【マツダ プレマシー 試乗】マジメ・マツダの本領…千葉匠

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プレマシー
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  • 3タイプのカスタマイズパーツを設定する。左からケンスタイル、M'sカスタム、ダムド

『アクセラ』『ビアンテ』に続いて採用したアイドルストップ「i-stop」は、新型『プレマシー』でも売りのひとつだ。ただしマツダのシステムは、ホンダの『インサイト』『CR-Z』に比べるとエンジンが止まる状況がやや限られている。

例えば勾配が7度(約12%)を超える坂道ではアイドルストップしない。再発進するときにエンジン始動までのタイムラグで後ずさりするのを避けるためだ。ただしマツダの場合、アイドルストップは横滑り防止装置とセット。同装置のブレーキ液圧保持機能があるから多少の坂では後ずさりはしないはずなのに、念には念を入れている。

また、下り坂の再発進は、エンジンがかかる寸前にクルマが動いても前進だから危険はなさそうだが、それも「ドライバーの意思に反した動き」と考えてアイドルストップしない。

なぜ、こんなに慎重なのか? さまざまな状況でアイドルストップを試すうちに、80年代末に語られた「マジメ・マツダ」を思い出した。

70年代に『ファミリア』や『カペラ』を成功させたマツダは、いわゆる「キープコンセプト」のモデルチェンジでアイデンティティの定着を図った。が、80年代後半はバブル期。多様性を求める時代はマツダにも変化を促す。89年の初代ロードスターを皮切りとする新製品ラッシュのなかで、マツダの人たちが自重気味に過去を振り返ったのが「マジメ・マツダ」という言葉だった。

そんな「マジメさ」が新型プレマシーに蘇った。ボディサイドに抑揚を加えるNAGAREラインは、07年から09年にかけてマツダがコンセプトカーで何度もトライしてきたもの。マツダらしいダイナミズムを進化させるデザインだが、それを量産車に採用するにあたって、町の板金屋さんが従来と同じ工具と手順で補修できるようラインの間隔や断面形状を慎重に吟味したという。

運転して思う「マジメさ」は、アクセルを踏んだだけ加速し、ハンドルを切っただけ曲がる、ということ。日本人はせっかちだからアクセルやステアリングのレスポンスを重視しがちだが、過不足なく反応するほうが運転しやすいことを新型プレマシーは教えてくれる。

デザインからアイドルストップ、走り味まで、新型プレマシーは「マジメ・マツダ」の本領発揮。80年代とはひと味違う、積極的なマジメさが印象的だ。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★

千葉匠│デザインジャーナリスト
1954年東京生まれ。千葉大学で工業デザインを専攻。商用車メーカーのデザイナー、カーデザイン専門誌の編集部を経て88年からフリーランスのデザイン ジャーナリスト。COTY選考委員、Auto Color Award 審査委員長、東海大学非常勤講師、AJAJ理事。

《千葉匠》

千葉匠

千葉匠|デザインジャーナリスト デザインの視点でクルマを斬るジャーナリスト。1954年生まれ。千葉大学工業意匠学科卒業。商用車のデザイナー、カーデザイン専門誌の編集次長を経て88年末よりフリー。「千葉匠」はペンネームで、本名は有元正存(ありもと・まさつぐ)。日本自動車ジャーナリスト協会=AJAJ会員。日本ファッション協会主催のオートカラーアウォードでは11年前から審査委員長を務めている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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