ゼッケン130「AIOC東日本復興祈願145けを走らせる目的のなかに、宮城県で実際に被災してしまったホビーレース仲間とサーキットで走る時間を共有したいという想いがあった。スタートは伊藤に任せたが、第6スティントのバトンを宮城県の佐藤に託した。
佐藤もまた古くからの僕たちのサーキット仲間だが、彼は現役の競輪選手でもある。3月11日の話をすると、佐藤の自宅は山側に位置していたために津波の直接被害はなかったものの、実家が津波に飲み込まれてしまったという。
翌日から練習もそこそこに支援物資活動や、地元の競輪選手たちと共に沿岸部の小学校などに出向き泥出しなどのボランティア活動などに精を出していたそうだ。プロライダーの伊藤と同じように佐藤もまた、ボランティア活動の影響からくるトレーニング不足を本業の言い訳にはしない。プロの世界の厳しさを垣間見る思いだが、今回の全国の仲間で集まって1台のアルファロメオを走らせようという突飛な誘いを一番喜んでくれたのも佐藤だったような気がする。
1周=2分35~36秒で想定していたAIOC東日本復興祈願145だが、ベストタイムで言うと伊藤が32秒で走り、佐藤も33秒台で走った。驚異的な速さである! しかし、その想定外のスピードが後に145に大きな負担をかけたのかもしれない。少しでも上の順位を狙うために、スピードのある佐藤から伊藤にクルマを託した。ところが……。
水温計の針が120度を遥かに振り切り、スロー走行をしても一向に水温が下がらない。明らかにオーバーヒートである。ピットに戻ったクルマのボンネットを開けると、数分後にはリザーバータンクが破裂してしまったのだ。それでも懸命に応急処置を施して再びコースインしたものの、オーバーヒートの症状は変わらず。原因はウォーターポンプの故障ではないかと思われた。
ここで我々のやりたかったレースは断念せざるを得なかった。ただし、エンジンが完全にブローしたわけではないので、最後のフィニッシュだけでもメンバーの岡本に託すことにしてレースを見守ることにした(文中敬称略)。