが、インドではスズキが乗用車需要の半数近くのシェアを、インドネシアでは総需要の半数のシェアをトヨタ(ダイハツ工業との合算)がおさえている。日産は、インドでは10年にルノーとの共同生産工場を立ち上げたばかりであり、インドネシアでの11年のシェアは6%強と、いずれも日本2社に大きく水をあけられている。

ダットサンの復活による第2ブランドの導入は、生半可な戦略ではとてもガリバー2社の牙城は突き崩せないという判断による。ダットサンは導入国で16年度までに、オール日産の販売の3分の1から半数を占めるようにするという。


◆ゴーン経営の集大成プロジェクト


一方、世界最大市場の中国では、合弁会社である東風日産の自主開発ブランドとして、今春から「ヴェヌーシア」を立ち上げる。中国では合弁相手とともに自主ブランドを育成するという事情があるので、ダットサンを導入するわけにはいかないが、ヴェヌーシアも同様にエントリー需要に焦点を当てている。

ヴェヌーシアの販売網は当初100店規模でスタートし、15年までには250店に拡充する。同年には電気自動車を含む5モデルに商品を拡充、年間30万台の販売を掲げている。ダットサンの導入により、主要な新興国すべてで、初めて新車を購入する層への受け皿が整う。

現行の中期経営計画である「日産パワー88」では、16年度までに世界市場で8%のシェア(10年度=5.8%)確保を、ひとつのターゲットとしており、ダットサンの展開がその成否を左右する。「パワー88」は、恐らくゴーン社長による最後の中期計画となりそうであり、ダットサン復活はゴーン経営の集大成といえるプロジェクトになる。
《池原照雄》

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