メルセデス・ベンツ日本が、国内ではボルボ、スバルに続いて、完全停止する衝突回避ブレーキを採用した。しかしこのシステム、本国では現行『Eクラス』の発表当初から設定されていたという。ではなぜ日本で先発2社の後塵を拝してしまったのか。一連の経緯を、メルセデス・ベンツR&D川崎の担当者に聞いた。
「メルセデス・ベンツでは、衝突回避ブレーキを含めた『レーダーセーフティパッケージ』で、中長距離用に77GHz、短距離用に24GHzを使っています。しかし24GHzは最近まで、我が国では自動車用としての使用が認められていませんでした。それが昨年4月の法改正で認可され、国土交通省の認証を経て、投入に至ったのです」
法改正から投入まで1年以上かかったのは、メルセデス・ベンツがワイドバンドを使用しているため。同じ24GHzでもナローバンドを使った他社は、認可までのタイムラグが短かったという。
レーダーに関して素人の筆者は、周波数をずらせば法規をパスできたのではないかと思ったが、メルセデス・ベンツによれば、そう簡単には変えられない事情があったようだ。
「24GHzという周波数は汎用性が高く、自動ドアなどに広く使われています。つまり信頼性が高く、専用機器が多く存在していて、使いやすい数字なのです。しかもEUでも2013年から、この周波数は使えなくなる予定です。次期型は現在開発中ですが、そのような時期に、日本仕様だけ専用の周波数でやり直すわけにはいかなかったのです」
日本以外で電波法規制を行っている国としては韓国や中国などがあり、この2国ではレーダーセーフティパッケージは導入できないという。また日本でも、同じ24GHzを使う全国15か所の天文台の周辺では、システムが自動的にキャンセルされる。その情報はナビのモニターに表示されることになっている。