大矢アキオの『ヴェローチェ!』…あの「エルフ」が消滅する

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エルフ
  • エルフ
  • 1991年、ナイジェル・マンセルが操るルノーF1
  • 1994年、デイモン・ヒルのF1マシーン
  • 2005年、フェルナンド・アロンソのF1マシーン
  • 1970年代、初代ルノー5に貼られたステッカー
  • スーパー「カルフール」のガソリンスタンド
  • 「エニ」の看板が掲げられた旧「アジップ」のスタンド
  • 「エニ」の新しい看板を載せたトラック
 F1スポンサーとしておなじみ

フランス最大の石油会社トタールはこのほど、傘下のガソリンスタンド網「エルフ」を新ブランド「トタール・アクセス」に順次切り替えてゆくことを明らかにした。対象店舗はフランス国内の600店。

エルフ・ブランドの元となったエルフ・アキテーヌ社は、当時フランスに存在した「石油公団」「国営アキテーヌ石油会社」「石油および石油事業研究所」の3法人が合併して1967年に誕生した。

主な事業は南西部アキテーヌ地方のガス田開発であったが、民間のスタンド網や潤滑油製品シリーズも並行して展開した。2000年にトタール社によって吸収合併されたあとも、ガソリンスタンドや潤滑油のブランド名としてエルフの名称は存続していた。

今回エルフがブランド転換を図るトタール・アクセスは、トタールの第2ブランドという位置づけだ。セルフサービス化を積極的に採り入れ、既存のトタール系スタンドよりローコスト路線を狙う。

背景には、フランス国内で「カルフール」をはじめとするスーパーマーケット系ガソリンスタンドの台頭があるのは明らかだ。スーパー店舗の脇に立地しているそれらは、給油機が完全セルフで、顧客は給油したあと順路の先にある料金所まで自ら車を移動させ、車に乗ったまま精算する。いわばドライブスルーのスタンドだ。

窓拭き、タイヤ空気圧チェック、オイル交換といったサービスは一切提供しないが、従業員は料金所担当の1名で済む。常に1リットルあたり数ユーロセント既存スタンドより安いため、多くのフランス人ドライバーが、行きつけのスタンドを既存のスタンドからスーパー系に切り替えている。

エルフ改めトタール・アクセスはドライブスルー化までは行なわないようだが、元公社系の流れを汲むブランドがどこまで時流に乗れるかが見所といえよう。

エルフといえば、設立当初からマートラF1チームをサポートし、続いてルノーF1のスポンサーも長いこと務めていた。フランス車ファンなら、ルノー車のリアウィンドーにエルフのオイルを推奨する旨のステッカーが貼られていたのもご記憶だろう。

ちなみに隣国イタリアのガソリンスタンド網「アジップ」は、経営母体と同名の「エニ(Eni)」に名称変更が進められている。

エルフのオイル製品は今後も継続するようだが、往年のF1のボディを彩ったロゴマークが少しずつ欧州のロードサイドから消えてゆくことに一抹の寂しさを感じるのは、筆者だけではあるまい。

大矢アキオの欧州通信『ヴェローチェ!』

筆者:大矢アキオ(Akio Lorenzo OYA)---コラムニスト。国立音楽大学卒。二玄社『SUPER CG』記者を経て、96年からシエナ在住。イタリアに対するユニークな視点と親しみやすい筆致に、老若男女犬猫問わずファンがいる。NHK『ラジオ深夜便』のレポーターをはじめ、ラジオ・テレビでも活躍中。主な著書に『カンティーナを巡る冒険旅行』、『幸せのイタリア料理!』(以上光人社)、『Hotするイタリア』(二玄社)、訳書に『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)がある。
《大矢アキオ Akio Lorenzo OYA》

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