【ホンダ インサイトエクスクルーシブ 試乗】新しい方向を目指す…松下宏

試乗記 国産車
ホンダ インサイト
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現行ホンダ『インサイト』は2009年2月に発売され、当初は好調な売れ行きを示した。ところが3か月ほど遅れてトヨタ『プリウス』が登場すると、たちまちのうちに販売合戦に大差がついてしまった。同じようなコンセプトとデザインのクルマなので、燃費性能で勝負がついたといっても良い。

ホンダでは『フィット』にハイブリッド車を設定し、こちらが好調な売れ行きを続けているので、インサイトはこのまま消えていくのかと思ったら、どっこいそうではなく、マイナーチェンジを実施すると同時に、「エクスクルーシブ」という新グレードを追加設定してきた。

標準車が1.3リットルエンジン+電気モーターのIMAシステムを搭載するのに対し、エクスクルーシブは搭載エンジンが1.5リットルエンジンに変わるのが相違点。

1.5リットル+電気モーターのIMAは基本的には『CR-Z』に搭載されているのと同じだが、クルマの性格に合わせて微妙に異なるチューニングが施されている。当然ながら、標準車の1.3Lに比べると走りがグンと良くなった。

エンジン自体の動力性能が高いので、そんなにアクセルを踏み込まなくてもスムーズな走りが可能。カタログ燃費は1.3リットルのほうが優れているが、走り方によっては実用燃費は1.5リットルのほうが良くなるのではないか、そんな風に思わせるような余裕の走りだ。

エンジンの回転数が抑えられるので、より静かな走りを実現する。エクスクルーシブの静粛性は、遮音対策を追加したことの方が大きいのかも知れないが、ハイブリッド車らしい静かな走りだ。

1.5リットルになったことで動力性能が向上し、ハイブリッドというエコカーでありながら、走りの楽しさをより主張できるクルマになった。プリウスとの違いなどを考えるなら、このことも大きい

これまでのモデルで指摘されることが多かった乗り心地の硬さも、今回のエクスクルーシブでは改善されている。乗り心地の良いクルマというほどではないが、段差を越えるときなどのゴツゴツした感じがとれ、かなり乗り心地か良くなった。

このほか、内外装のデザインも標準車との差別化を図っていて、グリル回りのデザインを変更したほか、夜間にライトを点灯したときの顔つきも高級感のある専用のものときなった。インテリアは随所に加飾パネルが使われてこれも高級感を表現している。バックドアを改良して後方視界を良くした点も評価できるポイントだ。

エクスクルーシブが示した走りの向上と内外装の高級化によって、インサイトはこれまでとは違った道を歩むことになるのだと思う。一気に売れ行きが挽回することはないだろうが、新しい存在意義が示されたといえる。

本体価格は250万円を超え、現行インサイトがデビューした当初の手頃な価格のハイブリッド車というイメージがなくなった。価格ではプリウスとガチの関係になったので、これからも厳しい状況が続くだろうが、価格帯が変わったという点においても、インサイトは新しい道を歩み始めた。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

松下宏|自動車評論家
1951年群馬県前橋市生まれ。自動車業界誌記者、クルマ雑誌編集者を経てフリーランサーに。税金、保険、諸費用など、クルマとお金に関係する経済的な話に強いことで知られる。ほぼ毎日、ネット上に日記を執筆中。

《松下宏》

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