日本最高峰のフォーミュラレースカテゴリー「全日本選手権フォーミュラ・ニッポン」は、7日、都内で2011年シーズンに向けての全体発表会を実施。その席上、2012年のシンガポール大会開催に向けて本格的な準備段階に入ったことが初めて公にされた。実現すれば04年のマレーシア・セパン戦以来、8年ぶり2度目の海外ラウンド開催となる。
開催地は、シンガポール初の常設サーキットとして完成する予定の「CHANGI MOTORSPORTS HUB」(チャンギ・モータースポーツ・ハブ)。このサーキットは“ハブ”の名が示すとおり、単なるサーキットにはとどまらず、同国のモータースポーツ振興拠点としてSG CHANGI PTE. LTD.(SGC社)が建設を進めている施設だ。
この日の発表会にも出席したSGC社の村橋郁徳(ふみのり)会長は、「アジアのモータースポーツのハブになるような施設にしたい」との意気込みを語り、さらに「日本の高いレベルのフォーミュラレースが、これまでは日本だけのものになっていた。それに、日本の素晴らしい選手たちに海外(アジア)にも活躍の場を広げていってほしいと思いますしね」とも話している。
サーキットを建設しているSGC社は、スポンサーパートナーシップ活動などを通じて、既に日本のトップレーシングシーンではお馴染みの存在。同社が架け橋となるかたちで、日本とシンガポールのモータースポーツ交流を深め、互いのさらなる発展に繋げたいという関係者の意向が合致し、今回の「2012年シンガポール大会開催準備発表」へと漕ぎ着けた格好だ。
04年マレーシアの時のようにシリーズ公式戦の一戦となるのか、あるいはシリーズ外の特別ラウンドとなるのか、その他詳細に関しての詰めはこれから。だが、来季の開催カレンダー申請の締切時期等を考慮すると、今後2〜3か月の間にいろいろなことが決まっていくはずだ。
チャンギ・モータースポーツ・ハブは、来年5〜6月開催予定のFニッポン(F3併催の構想)をコケラ落としとして、近未来には独自のF3シリーズ開催や、ドライバー・アカデミー的なものの運営にも本格的に乗り出す。
シンガポールでは08年からF1が“ナイト市街地レース”として開催されているが、チャンギ・モータースポーツ・ハブが取得を予定しているサーキット・グレードは「FIAのグレード2」ということで、グレード1が必要なF1開催は念頭に置いていない。
自国、そしてアジア圏のモータースポーツ振興を主眼に据えた施設とする構想で、日本のモータースポーツ事情にも通じている村橋会長を中心に事業展開していく構えだ。「SUPER GTも開催したい。そして(隣国マレーシアの)セパンさんともいい連携をしていきたい」との旨を、サーキット・オーガナイザーでありFニッポン・シンガポール大会のプロモーターでもある村橋会長は語っている。
同席したシンガポール・モータースポーツ協会(SMSA)のハロルド・ネット氏も、「Fニッポンの参加者、関係者、そしてファンのみなさんがいらっしゃるのを心待ちにしています」と歓待の意を表し、同じくJAFも全面支援体制を取る。
Fニッポンのシリーズ運営団体JRPの白井裕社長は、「これまでは日本のモータースポーツ(Fニッポン)を海外に発信することができていなかった。もちろん、国内のことをしっかりやった上で、プラスアルファとして海外展開を考えていきたい」と話す。「日本最高峰として、そしてアジアのスタンダードともなるべく」動き出したFニッポン。04年マレーシア開催の後、一度は頓挫した経緯のあるFニッポンの国際展開だが、就任2年目の白井社長の指揮下、捲土重来なるか? 12年シンガポール戦の実現と成功を期待したい。