【池原照雄の単眼複眼】「公式燃費」もやたら使えない訴訟大国アメリカ

ホンダが米国で『シビック・ハイブリッド』の燃費広告をめぐる集団訴訟で和解した。訴訟大国ならではの係争だが、裁判での労力や北米の看板車種『シビック』のイメージダウン長期化を考慮すれば、和解は実利重視の賢い選択だ。

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ホンダ・シビック・ハイブリッド(北米仕様、2005年型)
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  • ホンダ・シビック・ハイブリッド(北米仕様、2012年型)
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  • トヨタ・プリウスc(ハイブリッド。北米仕様、2012年型)
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◆ホンダの和解は賢い選択だが…

ホンダが米国で『シビック・ハイブリッド』の燃費広告をめぐる集団訴訟で和解した。訴訟大国ならではの係争だが、裁判での労力や北米の看板車種『シビック』のイメージダウン長期化を考慮すれば、和解は実利重視の賢い選択だ。ただ、米国では政府機関の公式測定値ですら、燃費性能の訴求に用いるのは慎重にならざるを得なくなった。

和解の対象となるのは、2003年モデルから09年モデルのシビック・ハイブリッドを所有するユーザーで、約20万人。ホンダによると、1人当たり100ドル(約8300円)または200ドルの和解金と、次回にホンダまたはアキュラの新車を購入する際に使用できる500~1500ドル(約4万2000〜12万5000円)のクーポンを支給する。

また、同車のバッテリーシステムの保証期間を1年または1万2000マイル(約1万9200km)延長し、すでに保証期間(一部の州を除いて8年または8万マイル)を過ぎて同システムを交換したユーザーには、その費用の返還措置も講じる。


◆日本のJC-08だと訴訟頻発?


原告団は、同車の広告で示された燃費と実走行の燃費にかい離が大きく、損失を被ったとして、カリフォルニア州の地裁に損害賠償請求を提訴していた。米国の燃費は市街地走行と高速道路走行の2本立てとなっており、環境保護局(EPA)が審査・測定する。ホンダはその測定値を広告に使用していたという。

日本の国土交通省の測定による燃費値同様、実走行とのかい離は、米国でもしばしば問題となる。このため、EPAは08年モデル車から高速走行や急加速、エアコン使用や冷温状態からの運転などを加え、より実走行に近い測定法を導入した。今回の和解対象となったモデルの大半は、かい離幅が大きかった旧測定法によるもので、ユーザーの不満を増幅させる要因になったと思われる。

日本では、実走行により近いとされる新しい測定法として「JC-08」モードが導入されたが、それでもEPAの測定値よりは甘く出る。日本では実走行とのかい離を「測定値とはそんなもの」と、ユーザーが容認しているのが実情で、米国だと訴訟だらけになるだろう。


◆サービスキャンペーンと考えれば高くない


今回の和解について、米国ホンダは「お客様に誠意をもって対応する当社の姿勢が裁判所によって認められたと考えている」と、コメントしている。そこからは、『アコード』、『CR-V』と並ぶ屋台骨モデルのユーザーは大事にしたいという思惑も伝わってくる。

和解金の部分だけを推計すると合計で20億~30億円であり、不具合発生時に無償修理する「サービスキャンペーン」の費用と考えれば高いものではない。また、次にホンダ車を購入する際のクーポンも、台当たり10万円前後のインセンティブ(販売奨励金)とすれば、日常的なオペレーションの範囲内の金額である。

北米市場では韓国・ヒュンダイ自動車が“シビックキラー”として投入した小型セダンの『エラントラ』が、12年北米カーオブザイヤーとなるなど、シビックとの激戦が続いている。もっとも、そのエラントラも、昨年12月に米消費者団体が、測定値と実走行の燃費かい離が大きいとしてEPAに再審査を要請した。

原油高によって燃費性能は一段と商品力を決定づける要素となるものの、アピールの仕方も、この国ならではの「郷に従った」工夫が求められる。ちなみに、米国でハイブリッド車をもっとも多く販売しているトヨタ自動車は、同国で今回のような燃費をめぐる訴訟は抱えていないという。
《池原照雄》

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