大震災による思わぬ余波が見えてきた。ドイツを本拠とするメルクは、自動車分野では塗料用の顔料を塗料メーカーに供給するグローバルな化学品メーカー。その日本支社の小名浜工場(福島県いわき市)が地震で被災し、操業停止に追い込まれた。
メルクの代表的な製品のひとつが「Xirallic(シラリック)」と呼ぶ光輝顔料だ。これはメルクの日本支社で開発され、世界でただひとつ小名浜工場だけで生産されていたもの。トヨタ車のボディカラー名に「クリスタルシャイン」とあれば、それはXirallicを使ったペイントである。
Xirallicはアルミナを人工的に結晶化した微粉末で、人工パールとも呼ばれる。従来のパール塗装は天然雲母を光輝顔料に使うが、Xirallicはそれより表面が平滑で輝度感が強く、色味の濁りもない。国内ではトヨタだけでなく、ダイハツ、日産、ホンダなどが採用し、海外でも高級車を中心に幅広く使われているものだ。
その供給が震災から止まっている。完成車工場が操業を再開しても、当面はXirallicを使うボディカラーをオーダーするのは難しいかもしれない。自動車メーカーがXirallicを使う新しいボディカラーの投入を断念したとの情報もある。
Xirallicは豊かで上質なカラー表現に欠かせない顔料だ。メルクの小名浜工場が早期に復旧することを期待したい。