富士通テン イクリプス『AVN-F01i』では、iPhoneアプリを製品の発売とほぼ同時にリリースし、カーナビとiPhoneアプリの本格的な連携にいち早く着手した。他社に先んじてアプリ連携機能に着手できたのはなぜか。企画を統括したネットワーク事業部企画部長の沢田輝氏に話を聞く。◆品川駅のエスカレーターで「キャズムを超える」と確信----:ナビをスマートフォンアプリを連携させるための企画はいつからスタートしたのでしょうか。沢田:アプリの企画自体は1年以上前にスタートしています。始めるにあたって東京で合宿をしました。----:アプリ開発に本腰を据えて取り組もうと思えるようになったのはどんなタイミングでしょうか。沢田:ある日、品川駅のエスカレーターに乗ると若い女性がみんなiPhoneを使っていたのです。これは(富士通テン本社のある)神戸では見られない光景。そこでキャズムを超えるな、と確信しました。確か、当時はiPhone 3GSが登場したころで端末価格がリーズナブルになって爆発的に普及していました。現在の状況を見れば、iPhoneをターゲットにしたのは間違いではなかったかな、と。----:AVN-F01iの登場時には「TwitDrive」「どこCar」「Carニュースリーダー」という3つのアプリがリリースされましたが、他にもアプリの企画はあったのでしょうか。沢田:企画段階で様々な案がありました。それらが絞り込まれてとりあえず3つのアプリが始めにリリースされました。企画を通じて考えていたのは、オープンなサービスといかにマッシュアップするかということです。◆TwitDriveは8年前の携帯電話対応カーオーディオの「リベンジ」----:TwitDriveはどのようないきさつで考えたのでしょうか。沢田:当時からTwitterはじわじわとブームが来ていましたから、開発は最優先でした。実際の開発に当たった担当も含めて思い入れが強いアプリケーションですね。実はこのTwitDriveには裏話というか伏線があるのです。2003年に富士通テンが初めてケータイとつながる「i-audio」というカーオーディオをリリースしたのですが、そこでレスポンスに取り上げていただいたのです(記事へのリンク)。これはオーディオにGPSを付属させ、ロケータというアプリケーションでセンターの地図と携帯電話を利用して通信して簡易的なナビをしたり、リアルタイムの情報を入手したりできるというものでした。さらに、コメントも発信できたりと、8年前にTwitDriveの原型とも言えるサービスが実現できていたのです。当社の車載器向けクラウドサービス「E-iSERV(イー・アイ・サーブ)」の原点でもありました。----:ようやく時代が追いついてきた、という気持ちでしょうか。沢田:まだ追いついて来たかどうか分かりませんが(笑)、i-audioは通信で取得した地図を表示させるなどかなり先進的な機能がありました。今回はリベンジという気持ちもあって、今の時代に問うてみよう、と取り組んできました。----:Twitterがここまで普及すると、クルマに乗っている時につぶやくと言うのは、カーメーカーや車載器メーカーとしては当然考えるところですが、今年のモデルとして登場させてきたのはイクリプスだけです。着手が早かったのはもちろんですが、感心させられたのはUIのリズム感が良いな、と。定型文でつぶやくことができ、安全かつ簡単に発信できますね。沢田:30の定型つぶやき文から選んでつぶやくことができます。自分で定型文を作ることもできます。----:意外に感じたのは、ナビと接続しなくても、iPhone単体TwitDriveアプリだけでも投稿できるということです。単体で使えるとなると無数にあるTwitterクライアントがライバルとなるわけですよね。ナビとアプリのユーザーを囲い込むのなら、ナビと接続したときにだけ使える仕様もありなのでは、と思うのですが。沢田:むしろ、サービスの連続性という点ではiPhone単体で使ってもらえるようなアプリであるべき、と考えています。常日頃から位置情報と紐付けしたツイートをしてもらい、その延長線上でクルマに乗ったときにも使うという利用シーンのほうが、情報の網羅性は圧倒的に多くなるはずです。◆車載として使いやすいインターフェースを設計----:iPhone本体とナビとでは入力のインターフェースをかなり変えていますね。沢田:車載器で使いやすいような工夫を随所に盛り込んでいます。たとえば、ボタンの感度範囲をiPhoneの全く同じ表示範囲で車載器のタッチパネルを使わせようとすると、車載器とiPhoneのタッチ感覚の違いで押しても反応しない、ということがときどき起きてしまいます。そこでボタンの感度範囲を車載向けにチューニングしています。また、走行中は操作の規制をかけなければなりませんが、表示を限定してタッチ数を減らすことで安全に利用できるようにしました。----:アプリ連携という新しい機能を盛り込んでいるので、これまでの富士通テンの車載器品質水準とのすり合わせが大変そうですね。沢田:当社の品質水準で作ると工数がかかり、ライトに作ると今度は富士通テンらしくないと言われることもありバランスをとるのには腐心しました。とはいっても、あくまでもiPhoneアプリ連携はカーナビの一機能ですので、最優先はナビゲーションの機能を邪魔しないということです。例えばCarニュースリーダーの再生中であっても、ナビの案内音声が優先されます。----:Car ニュースリーダーはYahoo!のトピックスニュースの音声読み上げをさせるアプリですが、この開発の狙いは。沢田:iPhoneには音声入力の機能はあっても、テキスト・トゥ・スピーチの読み上げ機能は含まれていません。そこでカーナビの音声読み上げ機能を用いて、iPhoneに表示されたトピックスのタイトルを再生できます。----:走行中の再生に対応していますね。沢田:走行中は操作規制がかかるのですが、音声読み上げは利用可能です。----:「どこCar」はTwitDriveやCar ニュースリーダーの起動中にナビの電源を抜いたり、ケーブルから外したりすると、自動でアプリが起動して自社位置の登録画面に遷移しますね。これは非常に気が利いていて使いやすいと感じました。沢田:アプリからアプリを呼び出して、位置情報も一緒に飛ばしているので、けっこう苦労しました。iPhoneと車載器をつないでいるプロトコルがあり、双方のアプリケーションで取り決めをしておくことで、どこCar立ち上げ時に位置情報も一緒に投げる仕様になっています。◆現状アプリのバージョンアップも、追加アプリの提供も準備----:iPhoneアプリがリリースされたのは製品発表の直前でした。沢田:製品のリリースは決まっていますから、それに合わせてアプリの開発を進めました。ただ、日本のカーナビ対応アプリで、車載側のタッチで操作可能な画面連携を始めたのは当社が初めてです。当初は伝送スピードの関係でなかなか思うようなレスポンスが得られなかったのですが、なんとか実用の市販レベルまで持ってくることができました。----:アップル側から審査が降りずリジェクトされてしまう心配はありませんでしたか。沢田:その恐怖感は常に抱えていました。アプリが出せるかどうかは、AVN-F01iにとっては死活問題でしたからね(笑)。テクニカルにできるかできないかも分からなかったし、画面そのものを飛ばして車載器上で操作させるようなことができるかもわからなかった。リジェクトされる恐怖が常にありましたよ。iOSの仕様変更で一気にル—ルを変えてくる可能性や見込み開発的な要素もあったから、開発チーム全体で危機感は共有していました。----:他ではどこもやっていないiPhone連携機能が、AVN-F01iのストレートなウリですからね。今後のサポートは期待できると考えて良さそうですね。沢田:現状のアプリのバージョンアップもしますし、次のアプリを出す準備もしています(編集部注:7月11日に追加)。iOSもどんどん変わっていきますしそれへの対応も不可欠です。具体的なサポート期間はアナウンスできませんが、先ほど挙げたi-audioは2010年までサポートしました。2007年にケータイリンクをリリースして以来、赤外線通信による3キャリア対応し、およそ700機種の適合評価をしました。またBREWの新しいバージョンが出た時にも対応しています。これらの実績を元に、iPhone でもお客様の期待に応えていきたいと思います。----:Androidへの対応はどのような状況でしょうか。沢田:Android対応は検討中です。ただ、端末バリエーションが非常に多いため、解像度やOSのバージョンが異なる端末にどれだけ合わせて行く必要があるのかが課題です。----:カーナビは純正も市販もいかにして通信を取り込むか、ということに悩んできた10年でした。インターナビのリンクアップフリーや新しいサイバーナビのように、商品代のなかに通信費を含めてしまおうという試みもでてきます。沢田:かといってDCMは契約と月額費用が個別にかかってしまいます。携帯電話のパケット定額の範囲で対応するのであれば、今回のような有線での通信連携が最適なソリューションです。◆車載メーカーの強みをスマートフォン連携で発揮----:スマートフォンでのナビアプリも複数社から出ていますし、カーナビメーカーの立ち位置も問われつつあります。富士通テンとしては、今後スマートフォンの分野にどのようなアプローチをしていくお考えですか。沢田:この10年で、車載器のなかではナビというアプリケーションが主役の座を占めていましたが、そのナビですら沢山あるアプリケーションの1つに過ぎなくなっています。PCやスマートフォンのメニューのように、個々の機能がアイコン状のアプリケーションで構成されていて、全てイコールに扱われるという発想に近づきつつあります。そこでAVNに長年取り組んできた当社としては、車載器のHMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)のノウハウをコアコンピタンスと位置づけてスマートフォンと連携していくことになるでしょう。クルマの中での使いやすいHMIはわれわれのものであり、そこが差別化ポイントになります。----:このAVN-F01iがイクリプスの強みを象徴するスマートフォン連携の第一弾となるわけですね。沢田:この4月から、当社は東京にも企画開発の拠点を構えました。時代に遅れずにキャッチアップするだけでなく、今回のように他社よりも半歩先を行く新しい試みを積極的に実現させていきたいですね。<iTunesのアプリ紹介ページ>・TwitDrivehttp://itunes.apple.com/jp/app/id434556092?mt=8・どこCar http://itunes.apple.com/jp/app/id434558657?mt=8・Carニュースリーダーhttp://itunes.apple.com/jp/app/id434558395?mt=8<AVN-F01iの紹介動画(Youtube)>上戸彩の未来ナビ研究所『商品開発部~AVN-F01iの紹介』《聞き手 三浦和也》
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