セダンドアの小さなミニバン市場がシュリンクするなか、それでも選ぶという人の購入にいたるハードルは、今後いっそう高くなっていくように思う。サイズだけが取り柄ではいけない、ということ。
VW『ゴルフトゥーラン』は、そのひとつの解答だ。国産車と輸入車との間にある精神的なギャップをほどよく埋めるVWブランドの絶妙な立ち位置と、確かな機能と装備、そして驚くほど高い運動性といった、国産ミニバンにはない(もしくは多少欠けている)価値が、このクルマにはある。
これみよがしではない見た目のフレンドリーさは、そのままドライブ感覚にも当てはまっている。さっと座って、ちゃっちゃっと走り出し、知らぬ間に馴染む。はじめてのドライブでも、もう何年も一緒に過ごしてきたかのような、そんな親しみの良さがある。VW車すべてにいえることだ。
きっと誰も“そんな風に走らせない”だろうが、ワインディングも意外に得意。自然なロールと適切な手ごたえがときに気持ちよかったりもする。なるほど、ヨーロッパでは、街や村落を一歩出れば、そういう場面によく遭遇するのだった。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
西川淳|自動車ライター/編集者
産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰して自動車を眺めることを理想とする。高額車、スポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域が得意。中古車事情にも通じる。永遠のスーパーカー少年。自動車における趣味と実用の建設的な分離と両立が最近のテーマ。精密機械工学部出身。