2012年の話題が先行した感もある、「全日本選手権フォーミュラ・ニッポン」の2011年シーズンに向けての全体・体制発表会。本来の“主役”である今季、2011年に関しても、楽しみなチーム&ドライバー陣容がほぼ出揃い、激戦ムードを予感させてくれている。
最注目要素は、やはり中嶋ファミリーの対決だろう。日本人初のF1レギュラードライバーであった中嶋悟が率いるナカジマ・ホンダから中嶋大祐(次男)がデビューし、トムス・トヨタ入りした中嶋一貴(長男)と対決することになる。
新人ドライバーのひとりとして登壇した一貴は、「もちろんルーキー、挑戦者としてシーズンに臨みますが、本来の意味のルーキーとは違う面もあります。ミスを許される立場ではないと思いますので」と、父と同じF1レギュラー経験者としてのプライド、責任について言及。さらに「親子対決、兄弟対決として注目されるのは、僕たちにとってチャンスだと思います。ただ、他にもたくさん手強い選手がいますからね。(ファミリー対決を考えている余裕はなく)自分の戦いのことで精一杯だと思います」と語った。
その横で大祐も「兄に勝つことより、全体のなかで、できるだけ上にいくことが大切ですから」と、ともに“直接対決”は意識しすぎないことを強調。
今季の新人は6人。一貴以外の5名は日英のF3からの昇格となり、中嶋兄弟の他に国本雄資(セルモインギング・トヨタ)、小林崇志(リアル・ホンダ)、アレクサンドレ・インペラトーリ(KCMG・トヨタ)、そして新規参戦チームのルボーセ・トヨタとともに上がってきた嵯峨宏紀という面々がデビューを飾る。
ちなみにインペラトーリ(スイス出身)を起用するKCMGのタイトルスポンサーこそ、2012年シンガポール大会の開催サーキットを建設中のSGチャンギ社。日本〜シンガポール間のモータースポーツ交流は既に盛んと言っていい状況にあり、インペラトーリは今季のスーパーGT/GT300クラスでもチームSGチャンギのレクサス『IS350』を駆ることとなっている(パートナーは折目遼)。
星野一義が率いるチャンピオンチーム、インパル・トヨタからは連覇を目指すジョアオ・パオロ・デ・オリベイラと、4年目を迎える気鋭・平手晃平。他のトヨタ勢では、トムスのエースの座は昨年シリーズ2位のアンドレ・ロッテラーで不動。昨季トムスで1勝した大嶋和也はチームルマンに移籍。石浦宏明は新体制となったチームキグナススノコからの参戦というかたちに。近藤真彦のKONDOだけがドライバー未定だが、開幕前のテストにミロシュ・パブロヴィッチを起用することを決めており、彼がそのまま参戦となれば、今季は16人中7人が新人という構図になる。
ホンダ勢では昨年の新人王・山本尚貴が無限に移籍。塚越広大がダンディライアン入りし、伊沢拓也との快速コンビをF3時代以来の再結成。そして小暮卓史は、もちろんナカジマのエースとして悲願の王座獲得を目指す。
ワンメイクのシャシーは、今季が採用3年目となる「FN09」(スウィフト017.n)。タイヤもブリヂストンのワンメイクだ。シリーズは昨年と同じく全7戦で、最終戦鈴鹿(11月5〜6日)のみ短距離2レース制となる。第1〜6戦は220〜280kmの1レース制で、ほぼ月イチのペースで全国5サーキットを転戦。さらに、昨年に続いて特別戦の「JAF GP FUJI SPRINT CUP」が、最終戦翌週に富士スピードウェイで開催される予定だ。
JRP会長でもある中嶋悟監督は、「レースそのものの魅力に加えて、サーキットという場所でお客さんが一日楽しめるようにしたい」と、コース外イベントのさらなる充実を公言。また、今季は鈴鹿開幕戦に加えて第3戦の九州オートポリスでも2輪レースとの併催「2&4」を実施するなど、来季への期待・展望も含めて、様々な意味で話題豊富なシーズンとなりそうなFニッポン。3月中の2度の合同テストを経て、4月16〜17日の鈴鹿ラウンドで熱戦の幕を開ける。